プロローグ
夢を見た。
この世界に来てから100年過ぎたころに出会った仲間たちと冒険の果てに新たなる大地で建国したこと。
「なぁ、オウラン。あんたの事だから俺らが死んだらこの国から離れるつもりだろ?だったら頼みがあるんだ」
「ふふ、君はよく私の事を理解してるじゃないかエヴァン・フォード。いいよ、中々人を頼らない君の頼みだ。取り敢えず話してくれるかい」
「ああ、もし俺の後の王があんたを頼ってきたら気が向いたらでいい、助けてやってくれ」
「無いと思いたいけど、つまらない戦争のために私を使おうとしたら殺すけどそれでよかったらいいよ」
「ありがとう。そんなことがないようにしっかりと言い聞かせとくよ。天空の戦姫様」
「よーく言い聞かせときなよ。建国王」
私とエヴァンは二人して笑いあった。
ああ、懐かしい夢だ。
遥か雲の上に浮かぶこの城から見える青空を眺めながら思い出に浸る。そういえば一回も私に頼みごとをしてきてないな。一応私に話があったら専用の魔法具で連絡出来るようにはしてあるけど……。平和なのだろうか。
「おはようございます桜蘭様。おや、珍しい。ここ最近退屈そうなお顔でしたのに、いい夢でも見られたのですか?」
私が夢の内容を思い出しているといつものように自称筆頭侍女で最高位精霊の一人、水の精霊王葵が私にモーニングティーを淹れに来た。
「あぁ、200年以上前の夢を見たよ。あの時は楽しかった。しかし、すぐに分かるなんて私はそんなに楽しそうな顔をしてたのかい?」
ペタペタと顔を触り確かめる。うん今日もすべすべお肌。
「ええ、それはそれは美しく微笑んでらっしゃいましたよ。ここ何十年か見ることのなかったお顔でしたのでこの葵とても嬉しく思います」
そっか、私はそんなにもつまらなく過ごしていたのか……。
……よし、決めた。久しぶりに冒険しようかな。この200年の間、食っちゃ寝ばかりで退屈だったし、最近は下に降りてないし、なんだかんだ言って私はこの世界に来てから自由に旅してない。特に理由もなく引きこもってたし。
「葵、全員を玉座の間に呼んで今すぐに」
「はい、かしこまりました。しかし桜蘭様お召し物を先に」
「ん、ああごめんね葵、興奮しちゃって忘れていたよ」
「いえ、久しぶりに桜蘭様のいきいきしたご様子を見てとても嬉しいです」
葵は鼻歌を歌いながら私に服を着せていく。ほんとに嬉しそうだ。この調子だと他のみんなにも心配をかけたのだろうね。まったく、だめな主だね私は。
「出来ました桜蘭様」
「ありがとう葵」
今や慣れてしまったこの扱いに、昔は色々苦労したものだと私は玉座の間に向かいながらこの世界に来た時のことを苦笑しながら思い出した。
約300年前
「御機嫌よう天空の戦姫ちゃん」
壮大な神殿の様な所で私は寝ていた。目の前には確実に見たことのあるお方がいて、いや待てありえないだろう。このお方は神だぞ。なんで目の前に……。しかも私は家族に看取られて死んだはず。
「私は死んだんだ。いやでも」
「ふふふ、あなたでも狼狽えるんだ。大丈夫よ落ち着いて」
ハッと気づく、神の御前であったのにみっともなく取り乱してしまった。
「申し訳ありません」
「いいのよ、戦姫ちゃん。ところで戦姫ちゃん」
「はい」
「ちょっと異世界で仕事してみない?」
「仕事ですか?」
「そう、私の部下の一人に管理してもらってる異世界に行って、私達の予想外の事が起きたら手を貸してほしいの。ああ、もちろん頼み事がないときは自由に過ごしてもらって構わないよ。派遣特典としてあなたのやってたゲームの戦姫ちゃんとして行ってもらうし、戦姫ちゃんの一切合財全部持って行って構わないから。どう?第二の人生でちゃんと女の子として過ごしてみない?私、あなたのファンなの。だから、もし心残りがあるなら。仕事という名目で、あなたの愛したもう一人の自分で人生をもう一度過ごしてみない?」
「…………。あの、生きていたは私はどうでしたか?」
「とっても輝いてたわ。あなたは苦しみを乗り越え、己の持つ力を最大限に生かし、人類の発展に貢献し、未知の病に侵されながらも後継者を育て、惜しまれながらもあなたは息を引き取った。あなたは神である私が凄いと思えるそんな人物よ」
私の頬を一筋の涙が走って行くのを感じる。ああ、良かった。報われた。志半ばで朽ちた身だけど、妻の蘭と一緒に頑張ってきて、良かった。
「戦姫ちゃん。あなたが身動きできなくなってから暇つぶしに始めたあのVRゲームね、私が電子の神に頼んであなたの為に作ってもらったゲームなのよ実は」
「えっ!?」
「あなたに行ってもらいたい世界を模倣して、あちらの世界に伝わる伝説とかをゲーム要素に取り込んだ傑作よ!」
「え、でも私がプレイしなかったらどうするつもりだったのですか?」
「巫女に言って無理やりにでもするように説得しようとか考えてた。けど戦姫ちゃんがこういうの好きって知ってたからね。心配はしてなかったよ。それに体を動かせないあなたが体を動かしたいならVRしかないしね。あ、ちなみに私も参加してたよ。トップランカーの一人として、分からないかな?戦姫ちゃん」
「えっ!!してたんですか!あなた様が!?……。私をその呼び方で呼ぶトップランカーといえば…。ま、まさか殲滅姫の☆ツカサ☆ちゃん!!!?」
「せいか~い。戦姫ちゃんなら気づいてくれると信じてたよ」
「☆ツカサ☆ちゃんが神様だったなんて……」
あの、慈悲もなくフィールドを敵プレイヤーごと焼野原や氷河に変えていたうちのギルドのナンバー1花形がこのお方だったなんて。フィールドの後処理を私に押し付けて遊びまわってたあの爆裂娘が……。
………なんかちょっとあの頃の怒りが再燃しそう。
「は、話は戻るけど!」
ちっ、説教しそこねたか。
「戦姫ちゃん、行ってみない?異世界に!戦姫ちゃんの状態で行くからまあ危険はないと思うけど、人生に困難は付き物、それでも、楽しいことがいっぱいだと思うよ。どうかな?」
第二の人生か、折角このお方が私の為に手間をかけて用意してくれたし、若干ゲームしたかっただけではと思わなくもないが、もう一度生きるチャンス!しかも、女の子として。何を迷う必要があるだろうか!
「行かせて下さい、異世界へ」
「うん、行ってらしゃい異世界ツヴァイへ」




