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魔導師様の護衛(世話係?)  作者: 仰上 彩輝
【魔導師との生活開始】
14/19

護衛の本当の意味とオムライス

「君を選んだのはね、言ってしまえば貴族除けなんだよ」



 アーシェイド家は位は下流貴族だが歴史ある名家だ。

 初代が庶民からの成り上がりのため、生粋の貴族かと言われればそうではなく、婿や嫁を平民から選ぶということも多々あったから庶民から慕われていて、貴族からも歴代受け継がれてきた領地を治める腕を評価されていて一目置かれている。

 子爵であるものの、実際は辺境伯ほどの発言力もあり、侯爵にも顔が利くほどで、特に、現当主は歴代当主の中でもかなりやり手であり、敵に回すと報復が恐ろしいともっぱらの噂。

 だから、貴族から疎まれやすいガレドであるリディの近くに"アーシェイド"を置くことでリディを貴族から守れるように任命することにしたのだ。

 ガレドは国の子供、王の養子のようなものだけれど、やはり元が孤児だからか、貴族から侮られる。ここ数十年ガレドがいなかった為、余計にその名前の重みがわからず意味もなく見下すアホ貴族……もとい、頭の軽い貴族も多い。


「 こういう理由だったから、この仕事に反感を覚える者もいるだろうと、きちんと説明してから……と思ってたんだけれど。すっかり忘れてしまっていたよ 」


 俺は、陛下の説明を聞いて納得した。

 確かに、アーシェイド家は丁度いい家柄だったのだろう。身分は低いものの、それなりの後ろ盾があるからな。

 それに、と陛下は苦笑する。


「リディの実験に耐えられる者はなかなかいなくてね。君が適任だったんだよ」


 どうやらそこも、選定基準だったらしい。

 過去の実験(巨大ボウガン虫)を、思い出し、一人頷いた。


「君はどうする? この任はこういう事情があるから、降りても構わない。もちろん諸々の秘密は守ってもらうことになるけどね」


 少しおどけた口調で話している陛下の、萌葱色の瞳を少しだけ細め、口の端が少し上がっていたその顔を、俺はけして笑っているとは思えなかった。

 王に、試されている。だが、俺の答えは最初から決まっていた。


「私は「あの!」……リディ?」


 言おうとした矢先、リディの声に、その場の少し堅かった空気が一掃される。


「私は、このままロギルさんに護衛して欲しいです!!」


 俺と陛下の視線を浴びて少し怯んだのか、勢いはなくなったが、しどろもどろになりながら話始める。


「えっと、秘密をバラしたからとか、家柄がどうとかじゃなくて、ロギルさんに頼みたいんです。私のこと、すごく気にかけてくれて、本当に感謝してるんです。それに、ロギルさんが来てから、いつの間にか廊下で倒れてたり、お腹すいても面倒だからって無視して研究したりすることもなくなりましたし、作業効率もあがりました! あと、お茶もご飯もとっても美味しいんです!!」


 最後の言葉に、やけに力が入っているように聞こえたのは──


「…ふっ、ふふ…はははっ! リディはすっかり、アーシェイドに餌付けされてしまっているようだねぇ」


 ──俺だけではなかったようだ。

 相当、俺の料理を気に入ったらしい。

 それにしても、倒れたりしてたのか?

 手のかかる子供ではあるまいし、何をしているのだか……


「餌付けって……!!」


 呆れる俺をよそに、言い方が悪いです、とふくれるリディに、アセルス陛下は目尻に溜まった涙を拭いつつ言い直した。


「あぁ、胃袋を掴まれている、の方が良かったかい?」

「そ、そういうことじゃないです!! 私は純粋に──」

「リディ、今日の夕飯はオムライスにするか? 今なら中の飯にはコーンを混ぜてやろう」

「本当ですか!?」

「ははははっ! やっぱり、バッチリ掴まれてるじゃないか」


 久しぶりに涙が出るほど笑ったよ、と未だに笑いながら言う陛下に、恐れ多いが少しだけ、本当に少しだけだが親近感を覚えた。


「と、とにかく! ロギルさん、お願いします。仕事、続けてくださいっ!」


 俺の方を向き、深々と頭を下げるリディの頭に手を置く。


「アセルス陛下。私は、この国の騎士です。陛下の命とあらば、断ることなどありません」


 手を離し、陛下に向き直り跪いた。


「それに、どうも魔導師様は、俺の料理をいたく気に入って下さったようでして」

「ふふふ、そうみたいだね? そんなにアーシェイドのご飯は美味しかったかい、リディ?」

「二人して私のことをからかって楽しいですかー…? そりゃ、とっても美味しいですよ。魔法師用食堂のご飯がかすむくらい美味しいですもん!」

「ほう、それはなかなかだね?」


 それなら、私も食べに行こうかな?

 笑顔でそういう陛下に、リディが是非!と言う。


「リディ、そんなこと恐れ多くて出来るわけないだろうが」

「意外と大丈夫ですよ」

「そうそう。あぁ、今日のオムライスの卵はとろふわでよろしく。6人分」

「なんで陛下までそんなにフットワーク軽いんですか! あと6人分ってどういうことです!?」

「私と妻と、息子二人と君とリディだろう? 6人じゃないか」

「王族全員連れてくる気ですか陛下?!!」

「まさか。弟は国外にいるから連れてこれないよ」

「そう言う事ではないんですが……!」


 宮に帰ったら食材の用意をしないとなのか。王族に食べさせていいような高尚な料理を俺には作れないぞ!?

 うんうん唸りながら頭を抱えている俺を見て、陛下とリディが顔を合わせて笑い合う。


「リディ、彼でよかったね。君が気に入る理由がわかったよ。お人好しだけれどね」

「ふふ、よかったです。ロギルさんはとてもいい人ですし、料理は本当に美味しいんですよ?」

「それは楽しみだ。みんなにも教えておこう」

「きっとみなさんビックリしますよ」

「全員くる予定で話を進めないで下さい!!」



 突然の朱の宮訪問は、色々な衝撃を俺に与えていったのだった。

今回はいつもより少しだけ長めです。

それでも短いですが(((

ばっちり餌付け済のリディいいかがでしたでしょうか?( 笑 )

そして次回はついに新キャラの登場ですが、流石に三人一気に、は増やしすぎたかと反省しております。後悔はしておりません!←おい


ここまで読んでくださった貴方に感謝申し上げます

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