王との対面
ようやく書き上がりました
相変わらず短いですがよろしくお願いします
こんな間近で、国王陛下を見たのは、騎士の叙任式以来だ。
やはり、整った顔立ちで、特に印象的なのは瞳だ。柔らかい萌葱の瞳は、柔らかさの中に強い芯が通っていて、美しい銀糸の髪が、その印象を引き立てている。
騎士が守るのは王宮で、王族を守るのは近衛兵だ。
だから、こんなに間近で王の顔を見ることなどないに等しい。
「ところで、リディが腕を掴んでる彼は……?」
リディと並んだら、お互いの色が引き立つのではないだろうか──と、そこまで考えたところで俺は現実に引き戻された。危ない、国王に対して返事を返さないなど言語道断無礼千万だ。
リディに腕を離してもらい、俺は跪いて右胸に手を当て、頭を垂れた。
騎士が忠誠を誓う相手に対する、最上級の礼だ。
「失礼致しました、国王陛下。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。私は王宮騎士団、遊撃騎士ロギル・アーシェイド。この度は突然朱の宮に入り込んでしまった事、重ねてお詫び申し上げます」
「あぁ、君がリディの護衛か。顔を上げなさい」
「はっ」
「大丈夫、君がリディに連れてこられたのはわかっている。君が謝ることは何もないだろう。さぁ、立ちなさい」
「ありがとうございます、陛下」
俺が立ち上がると、隣から感嘆の声が上がった。
「今、ロギルさんがめちゃくちゃ騎士っぽかったです!」
「騎士っぽいんじゃなくて、れっきとした騎士だぞ俺は」
「そうでしたね、ちょっと忘れかけてました」
「お前なぁ……」
リディは俺のことをなんだと思っているんだか……。
「ははは、人見知りのリディが軽口を叩ける相手はそうそういないから、安心したよ」
「はい、本当にロギルさんはいい人で……って、そうじゃなくて、アセルス様!」
どうやらリディが目的を思い出したらしい。というか今まで忘れてたのかコイツは。
突然大きな声を出したから、陛下も少し驚いている。
「おや? なにかあったのかい」
「あるも何も、ロギルさんの任命書を出したのはアセルス様ですよね?」
「そうだね」
「覚えてませんか。私、頼みましたよね? 理由はきちんと口頭で伝えてくださいって再三頼みましたよね?!」
「あ」
「あ、じゃないですっ! そのせいでこの一週間、ロギルさんは何も知らないまま本当に献身的に私のことを支えてくれてたんですっ! そもそも書類だと誰の目に触れるかわからないから口頭でって言ったのアセルス様ですよ!? それに気づいたときどれだけ申し訳なかったと思っているんですか!!」
「すまない、最近色々忙しくて……」
なおも怒っているリディと、申し訳なさそうな顔のアセルス陛下。
もちろん、俺は全く話についていけていない。
どうやら護衛以外の理由があるらしいが、それを陛下が伝え忘れたらしい。
「リディ、どういうことだ? 護衛以外の理由ってなんだ」
「ロギルさん、本当に申し訳ないです。今からきちんとご説明しますから!」
「悪かったねアーシェイド。私がうっかりしていたんだ」
「いえ……しかし、理由があるのならばお聞かせください。正直、私も疑問に感じていましたので。あの黒の魔導師に私のような護衛が必要なのかどうか」
それは、常々思っていたことだった。
魔導師リーデウル──天才と名高い今代の魔導師に、護衛なんてものは必要ない。
必要ならばもっと前からつけているはずだ。
一体なぜ、俺が護衛として選ばれたのかも気になる。
「あぁ、順を追って話そうか。実はね──」
王様には意外と強気なリディ。