与えられしギフト
blenderで遊んでたら一週間小説書くの完全に忘れてた。
『欲しがりの右手』
そう呟いたとたん、シンさんの右腕が紅く熱を帯び始めた。
「むう、やっぱりこれ程の能力だと一つ奪うのが限界か。
…しっかし熱いねぇ。丁度いいからこれも使うか。『妬み者の右目』」
すると、シンさんの右腕全体が紅く輝く程の熱が一瞬で消え失せた。
「それが噂の大罪スキルってやつですか?」
「ああそうだよ。『欲しがりの右手』は手を向けた相手のスキルを奪い、『妬み者の右目』は妬んだ一つの物への莫大な耐性を得る。七罪のスキルを全て内包した僕はその全てを自在に扱え、その力を全て最大限に発揮出来る。それがかつて起きた最初で最後の『大罪大戦』の勝者であるこの僕、【七罪天魔王 シン】の力だよ。」
「『大罪大戦』?」
「おっと、今それについて語る余裕は無いから君のスキルにでも聞いてくれ。」
「!?」
「気付かない訳ないだろ?『鑑定』や『解析』には自分の所有する最高位のスキルの一つ上までのスキルしか正確に判別出来ないなんて隠し制限があるけど僕レベルならその『秘匿』すらも抜いて全て把握できる。…最も、君たち異界人に対して『鑑定』をしようとする意思に制限でも掛かっているようだから僕以外は誰も気付いてないかも知れないけどね。」
「…」
「兎も角。君のその力は今この戦場でとても役にたつものだ。存分に活かしてくれ。」
「活かせと言われても俺の武器や能力じゃ【煌炎皇】にとどくまえに溶かされちゃいますよ。」
「成る程成る程。なら届くだけの武器を与えよう。」
「はい?」
するとシンさんは俺に左腕を向けてそのスキルを発動した。
「『贈与の左手』」
《確認しました。》
《個体名【七罪天魔王 シン】から個体名ソウタ=マツヤマに【無限鉱脈鶴嘴 ジズマン】及び【拡域統領旗槍 アーリア】が譲渡されました。》
するとシンさんの背後に浮かんでいた無数の武器群の中から七色に輝く鶴嘴と真っ白な旗の付いた槍が俺の前に降りてきた。
「あの、これは…」
「あげる。」
「はい?」
「それがあれば君の力を万全に引き出せるだろう。だからあげる。」
「はあ。…はぁ?」
「それじゃあ君も頑張ってね。」
「あっ、えっと、はい!」
「ああ、最後に一つ。」
「なんですか?」
「君の力はきっと『数』だ。」
「数?」
別に俺は分身したりとかは出来ないぞ?クロ辺りなら余裕で出来そうだけど。
「至高の一より数千数万の濫造品こそが君の力だ。」
「なんか馬鹿にしてません?」
「そんなことは一切ない。【煌炎皇】の力だって無限じゃない。幾千万の塵を積もらせて最後に届けば勝ちなんだよ。」
それだけ言ってシンさんは【煌炎皇】の方へ飛んでいってしまった。
「塵、積み重ね…」
取り敢えず如何やったのかは知らないけど受け渡された特典武器を使ってみることにしよう。
そう考えて俺は右手に【無限鉱脈鶴嘴 ジズマン】を、左手に【拡域統領旗槍 アーリア】を握った。
「!」
わかる。ついさっきまで完全に他人の物であったと言うのにまるで自分の物であったかの様にその使い方が手に取るようにわかる。これが特典武器、強大な魔物の力の結晶。
「示せ、『祖は領域現す旗槍』」
足元にアーリアを突き立てるとそこから直径1キロにも渡る広大な領域が展開された。そして俺はその領域に向かって右手の鶴嘴を振りかぶる。
「『我は無限を拓く物』!」
突き立てたジズマンの周囲にみるみると大量の鉱石が湧き出てくる。鉄、銅、錫なんかのありふれたものからミスリルやオリハルコンなんて物まで少量であるが現れている。
これが【無限鉱脈鶴嘴 ジズマン】のスキル『我は無限を拓く物』の能力、「鶴嘴が触れた鉱石を周囲に無限に生み出す能力」そしてこれに【拡域統領旗槍 アーリア】のスキル『祖は領域現す旗槍』の効果である「自身という領域の拡張」を組み合わせれば領域内にある全ての金属を無制限に生成する能力の出来上がりというわけだ。
「だったらこれが出来るよな。『創造:変性』」
近くに転がっていたミスリルの金属塊に変性を行う。
「うわっ。気持ち悪いくらい魔力の通りが良いな。」
差し詰め魔銀触手って所だな。
だがこれを【煌炎皇】にぶつけても有効打にはなり得ないだろう。つい今しがたミスリルの剣が融かされたのが見えたし。
シンさんは濫造こそが俺の武器って言ってたけどそんな大量生産なんて出来な…
「あっ。」
ミスリルで作った魔銀触手はやたらと魔力の通りが良くてそれこそ指先みたいに扱える。そしてアーリアの効果は自身という領域の拡張だ。これらが組み合わさると言うなら…
「『創造:鍛治』」
するといつもなら俺の右手にしか現れない筈の光り輝く金槌が全ての触手の先端に出現した。
「まじかよ。」
ソロモンの補助も合わさって全ての触手を並列で精密に操ることができる。これなら魔力が尽きない限り延々と生産が行える。材料は周囲に文字通り無限にある。となればやることは一つだろう。
「さあ、生産の時間だ。」