変性術と神託
環境が変わって体調崩れそう。
王都侵略を目論んだ魔物【大軍統鬼 ドミネーション】が討ち取られたことでその日は大きな宴が催された。流石に酒は遠慮させてもらったがよくよく考えればここは地球でも無いし俺たちには高いステータスがあるのでそこまで気にすることも無かったかと思う。
ドミネーションを討伐した翌日、俺は図書館に訪れていた。
先日の戦いでも感じたが俺は他のみんなと違って直接的な戦闘能力があまり高く無い。レベルはそれなりに高いけどクロ見たいに即死攻撃は使えないし、ミヤ見たいに精霊なんかを利用した重い一撃は放てない。松屋見たいに強力な魔法を連射したり溜め攻撃も出来ないし、谷内みたいな動物や魔物の力を借りた多彩な攻撃も無理。山本は俺に近い感じだけどあいつ最近スキル無しで鋼鉄ぶった斬り始めたからなぁ…。
そこで図書館にある本で有用なスキルなんかを探すことにした。ソロモンに聞いてみても俺自身が方向性を定めてないせいで答えられないとのこと。
「色々あるなー。」
『ゴブリンでもわかるゴブリンの倒し方』
『収束魔法と因果律』
『複数の性質を持つスキル』
『悪神と害神の違い』
『魔物大百科』
『今日のトレント』
『世界ダンジョン紀行』
『英霊神殿とその歴史』
『世界の禁書』
『決戦級モンスターとは』
『神へと至る獣』
『死を越えよう』
『魔法陣基礎』
『七罪を収めし男』
『精霊と聖霊』
『土魔法と錬金』
『世界に属さぬ世界』
『大天使観察日記4』
『穿つ槍』
『暇潰しに世界滅ぼしてみた』
論文らしき物から小説まで色々とある。
取り敢えず目に付いた『複数の性質を持つスキル』とやらを読んでみた。
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(『複数の性質を持つスキル』一部抜粋)
この世界には多くのスキルがあるが中には複数の性質を持つスキルが多くある。例えば『料理』スキルだ。このスキルは料理を行うことでレベルが上がるが実はそれ以外にもある。生物を殺すことだ。厳密には刃物で生物を斬り殺すとそれが捌いたという扱いになるようで、自ら材料を調達している料理人ほど顕著にレベルが上がりやすいようだ。他にもこういったスキルは数多くあり現在判明している物の一覧をここに記す。
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この本に載っているスキルで気になったものがある。『変性術』というスキルだ。
これは物質を性質の近い別のものへと変化させるスキルで扱いとしては何を変性させるかにもよるが錬金術と各種魔法にも経験値が入るようだ。
もしこれを『創造』に組み込めればかなり面白いことができそうである。
《保有者が生産スキルと認識した為『変性術』が『変性』として『創造』に組み込まれました。》
まじかよやったぜ!
なれば早速鍛えるとするか。
◆◇王都近郊の草原◇◆
「おし、ここなら誰もいないからちょうどかいいだろ。『創造:変性』」
スキルを発動すると俺の両手の平に光り輝く白い文様が浮かび上がった。
『どちらか又は両方の手で対象に触れることで変性を行えます。変性には魔力を消費するので一度に大量の変性を行うと魔力枯渇になる恐れがあります。』
「おけ」
俺は左手で土に触れて変性を行う。
「《作業開始》」
イメージするのは土の塊。出来るだけ固めて圧縮した土の塊。
魔力が抜けて行く感覚と共に左手を当てていた土がゆっくりと持ち上がり大きな土の塊が出来た。ここからだ。
「『創造:錬金』《生産技能:抽出》」
土の塊から鉄だけを抜き取る。ここは昨日戦場になった場所付近だから地面に染み込んだ血液がたっぷりとある。そこから鉄だけを抽出する。
「…できた!」
そこには一回り以上小さくなったが不純物の一切含まれない鉄の塊が浮かんでいた。
「そんでさらにこれを応用して───」
〜1時間後〜
「なんとか形になったな…」
やっぱ召喚者ってチートだわ。普通どう考えても短時間でこのレベルまでスキル鍛えんの無理だろ。
だけどこれどう考えても…
「まあいいか。」
“ゴーン!ゴーン!ゴーン!”
なんだ!?
『王都より緊急時用の鐘楼が鳴っています。至急お戻りください。』
「なんか知らんが急げ!」
◆◇冒険者ギルド前◇◆
「おーい!」
「あっ。」
「きたか。」
そこには俺以外全員揃っていた。
「なんかあったのか?」
「さっきギルドに聞きに行こうとしたら城から兵士が着て俺たち異世界組は急いで城に集合だとよ。」
「なんだろねー?」
◆◇王城・玉座の間◇◆
城に着いたら即座に玉座の間に連れてこられてマルク騎士団長が話し始めた。
「よく集まってくれた勇者諸君。これより王より直々に説明があるので心して聞いてくれ。」
「うむ。まずは既に城を出ていた者達も全員集まってくれたことに感謝する。此度の一件だが先程各地の神殿に一斉に神託がおりその危険度が最高レベルであったためお前達に集まってもらたのだ。
神託の内容はこうだ。『忌まわしき焔の災い【煌焔皇】の復活が始まった。あらゆる人種は一致団結しこれを討伐せよ。猶予はあと半年である。』とのことだ。
【煌焔皇】が封印されていたドワーフの国近海の【封焔海域】が消失したことも合わせて報告に上がっている。そこでお前達には訓練を終えた者から順次ドワーフの国『ヘパイト』を目指してもらい彼の国で他の冒険者と共に【煌焔皇】討伐に当たってもらいたい。
そして先程から説明している【煌焔皇】に着いてだが我が国に残る文献にある物を説明しよう。【煌焔皇】とは特殊最上級職一つであり焔の流転を司る者だ。その能力の詳細は不明だが伝わる限りでは死の概念を超越した存在であり封印以外に討伐する方法はこの世界には一切存在しないとのことだ。先程言った【封焔海域】はその奥底【煌焔皇】を封印していた場所でありどうにかして再度封印を行ってもらいたい。また、ドワーフの国には我が国以上に【煌焔皇】に関する情報があると思われる為彼の国に着き次第更に情報を集めてくれ。
何か質問はあるか?」
「はい。」
「何かね【勇者】レントよ。」
「その戦いは強制参加でしょうか?また、俺たちの他には誰が参加しますか?」
「うむ。まず一つ目の質問だがすまないがこれは強制である。断ることは認められず拒否権は無い。何故ならもし【煌焔皇】が完全復活しようものなら【魔王】や【邪神】がことを起こす前にこの世界は滅びるからだ。それほどまでに【煌焔皇】は圧倒的な力を有している。だが安心して欲しい。二つ目の質問の答えだがこの戦いには各国から多くの強者達が集まっている。我が国からは【万具王】マルク・ランテスター、【剣星】クロード、【負働皇】タケの3人が、他の国からは【てんか】や【炎魔帝】、【海王】、【破王】などなどの強力な面々が参加を表明している。各国は自国の防衛に必要な人員を残して残りの『絶対強者』全てをこの戦いに投入する予定である。」
最後に王様はこう締めくくった。
「此度の戦い万が一にも敗北は許されない。お前達に過酷な戦いを強いているのは重々承知である。故に我が国からは最大限の補助を約束し勝利の暁には最高レベルの報酬を約束しよう。恥を忍んで頼む。どうかこの世界を救ってくれ。」
そう言って王様は頭を下げた。
新作6月ごろには上げたい。