星の護人
忙し過ぎてやばい(それはそれとして人生超楽しい)
「なん…だ、このふざけたスキル群は…」
万物無差別着火、空間再発火、超高威力汎用攻撃、能力再現、無限蘇生、王級炎精完全支配
どう考えてもこれ一つ有れば大抵の戦いがどうにでもなると言ったレベルのスキル群。
「こんなの…どうやって勝てばいいんだよ…」
誰かがぽつりさと呟いた言葉は戦場に立つ全ての人々の言葉を代弁していた。
ふと【煌炎皇】に関する文献に書かれていた言葉が蘇る。
“彼の者完全に滅すること遂に能わず。如何なる者もこれ成し遂げること不可能なり。故に彼の者復活の折には万軍を持ってして封じ給へ。”
500年前の人々だって【煌炎皇】と戦ったのだ。例え勇者達が居なくても一度も討伐出来なかったとは到底思えない。彼等もこの無限蘇生能力に打ち勝てず封印という形を取ったのだろう。
…封印?
「おい、500年前の奴らってどうやってアレを封印したんだ?」
「そんな物が分かってたらとっくに動いてる。【煌炎皇】の被害で当時の資料は粗方焼け落ちたって言ってただろうが」
「んなもん俺も理解してる。俺が言いたいのはあんな熱量の塊を封印しようと思っても術式が焼かれて無理なんじゃないかと思うんだよ」
「…確かにそれもそうだな」
「あれを封印しようと思ったらその方法はかなり限られてくるはず。それがわかればどうにかならんかね?」
「…確かにもしかすれば候補の絞り込み位は出来るかも知れないな。よし、俺はさっきの【碑文記録者】の人に聞いて見る。」
「わかった。こっちも手の空いてる人に声を掛けて回ることにする。」
『現在の権限で閲覧出来る全てのログを解析します』
クロとソロモンが調べ物をしている間に俺もできうる限りの事をしなくてはならない。
現状【煌炎皇】に有効打足り得る攻撃は皆無だ。幾ら強大な一撃を加えた所で最終的に初期状態で復活してしまう。
「シンさん!」
「やあ、ソウタ君。さっきまでアレの熱量を封じ込めていたんだけどもう余り意味がなさそうだね。自分から放出される熱量を完全制御している。ああも効率的に運用されると漏れ出した分を封殺していただけの僕には如何しようも無いね」
「そうです。それでシンさんに聞きたいんですけどアレを封印する手段って何か知らないですか?」
「おいおい。知っていたらこの前の会議でちゃんと言っているよ。生半可な術式じゃ術式ごと蒸発する上にあのふざけたスキル群だ。僕の持つ特典武器達を総出で使ってもまず無理だね」
「やっぱそうですよね。せめて時間稼ぎ位はしたいんですけど」
「それなら任せてくれ。暫くの間は僕たちが時間を稼ごう」
「僕、たち?」
すると、突然戦場が闇に覆われた。何かと思い見上げてみればそこには考えるのも馬鹿らしいサイズの島の様なナニカが浮かんでいた。遠近感が狂っているので正確には確認することが叶わないがおそらくアレは…
「ドラゴン?」
「そうとも!我が友にしてこの星で最も奇異な存在【廻星機神竜 クロノス】君だよ!」
『No』
シンさんの言葉に意を唱える様に空から声が響く。
『偽真名式封印解除』
『真名開帳【征星界拓迷魚 クロノス】』
瞬間、空から無数の煌きが解き放たれた
『『機竜断片』』
それは空を覆う機械の竜から零れ落ちた破片。突如として機竜の全域を覆ったヒビ割れから溢れた破片は全てが狙い澄ましたかの様に【煌炎皇】目掛けて降り注ぐ。
これには流石の【煌炎皇】でも対処に追われる様で視界を上方に固定して次々と『薪尽火滅』で焼き尽くしている。
そしてヒビ割れた中から新たな存在が出現する。
それは何とも奇妙な姿をしていた。
まず見た目は鯨に近い姿をしている。だが、その大部分が金属や何かの機械で構成されており、生物としての鯨とは別物と言える。更にそれを中心として浮遊する子鯨の如き四体、いや四機のカラフルな鯨がいる。
『界式特殊武装【勇魚】展開』
四機の子鯨の機体に無数の線が入るとそれぞれが形を変え、巨大な武器へと変じた。
『【界系・科学の惑星】:【歯車世界】』
四機の子鯨の内、茶色の鯨が変じて生まれた剣と銃の中間の様な形をした何とも不思議な武器がクロノスに装着され、一体化する。
『無限迫撃を開始します『久遠射歯砲』』
“ドン!!!”
音がすると同時に【煌炎皇】の身体に食い込む様に成人男性の半分位の大きさの歯車が突き刺さっていた。
“ドン!!!”
“ドン!!!” “ドン!!!”
“ドン!!!” “ドン!!!” “ドン!!!”
だがそれは一発で終わること無く、等間隔で撃ち込まれ続ける。しかもその速度はどんどん加速しており、途切れる気配は無い。
「でもあれじゃ倒しきれない」
「いいんだよそれで」
「シンさん?」
「あれは単なる時間稼ぎ。彼はみんなが来るのを待っているんだよ」
「みんな?」
「見てればわかるよ。…そら、噂をすれば来たぞ!」
「『天網海界』」
歯車が撃ち込まれ続ける【煌炎皇】を封じ込める様に綺麗な水球が生成される。
即座に蒸発させようとするが、如何なる仕組みか蒸発した分量と同じだけの水が注ぎ込まれて破れる気配がない。
「うふふ、遅れて申し訳ありません。海の乱れを正すために動いていて遅くなりました」
一体いつから居たのか、気付けばそこには海の様に蒼く透き通った瞳と髪を持つ女性が佇んでいる。
「やあパライナさん!元気でしたか?」
「あらあらシンさん。ええ、貴方もお変わりない様で何よりですね。クロノスちゃんも…あらまあ元気一杯ですこと」
「ところで後の二組は?」
「色獣さん達は地脈と精霊がかなり狂っている様なのでその対応に追われて欠席ですね。もう一人は…」
「だらっしゃあああっ!」
幾らでも補給される水の檻を一瞬にして全て蒸発させるというかなり強引な方法で突破した【煌炎皇】目掛けて謎の塊が落ちて来た。
「あらあら、丁度ご到着の様ね」
「ちいっ!ロンギヌスの事象確定が弾かれやがる。クソ面倒だな。」
そこに居たのは背中からとても立派な一対の羽を生やした妖精
「うん、1組欠席とは言えこれでみんな揃い踏みだね。」
【七罪天魔王 シン】
【征星界拓迷魚 クロノス】
【大海母神鯨 パライナ】
【万魔討滅猟精 キニゴス】
この星を護る人外達の頂点達が一堂に会した。
リマインダーバグって投稿し忘れかけました。