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戦う生産職  作者: 雷炎
煌炎皇編

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タチキリ


アマルティアが神の階を昇り、その最後の一撃にて大きなダメージを受けた【煌炎皇(ブレイズ)】の許にいち早く辿り着いたのは見山健斗、黒沼隆 、谷内小鳥の三人であった。


「よお」


「…なんだそれ」


「幽霊さんが沢山だね~」


「俺の新しい職業(ジョブ)の力だ。この戦場で死んだ人たちを英霊として擬似的に復活させている」


「…戦闘力は?」


「物理戦闘力はゼロだ。代わりに魔法系は俺の魔力のある限り疲労なく行使出来る。この人達全員の生前のステータスを合計した分が俺のステータスに加算されるから早々尽きることは無い筈だ」


「…ふざけた能力だな」


「すごいね~」


「そう言うそっちだってなんか仰々しい物抱えてるじゃんか。何それ?」


「…よくわからん」


「でも何となく使い方は分かるよ~」


「ならいいや。さっさとやっちまおうぜ」


「…油断すんなよ」


「行くぞー!」


互いの近況報告を簡潔に済ませた三人はいざいざと【煌炎皇(ブレイズ)】に挑む。


「お願いします皆さん。『英霊軍団エインヘリヤルレギオン』」


「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」


優に百を超える英霊達から無数の魔法が流星のように煌めいて【煌炎皇(ブレイズ)】目掛けて一直線に乱れ飛ぶ。


「…いくぞ」


「ばっちこーい!」


《条件達成を確認しました》

《個体名タカシ=クロヌマの能力制限を解除します》

《【職業(ジョブ)】が完全解放されます》

《【職業(ジョブ)】が【暗殺者】から【夕闇皇(ダスク)】に変更されます》


《条件達成を確認しました》

《個体名コトリ=タニウチの能力制限を解除します》

《【職業(ジョブ)】が完全解放されます》

《【職業(ジョブ)】が【獣魔術】から【獣神(パーン)】に変更されます》


「混ざれ、【真想機神人形核 クロックワーク・エクス・マキナ】」


クロに、その手に握られた歯車で埋め尽くされた珠が融合し、直後に周囲の地面や空間が漆黒の歯車に置換され、埋め尽くされていく。

漆黒の歯車の黒い波

は英霊達によって放たれた魔法を追うように【煌炎皇(ブレイズ)】に迫る。


谷内はまだ動かないが、それでも通常の生物が相手であればオーバーキルにも程がある攻撃の数々に【煌炎皇(ブレイズ)】はアマルティアの攻撃による後遺症を引きすりながらも迎撃した。


『『烽火連天(スプレッド)』』

魔法も歯車も、物質、非物質関係なく全てが焼き尽くされ、攻撃の起点を見れば底にはもうミヤしか居ない。


『!』


既に【煌炎皇(ブレイズ)】の背後には漆黒の歯車から滲み出る様に出現したクロと如何なる方法か一瞬で【煌炎皇(ブレイズ)】の背後に回り込んだ谷内が攻勢に入っている。


「病み死ね。『黒死霧葬』」


クロから放たれたのは物理攻撃でも魔法攻撃でもなく()()()()()()。莫大な熱量と圧倒的なレベルによるステータス補正により【煌炎皇(ブレイズ)】に状態異常の類は一切効かない。そう、()()()()()


「『祖は獣纏う王者の外套(虹芒獣纏外套):青獣ペイルライダー』」


一瞬にして青い、いや()()()()馬に変貌した谷内がその常識をひっくり返す。


「『死を齎す蒼ざめた馬(ペイルライダー)』」


この瞬間、視覚的には何ら変化が無くとも【煌炎皇(ブレイズ)】の内側では劇的な変化が起きていた。

()()()()()()()()()という形で。


【虹芒獣纏外套 ビースト】、それがアマルティアから谷内に送られた特典武具の名である。それは本来、倒した魔物と同じスキルを獲得できるというただそれだけのアイテムだった。それをはるか昔にアマルティアと今回の戦いに参加することの出来なかった【色獣】と呼ばれる七匹の魔獣達によって魔改造された一品であり、現在の効果は【色獣】の能力の再現及び一時的な【色獣】への変化となっている。そこに谷内自身の【獣神(パーン)】という職業(ジョブ)がシナジーしたことにより、想定を遥かに超えた力がここに生まれたのだった。


『ガっ!?』


本来想定していない状態異常攻撃、それが効果率100%で発揮されたのだ。【煌炎皇(ブレイズ)】はもがき、一瞬とはいえ完全に動きを止めた。


そしてその一瞬、僅か刹那に彼女の刃は既に届いていた。


「縁切り鋏」


戦場はるか後方、英霊達よりも尚更に後ろにて彼女は既に攻撃を終えていた。


「『タチキリ』」


彼女の仲間たちのそれを含めた全魔力どころか体力、果ては生命力すらも僅かに消費して放たれた全身全霊の一撃。


「ありがとう。みんな」


それは確かに空間を超え、因果を超え、無限流転の力を持つ【煌炎皇(ブレイズ)】の天命を、確かに切り裂いたのだった。

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