焔燼星
アマルティアが死亡しても第一段階に戻るという頭のおかしい循環の輪を断ち、山本が俺を除くパーティーメンバー全員の魔力と、わずかとはいえ己の生命力すら対価にした一撃を当てた。流石の【煌炎皇】と言えどもこれだけのダメージを無かったことには出来ない。魔力枯渇で山本達が意識を失う中、俺は【創造】した転移能力のあるアイテムで倒れたみんなを回収していた。
「あれで【煌炎皇】も終わりかな?」
『生命力が急速に減少しています。流転の特性を行使できなくなった為、擬似的な不老不死も機能を失った様です』
確かにさっきまで赤熱していた【煌炎皇】から放たれる熱風が徐々に和らいでいるのを肌で感じる。勿論まだ完全に死んだわけじゃない。まだ無事な俺がさっさととどめを…
『【煌炎皇】に異常を感知。立ち上がります』
「へ?」
みれば確かに真っ二つにされた筈の【煌炎皇】が五体満足で立ち上がった。だが奇妙なことに先程まで機械的であった動きとは打って変わってぎこちないが何というか人間臭い。
『これは、…そうか私は死の淵に立ったのか。流転が断たれ、循環が終わった。【燈皇】も【煌炎皇】も【残火皇】も【灰燼皇】も止まったのか』
【煌炎皇】いや先程まで【煌炎皇】だった今は確かな誰かが言葉を発する。
『そこの君、私を止めてくれたのは君か?』
「え?いや、俺と言うより俺の周りでぶっ倒れてるこいつらです」
『そうか、それではその者達に感謝を。そして心からの謝罪を』
「謝罪?」
『極限まで命の危機に瀕したことで【煌炎皇】を含む四つの流転の系譜の【職業】に意識を呑まれた私は今君たちの手によって救われた。…だが、私を殺すのには届かなかった』
“ゾクリ”
良く分からない。良く分からないが今物凄く嫌な予感がした。
『恐ろしいことに私の保有する四つの【職業】は如何なる理由か生存本能なんてものを獲得したらしい。システムの一部でしかない【職業】にこんなことが起きるとは、世界は本当に不思議に満ち溢れている』
「おい、おいおいおいおい!」
『すまない。意識は復活したが、肉体の制御権は未だに【職業】の方に有るらしい。だから済まない。どうか、どうか』
“私を止めてくれ”
多分最後にそういったのだろう。だが俺には聞き取れなかった。【煌炎皇】に支配された誰かの身体から噴出した先程とは比較にならない熱風に周囲の仲間ごと吹き飛ばされたから。
《【燈皇】機能停止》
《【煌炎皇】機能停止》
《【残火皇】機能停止》
《【灰燼皇】機能停止》
《【流転の欠片:灯】の全ての循環が停止》
《流転への回帰…不能》
《皇の終を確認》
《破棄されたコードをサルベージ》
《コード:【我が灯火潰えるその日まで】…実行》
《コード:【煌めきと輝き】…実行》
《終に輝く星》
《届かぬ祈りの結晶》
《回帰果たせぬ欠片の輝き》
《灯り》
《燃え》
《薄れ》
《消える》
《瞬きの輝きはここに潰える》
《最後に残るは必滅の煌》
人型の熱の塊だった先程の姿とは打って変わって明確な人の姿になる。だがその眼は蒼焔に燃えていて、服の代わりに白焔を纏っている。周囲にいくつもの太陽の様に輝く珠を浮かべて宙に浮かぶその姿はまるで【焔神】。
「『鑑定』」
いつもの癖で行使したそのスキルの映す情報は、確かにアレが理から外れたことを教えてくれた。
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【名前】<焔燼星皇>
【種族】<理外之神>
【称号】<限定超越者>
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似ている。あの【邪神】の代行分体だとかいう【九なる火のスクラグス】のステータスによく似ている。だが恐らくこっちの方がもっとヤバい。
『すまない。加減は無理なようだ。どうにか生き延びてくれ』
「無茶言うんじゃっ…!?」
空に浮かぶ無数の恒星。それらが様々な軌道でこちらに落ちてくる。
回避、無理!防御、熔ける!転移、間に合わ…
『<輝ける恒星雨>』
「やばっ…」
そして世界が光に包まれる。
「させるか!『立方世界』」
世界は太陽、いや黒曜にまれる。
評価ポイント平均が意外と高かったから嬉しいです。総合も完結前に一千ポイント超えることが出来ました!読者の皆さんに心からの感謝を。本当にありがとうございました。