源霊疾走
“ガツン! ”
『創造』スキルによって出現する金色のハンマー。それで思いっきり俺の心臓を殴りつける。ハンマーの触れた傍からリソースへと変換されるのを『叡智之王』が制御し、身体を構成する全ての元素を二分割して半分だけをリソースへと回帰させる。
《対象の肉体構成元素の50%が源素へと回帰したのを確認しました》
《対象の種族を人間から源霊へと変更します》
ナニカが変わった。決定的だが帰路はある。俺の身体をリソース……正しくは源素と言うらしい。その源素へと変えて立ち上がる。身体の密度が半分になった所為か妙に軽い。全身から青白い光が弾けて迸る様は確かに幽霊の類に見えるだろう。
「さあ、行くぜ<焔燼星皇>!」
彼我の距離はそれなりにある。だが、声は届いたらしい。こっちを見据えて笑みを浮かべている。
いいか、見逃すんじゃねえぞ。瞬き一つしちゃだめだ。今から俺は光になる。
「【創造】【新生】」
生み出すは未知の粒子。元素を内包した光子。
「光化疾走」
景色が変わる。俺が居るのは<焔燼星皇>の眼前。そらどうした。隙だらけだぜ?
右腕を源素と元素に還元。元素を左腕に、源素を右腕に偏らせる。
「【創造】【新生】」
生み出すは存在しない金属。<焔燼星皇>を殺す為だけにある金属。右腕を金属に新生。剣の形状に変え<焔燼星皇>に突き立てる。
「偽神滅鉄【焔燼殺し】」
いよいよ青白い白色矮星の様な見た目になっていた<焔燼星皇>の身体に【焔燼殺し】を突き刺す。
『ガハッ!?』
浅い。対<焔燼星皇>特化の武器と言えども人でも神でも無いナニカの領域に至った<焔燼星皇>には早々致命傷は与えられない。即座に【焔燼殺し】を腕に戻してまた光速で引く。
『全く。何だ今の刃は。軽傷とは言え根源から存在を削られたぞ』
「お前を殺す為だけの特別物質だ。泣いて喜べ」
『そうか。それは心の底から喜ぼう。で、それをどう当てる?』
「何か勘違いしてないか? 今のは確かにお前を殺すのに特化してる。でもこれ以外じゃ殺せない訳じゃないんだぜ」
そら、俺に気を取られてていいのか? 光速では無くともそいつらは確かにお前を殺すぞ?
<焔燼星皇>の背後、まるで初めから其処に居たかの様にそいつらは居た。空間に穴が空いた様な黒から出てきたのはついさっきまで<焔燼星皇>に猛攻を仕掛けていた二人。
「『呪怨瘴禍』」
「『祖は獣纏う王者の外套:黒獣アジ・ダカーハ』」
先の谷内のペイルライダーによって未だに<焔燼星皇>の状態異常耐性へあ失われている。油断してんじゃねえぞ<焔燼星皇>。ボーっとしてたら呪い殺されるぞ。
『……! <満ち満ちる光環>』
同心円状に広がる光の輪っかが周囲に居る者全てを吹き飛ばす。太陽関連で言うならコロナとかそんな所だろう。……こんな攻撃的な物ではないが。
今、この戦場は致命に満ちている。俺の剣が、クロの呪いが、谷内の毒が、誰とも知れぬ奴らの攻撃が。だが、お前はまだ見えていない。この戦場に於いて俺を超えるお前を殺す致命の刃が。
「光化疾走」
『もうその手は食わん! <満ち満ちる光環>』
攻撃を加える前に弾き飛ばされる。こっちも光みたいな物だからダメージは無いが光環に引きずられて弾き飛ばされた。だが、これでいい。
「なあ、お前のそお太陽をモチーフとした技あの数々、確かに強いけどさっきの六大元素を元とした技とかでもない限り一発毎に僅かな再発動までの時間が掛かるだろ?」
『然り。それが何だと……』
じゃあ駄目だ。そんなあからさまな隙をアイツは逃さない。
『ガフッ……』
<焔燼星皇>の腹を貫いて生えた刃、すんでの所で躱したらしく心臓の少し下。肋骨のど真ん中を抜けて貫かれている。だが、これで終わりの筈が無い。何故ならアイツはまだ斬っていない。貫いたのならば斬らねば道理とならない。
「縁切り鋏」
先ず初めにアイツは【煌炎皇】の無限循環能力を断ち切った。だが、それは【煌炎皇】の身体に直接的なダメージを与えた訳じゃない。タチキリでは無く。切ってそれを二つに分けてこそ斬るという事象だ。ならばこの後来る物は必然。
「『タチキリ』改め、『ワカタチ』」
“斬”
割れた。<焔燼星皇>の身体が左右真っ二つに裂けた。
「<焔燼星皇>が<焔燼/星皇>になった」
「ふざけたこと言ってる場合か! あれ見ろよ!」
クロに言われていれば<焔燼星皇>の身体の恐らく心臓部にあたる所から青白く輝く珠が出てきた。珠といっても普通の球状の珠では無い。何と言うかメビウスの輪を繋げまくって球形を作ったいたいな形をしている。
「あれは、まさか」
『然り。これこそが我が力の源。無限のエネルギーを生み出す究極の機関。その名を【第三永久機関 劣化流転式悠久循環炉・連環星】と言う』
流転を失い、肉体を失い、最後に其処に残ったのは永久に至る力。




