ガレド姓と案内
遅くなって申し訳ありません!
ようやく8話目がかけました……
藍の宮には、『ガレド』という姓を持つものが住む。そのガレド姓を与えられるのは、国に益をもたらす能力を持つ孤児のみである。
しかし、そもそも孤児がそのような力を持っていると判明することが珍しいうえ、孤児であるために迫害などの憂き目に遭いやすく、そのまま判明すること無く亡くなってしまう事の方が多いのだ。
そういった孤児に対して、身分を与えると共にほかの貴族に侮られぬよう、王族とのと繋がりを表すガレド姓を与えるのだという。
そのような理由で、ここ数十年は使われていなかった藍の宮は、十年前に久方ぶりの主を得た。
それが、今代の魔導師であるリーデウルだ。
リーデウル・ヴァム・ガレドはその身に宿した膨大な魔力を現王アセルスによって発見され、保護したのがきっかけだったらしい。
魔導師リーデウルは、口数は少なく、常にローブと謎の面を被っており、素顔を見た者はおらず、声がこもり、さらに顔は見えないので年齢不詳……だった。さっきまでは。
──国で一番強いと言われている、黒の魔導師の実態は、うら若き少女だった。
何も知らないまま、この少女がファイアドラゴンやスイート・ビーを退治したと言われたら、俺はきっと信じなかっただろう。
こんな小さな身体で、一体どこにその力があるのか。……騎士とは違って、魔導師だから、体格などには表れないのだろうが、それにしても華奢すぎる。
そんな魔導師に、俺はこれから自分が住むことになる部屋に案内してもらっている。俺はガレドではないが、護衛ということで例外的にここに住むことになったらしい。
「えっと、ここがアーシェイドさんが使う部屋になります。調度品は揃ってるので、使ってください。荷物は転送されましたか? 転送されたなら、ちゃんと届いているはずです。隣の部屋が私の部屋です。二階は寝室と今はほとんど使われていない部屋しかありません。応接室も、今日初めて使いましたし。一階には書庫、私の研究室、実験室、キッチンと、小さな食堂があります。地下には魔法薬やその材料等の保管庫、調剤部屋、地下牢、魔法実験室があります」
……それにしても。
俺は目の前を歩く自分より頭一つ分小さい少女に声をかける。
「なぁ」
「はい? トイレならあちらですよ?」
「いやそうじゃねぇよ。何の心配してんだよアンタは! そうじゃなくて、アンタさっきと随分違くなってないか? 態度とか、口調とか」
「あぁ……あれは秘密を知らない方とお話するときに使うもので、もうお話したアーシェイドさんには必要ないです。それに、実はアレ、結構無理してて……素の自分からかけ離れてるので、長いこと続けられないんですよね」
苦笑するリーデウルの話を聞いて納得した。なるほど。続けられないからら口数が少なかったのか。
「庭は自由に使ってください。あっ、庭にある赤いレンガの花壇の花にはなるべく触らないでくださいね? 毒で死んじゃいますから!」
「物騒だなオイ!!」
「裏庭に温室もあるんですけど、そこには人喰い花やマッドウッド、ボウガン虫がいるので……こちらも入らない方がいいかも知れません。どうしてもというなら案内してもいいんですが」
うーん、と頭を悩ませているが、よっぽどじゃない限り俺がそこに行くことはない。断じてない。
確かに人喰い花やマッドウッド、ボウガン虫はそこまで危険じゃないし、倒したこともある。が、任務でもないのにわざわざ行く気はない。しかも温室ということは育ててるのか?
「行かないから悩むな」
「なら大丈夫ですね」
「何のためにそんなもんあるんだか……」
その後も俺は案内をしてもらいつつ、ちょっとズレてるリーデウルに頭を痛めるのだった。
人喰い花/その名の通り人を喰らう花。ひとくちに言っても種類は様々で、藍の宮の温室で育てているものは巨大ウツボカズラと巨大ハエ捕り草のようなもの。よくマッドウッドの周辺に咲いている。蜜はスイート・ビーの好物で、分泌液はかなり薄めて使えば弱酸性洗剤になることがわかり、主婦層にバカ売れ。
マッドウッド/狂い木。その木についた花からは人を惹き寄せる香りがするが、惹き寄せられて捕まったが最後、木の養分にされるか、もしくはマッドウッドの周辺に咲いている人喰い花に喰われる。実は薬になる。
ボウガン虫/正式名称はボウガンインセクト。鉄のように硬い角をもつ長い虫。高速で飛び回り、生き物に突っ込んでいく。しかし、よけられたりしてうっかり地面に突き刺さると自力では脱出できないので死ぬ。
地味に難産でしたが、無事に投稿できて嬉しいです。
今度は早めに次話を投稿できるように頑張ります!
誤字脱字、感想や応援コメントまってます!
12月7日脱字修正しました
12月20日誤字訂正しました