英雄
私が「小説家になろう」で一番好きな小説の作者さんのTwitterみてたら。更新するの忘れてたと言って先程更新されたんですよ。それをみて「まじかよお前」って思いながら見ててふと気付いたんです。
「あれ?私昨日予約投稿したっけ?」と。
いやほんと申し訳ありません。
英雄: 才知や武勇などがすぐれ、普通の人には出来ないような事柄を成し遂げる人。別称は「ヒーロー」。
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英雄願望
それは数多の人々にその偉業を讃えられ認められたいと思う気持ち。
それは多くの若者が抱き現実を知りいつしか失う物。
ここにある一人の少年が居た。その少年は大きな争いの無い平和な国に生まれごく一般的な家庭の中でありふれた人生を送っていた。
異世界にクラスごと召喚されるまでは
降って湧いた絶大な力、自らの力を必要としてくれる人々、頼れる仲間たち。
あまりにも現実離れしたその絶大な変化は少年の心の消えたはずの英雄願望に再び熱を与えた。
自分自身の唯一無二の力を駆使し、時に仲間達をを守る盾に、時に絶大な一撃を放つ矛に、自分一人が特別な訳では無いが共に歩む仲間がいると言うのは寧ろ嬉しく、また同時に心強くもあった。己の力で特典武器と言う力も手に入れ自分達の戦いと冒険の日々はこのまま順調に行く物だと思っていた。
あの悪魔に出会う迄は。
『…『薪尽火滅』』
地獄が生まれた。
炎に焼かれてのたうち回る人、熱波で全身に火傷を負った人、それ等に巻き込まれて貰い火してしまった人。阿鼻叫喚が響き渡り誰も彼もが苦しみ悶えている。
本来の力を発揮した【煌炎皇】の力は圧巻の一言に尽きた。
視界内に居れば確実に届く炎など躱しようが無い。
必死に『回復魔法』や『水魔法』をかけて回るが万能型に分類される自分の出力では焼け石に水であり、あまり意味は為さなかった。
一人、また一人とその命の火が燃え尽き斃れて逝く。
こんな時になって漸く自分の生きるこの場所こそが現実だと感じられた気がした。
それと同時に怖くなった。
目の前の地獄絵図に、では無い。この惨憺たる様を見ても尚、自分の心に大きなダメージが入っていない事にだ。
「これはただの予測だけど俺たちがこの世界に来た時に最初から持っている異世界の◯◯と名のつく称号には倫理観や死生観といった類の物をこの世界準拠にする力があるんじゃないかと思う」
ふと、以前ソウタの言っていた言葉を思い出した。
これがこの世界の基準と言うならば今、自分の周りで必死に助けている人々は何なのだ?吐き気を堪え、それでも尚彼等に治癒を施し続ける彼等の何処が自分と一緒なのだろうか。
まるで画面の向こうから覗いているかの如き違和感に怯えを抱いたその時、不意に背後に気配を感じて振り返った。
「……シンさんですか?」
「うん。今はアマルティア何だけどそんな事はどうでもいい。やあ、ケント君。顔が優れないね」
「…わかりますか?」
「そこまで覇気の無い面構えをしていたら僕でなくとも簡単にわかるさ」
「そう、ですか…」
「で、どうしたんだい?」
「怖いんです」
「戦うことが?それともアレが?」
「いいえ、どちらでも無く自分自身がです」
「自分自身?」
「俺は、本当に見山健斗なんですかね?ただその記憶を持ってるだけの別人なんじゃ無いですかね?そうでもしないと俺は余りにも死に対して無関心が過ぎるんですよ」
「ふむ。死に無関心か。本当にそうかな?僕には君が死に無関心というよりそこを終わりと考えて居ないだけのように見える」
「終わりじゃ無い?」
「君の力の本質は魂や霊体に依る所が大きい。故に肉体の損失=死と考えられないんじゃ無いかな?」
「どういうことです?」
「君にとって真なる死とは肉体だけで無く霊体、ひいては魂の消滅こそが死なんだよ。故にまだ魂を残している彼等を死んだと思えない」
「前に魂は肉体が死んだら直ぐに消えると聞きました。なのに何でまだ消えてないと言えるんですか?」
「何故って、……もしや気付いていないのかい?」
「え?」
「ここで死した彼等の魂を君がその内に宿している事にだよ」
アマルティアの眼には見えていた。戦場各地で死した霊魂たちが吸い寄せられるようにミヤに、正確には彼が保有する特典武器である【無名魂器 】に格納されていることに。
「君は恐らく代表者であり代行者なんだね。それも魂の」
「魂の代行者?」
「無念の内に死した魂達の無念を晴らすべくその代価に彼等の力を借りて戦う死者の遣わす代行者。ある意味死者達の英雄と言える物かも知れないね」
「英雄……」
「だがまだ君は英雄では無い」
「……」
「英雄と勇者の違いを知っているかい?
勇者とはいずれ偉業を成し讃えられる栄光を定められし人。
英雄とはその身一つで成した大偉業により讃えられる人。
成せば英雄、成さねば愚者。
わかるかい?こんな所でうじうじと悩んでいる様な君が英雄でなんてある筈がない。いやあってはならない。」
「………」
「君が英雄となるか愚者となるか、はたまた勇者となるかは僕にも分からない。だけど、願わくば君が諸人の光となる存在になることを楽しみにしているよ」
「俺は…」
「それしゃあ僕はこの辺で去るとしよう。またね」
「あっ……」
勇者、英雄、愚者
俺は一体どれなんだろうな。異界から呼ばれし勇者か、死者達の英雄となるのか、何もせずに愚者となるのか。
「決まっている」
俺は、英雄に憧れたんだ。物語の中で獅子奮迅の働きを見せ遂にはその腕っ節一つで成り上がる、そんな英雄に魅入られた。
だったら、やる事は一つだろう。
胸に手を当て自分の魂を感じとる。
途端に感じる自分以外の無数の気配。それはこの戦場で敗れし人々の魂。
「お前達の望みは何だ?」
聞くまでもないが敢えて問う。お前達は俺に何を望む?
“俺は”
“私は”
“僕は”
“あたしは”
彼等の言葉などとうに決まっている。
「その願い、確かに聞き届けた。俺にそれが為せるかなんて分からない。それでも、お前達の望みに答えるように全力を尽くそう」
それこそが英雄という物なのだから。
《条件達成を確認しました》
《個体名ケント=ミヤマの能力制限を解除します》
《【職業】が完全解放されます》
《【職業】が【雷霊師】から【英霊皇】に変更されます》




