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魔導師様の護衛(世話係?)  作者: 仰上 彩輝
【魔導師の秘密】
7/19

魔導師の秘密

「実は──」


 カタ、と音を立て、魔導師が面を外す。

 そこから現れたのは──


 艶やかな黒い髪。

 困ったように下がった眉。

 潤んだ瞳は澄んだ紫で、目尻はやや桃色に染まっている。

 小さな鼻に、キュッと引き結ばれた赤い唇の────可愛らしい娘の顔だった。


「な…!?」


 突然のことに、頭が回らない。

 今、なにが? 何が起きているんだ!?


「なん、で……今代の魔導師は、リーデウルは、男だろう……?」


 絞り出した声は、自分でも情けないくらいに掠れていた。

 それだけ、衝撃が大きかった。

 考えてもみろ。そこまで接点がなかったとしても、ずっと男だと思っていたやつが、目の前で女になっていたのを。

 いや、この場合なっていたというかそもそも女だったのか? 魔導師は男だが女で魔導師で? いや俺は何を言っているんだ!?


「いいえ。私は女です。……それに、男だと言ったことは一度もないんです」


 ──下がっていた眉をますます下げて、落ち込んでいるコイツは一体誰だなのだろうか。

 本当にさっき俺に向かって「入れ」とか「お前は~」とか言ってたやつと同一人物なのか?

 口調もそうだが、声だって違う。聴覚が発達している俺の両耳には、この宮に入って初めて聞いたあの男とも女とも取れないくぐもった声ではなく、例えるなら、よく晴れた日の木漏れ日のような優しい声が届いている。


「魔法適性の検査で、素質があるってわかって、必死で努力しました。王や王妃たちも応援してくださって、それが嬉しくて。それから、大きくなるにつれてどんどん力がついてきて。ある日、王に頼まれて、マザービーを追い出しに行ったんです。街の近くに住処を作ったようだから、出来るなら巣を壊してくれって」


 そして、と彼──否、彼女は続ける。


「最初に、スイート・ビーの巣を焼いて相手を弱らせようと、軽い火の魔法を使いました。そしたら……巣が、中にいたスイート・ビーの群れもろとも、灰になりました」

「………………は?」


 今、何と言ったのだろうか。


「知らないあいだに私の魔法の威力はとんでもなく上がってたようで、自分では軽く使ったつもりで、ほとんど魔力消費もなく、ありえない高火力を出してしまったみたいで……」


 開いた口がふさがらない、とはこのことだろうか。もはや意味がわからない。スイート・ビーは、一匹一匹はあまり強くはないが、集団で行動する厄介な魔物だ。下手な軍より統率が取れており、針には幻覚を見せる毒がある。その上、マザー・ビーによって増えていく。

 普通の魔法師なら、数人がかりで追い出すものを、一人だけで殲滅した?


「幸い、私は水魔法も使えたので延焼にはなりませんでした。ですが、王宮へ帰ると何故だか私が男ということになっていて……私の顔をちゃんと知っている人が少ないので、あれよあれよと取り返しがつかない状態に」


 私がリーデウルだと言っても、信じてくれない人が多くて……と彼女は言うが、そりゃあ、ドラゴンを瞬殺したり、スイート・ビーを殲滅するやつが女だと思うやつはなかなかいないはずだ。


「なので、こうなったら仕方ないと思って、こうやってフードを被ってお面して、声も魔法で少しだけ変えてたんです。身長低いのは、大きいローブの中でちょっと浮いて調整したりして」

「な、なるほどな……」


 ひとつも理解できないが、一応飲み込んだ。多分。

 というか、何と言う魔力の無駄使いだろうか。

 魔法師連中が聞いたら泣くぞ。


「このことは、この国の王族の方とあなたしか知りません。約束、守ってくれますか?」


 上目遣いでこちらを見てくる魔導師に、俺は長いため息を吐くと、正面から向き直る。


「魔導師リーデウル。俺はアンタの護衛だ。アンタの強さで、俺みたいなのが必要かどうかはわからない。わからないが、俺はあらゆることからアンタを護るために来たんだ。そんくらいの事、いちいち確認するまでもない」

「っ! 良かったぁ……」


 ふにゃ、と顔を崩し、笑みを浮かべる魔導師に、なぜか俺の心臓は大きく跳ねた。




 ──それがどういうことなのかは、まだ俺は知らない。










スイート・ビー/体長約15cmほどの大きな蜂。下手な軍より統率が取れており、集団で来られると厄介。腹の中の毒袋に幻覚を見せる毒を持っているが、その毒は熱に弱く、煮詰めていくと甘くて美味しいシロップになる。なるべく傷つけないように駆らなければ毒蜜が取れないので、割と高値で取引される。花の蜜より動物の血を好むが、人喰い花の蜜も好む。寿命は大体ひと月前後。


マザー・ビー/スイート・ビーの群れに一匹しかいない女王蜂。体長約30cm。自分の手下となる卵を産みつづけるが、スイート・ビーと同じく寿命が短く、死ぬ直前に産んだ卵が次のマザー・ビーとなる。針はないが、毒袋はあり、体内で特殊な熟成をされたその甘い毒は至上の甘露となる。しかし、マザー・ビーが弱ると毒袋が非常に破れやすくなり、採取が非常に難しい。年に一匹でもマザー・ビーの毒蜜が市場に出回ればいいほうである。

ようやく身バレしましたね!これからようやくキーワードの回収ができますよ!!←

とりあえず、一章目が終わり、ホッとしてます。

これからも魔導師の護衛(世話係?)をよろしくお願いします


いつもの如く説明のところに力入れすぎた感はありますが、気にしません!



ブックマークをしてくださった方を始め、このお話を読んでくださっているあなたも、本当にありがとうございますっ!

とてもとても嬉しいです。大変励みになります!!



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