終結
《界滅級準超越者<焔燼星皇>が討伐されました》
《戦闘参加者全員に《外海の観測者》の称号を贈与します》
《MVPが選出されました》
《対象者全員に【流転結晶 シリウス】が贈与されます》
《星の危機を救いました》
《参加者全員に【星願の果実】を贈与します》
《星のリソースが増大しました》
《【十三王の選定】が再開しました》
《【星願討伐対象】が選ばれました》
《対象:【支配邪神 ヌクテメロン】》
《勇者召喚システムが稼働しませんでした》
《特殊条件達成》
《勇者召喚システムを停止します》
《救世軍システムを稼働します》
《──ありがとう》
そのアナウンスを以て<焔燼星皇>は永久の眠りに着いた。そこからが激動だった戦後処理に各地への被害確認。褒賞の分配や表彰式。俺達異世界勇者組の多くがあの戦いで覚醒した事で各地への派遣が決まり、誰が何処で非常に揉めたとか。戦いの最中に神に至ったアマルティアさんが新たな神として祀られ、その神殿を何処にするかでまた揉めていた。俺達にとって一番気になった話題は突如として現れた【魔王】ひいては【邪神】の動きだった。各地で【邪神】の代行分体と思われる存在の影がちらつき始めたそうで次の行き先はその何れかだろう。
騒ぎと言えば【星願の果実】も大騒ぎの種だった。あの戦いに参加していた全員に与えられたそれは“食べた人間の存在を一つ上へと押し上げる”と言う効果を持った神の果実だった。授かった本以外が食べても効果は無かったらしいが、戦いに参加した人々はその全員が種族進化を果たしたらしい。どういう訳だか俺達異世界人には進化の効果は無く変わりに力の覚醒を促した。誰も彼も一騎当千の力を得て、力に溺れる奴の一人でも出そうなものだが不思議とそんな人は一人として現れなかった。奇跡の様な条件が揃って勝ちを拾えたが、それだけ<焔燼星皇>と言う圧倒的な強者との差を実感したんだろう。
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晴れた空、白い雲。地平の果てまで雨雲が欠片も見えない。空に翳して眺めているのはあの戦いでMVPとなった人間に配られた【流転結晶 シリウス】と言う赤とも橙とも取れる色をした結晶片。握れば確かな熱を感じるこれは何か特別な力がある様だが誰にもその効果は突き止められなかった。発熱機関として使える程の熱量は無く、不変不朽不壊と一ミリたりとも変形できない耐久性を持ちながらそのサイズは拳に収まる程度。然したる使い道も無いこの結晶片は使い道がわかるまで各自の自管理となった。
「おい、何してんだ」
「いや別に。ぼんやりしてるだけ」
「そうか」
クロも別に大して興味があった訳では無いらしく、俺の持ってる【流転結晶 シリウス】を見て、同様に懐から取り出した同じ物を眺めて出した。
「結局これは何なんだろうな」
「さあ?」
世界最高の鑑定スキルの持ち主にも暴けなかった謎のアイテムの効果何て俺達が考えてもどうしようもあるまい。
「……暇だ」
「だな」
やる事がない。別に【魔王】を倒すのを諦めたとかではない。今も俺達は地球へと帰りたいと思うし、その為に努力を惜しむつもりは……努力せずに楽に強くなりてぇ。
……兎も角今の俺達はやる事が無い。次の行き先が決まらずこの国に居候状態だ。王国の上層部が他国の上層部と頭を突き合わせて相談しているらしいが、未だ結果は出ていない。大人にいいように使われてるぞと言われればそれまでだが、所詮俺達は高校一年生。異世界に来て死生観が変わろうと、ラノベの転生者や転移者の様に権謀術数に飛び込んでやっていくなんて無理だ。騙されていようが利用されていようが手段は選べないのだ。幸いこの世界は【邪神】以外にも今回の<焔燼星皇>の様に世界の存亡を掛けた決戦をしないと人類が終わる様なトラブルがそれなりにあるらしく、そう言った足の引っ張り合いをする人間は国の上層部にはあまりいないらしい。難易度:イージー(ベリーハード)の異世界って感じだ。
「そういえば」
「なんだ?」
「次の行き先決まったってよ」
「は?」
「エルフの国で【邪神】の代行分体探し」
「ちょっ!?」
はよ言えや!!
「出発はいつだ」
「明日」
「明日ぁ!?」
急いで準備する必要あるじゃねえか! まず、……ええっと?
「なあ。俺達旅の準備って何か必要か?」
「前回使ったのを含めて道具が全部お前の無限収納に入ってんのに何の準備するんだよ。いざとなったらお前のスキルで造れるし」
「だよなあ」
旅を舐め腐ってるな俺達。
「そういうわけでのんびりしてようぜ」
「そうだな」
暇だ。
六月一日に新作上げようと思っているので、そこでエピローグ上げて終わろうと思います。話を終わらせた事が無いので遅れるかも知れませんが生暖かく見守ってください。今回の話もですけどエピローグは多分短いです。




