汚染と変調
◆◇戦場西側◇◆
SIDE:【腐食王】アシ=プレーグ
戦場の端、【腐食王】の担当するエリアは地獄絵図と化していた。
「全く、死ぬのならさっさと足掻かずに死んでくださいまし!」
アシ=プレーグの担当したエリアではゴブリンが皮膚を溶かされては再生するを繰り返し、五度程再生を繰り返した個体から急に再生が停止して溶け落ちると言うことが彼方此方で起きていた。
【腐食王】は広域殲滅に特化した能力を持ち、中でも『酸化世界』というスキルは中々にエゲツない効果を発揮する。
『酸化世界』は範囲内に入った生物にはスキルにより生み出された表皮を極薄く溶かす程度の特殊な酸が纏わりつくという効果しかない。
だが最上級職のスキルがその程度の筈もなく『酸化世界』にはもう一つ効果があった。それは毎秒毎に効果範囲内にある酸の効果を倍加すると言うものであった。たとえ最初は少しだけ皮膚を溶かすだけの効果であっても10秒も経てばその効果は1024倍、人体なぞ余裕で溶かしきる。いかにレベルを上げて耐性を上げたところでどんな生物も1分と持たずに溶け落ちる。そしてこの酸は傍迷惑な事に纏わり付いた対象が絶命した時点で効果を失う。酸は体表から徐々に侵食していくので対象の脳みそが溶けた時点で効果を失う為後に残るは大量の表皮が全体的に溶け落ちた大変グロい死体の山である。しかも中途半端に肉体が無事であるため放置するとゾンビ化する。
自称綺麗好きを公言する割に戦闘後の汚れっぷりは相当なものでありこんなんだから影で“汚染女王”とか“不死者創造者”などと呼ばれるのである。
尚、王都の酒屋や味噌屋、教会には大変人気でありその美貌からこっそりファンクラブが出来ていたりすると追記しておく。
◆◇戦場中央◇◆
SIDE:【暗殺王】ブラリ
面倒くさい。
斬っても斬っても直ぐに首が生える。
あちこちで他の冒険者がゴブリンを減らしてるけどまだかかりそう。
私は一刻でも早くこいつをぶち殺して新刊を読みたいのに。
ふと冒険者の集団の中で二人の冒険者が目に付いた。
どうやら毒で大量のゴブリンを殺しているようだ。
確かに調べてみたところこいつの能力である『軍体化』は状態異常と相性が悪い。
継続ダメージを受ける個体を軍隊に繋いでいるとそれだけで全体が消耗してしまうので切り離す必要がある。
ならばこの親玉にも効くのではないだろうか?
「『換装:【蠱毒一滴 ムシバミ】』」
【蠱毒蜘蛛 ムシバミ】の討伐における特典武具として手に入れたこの短剣は斬った相手に無数の毒を相互干渉で中和させる事無く付与する。だがその見た目が余りにも禍々しくて敵に警戒心を抱かせる欠点を抱える。
だが、、、
「『我は無と化し敵を討つ』」
「GUGYA!?」
発動すれば5秒経つか物理的な干渉を相手に行わない限り絶対に見つからなくなる【無在絶虎 ハイド】の特典武具である【呼死眈々 ハイド】を使えば確実に当てられる。
「[業禍纏刃]」
武器の持つ毒の効果を増幅する技能を付加して叩き込んだけどどうだろう?
「GYAaaaaaaaaaa!!!???」
効いてる効いてる。
あとはこれを繰り返して…
「GAaaaaaaa!!!」
「 」
「GUGAAA!」
そして戦場中のゴブリンがドミネーションを除いて一斉に死んだ。
《非通知アナウンス》
《個体名【大軍統鬼 ドミネーション】のスキルによる魂の一時的強制統合および魂魄燃焼が発生しました。》
《ドミネーションの魔力値及び魂の階梯が一時的に閾値を超えました。》
《条件の変則達成により変則的進化を開始します。》
《一時的であるため魔獣への進化は認められません。》
《代替え案として名称変更による強化を行います。》
《対象の名称を【鬼軍霊皇 ドミネーション】に変更します。》
《対象を『準決戦級』に認定しました。》
《このアナウンスは秘匿されます。》
前話と前々話で主人公と負働皇が心配していますが教会としては浄化魔法のレベル上げにもなるしお金も貰えるしで【腐食王】は需要を生み出してくれる有難い存在だと思ったりしている。
序でに後で何故か寄付金が沢山入るから尚嬉しい。