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魔導師様の護衛(世話係?)  作者: 仰上 彩輝
【魔導師との生活開始】
11/19

一週間

 あれから一週間。

 何事もなく藍の宮で過ごしている。

 ここに来る前に危惧していた、魔法師たちのチクチクはなかった。

 どうやら魔導師リーデウル…もとい、リディは、魔法師がこちらに来ることを一切禁じているらしい。魔法師長ですら、禁じられているようだ。自分で呼ぶこともない。

 用があったら自分で転移して行くらしい。

 理由は「気が休まる場所の確保」だそうだ。

 確かに、いつ魔法師が来るかわからない面が外せずに窮屈かもしれない。

 ……正体をバラせばいいのではないのか、と思ったのは内緒だ。



 そしてこの一週間、俺が何をしていたかというと。

 基本的にはリディの後ろで控えているのだが、色々見かねたことがあり、それをやっていた。


 例えば、


 リディが研究に没頭し、使用した資料を散乱させるのでそれを整えたり、最低限の掃除しかされていない場所を掃除をしに行ったり。

 おかげ(?)で藍の宮のほぼ全ての物の位置を覚えた。


 あとは、一度集中したら、こちらがやめさせるまで止まらないので、無理しないようにとたびたび声をかけて休憩させるのも日課になりつつある。

 休憩用のお茶の用意をするのが、いつの間にか手馴れてきた気がする。


 先程と同じ理由で、食事も取らないので、一度藍の宮から出て、侍女に食料と調味料を持ってきてもらった。

 食堂も掃除して(使われた形跡がまったく無いので、掃除はホコリ取りだけで簡単だった)、料理を作り食べさせたのだが、できるならこれから藍の宮での食事を賄って欲しいと頼まれた。

 どうやら食事の時も、食堂を利用する場合は、人前で面を外さないためにいちいち部屋に持ち帰って食べていたらしい。

 それなら自分で作ればいいのに、と思ったら、どうやら彼女は我が母親と同じく料理ができないらしい。


 ちなみに、二日目はリディの研究に付き合ったら、またそのまま朝になった。

 リディは限界が来たのか、机に突っ伏して眠っていたが、正体を知る前ならいざ知らず、娘とわかっているのに机に寝せたままなのは気が引けたので、資料で埋もれていたところを掃除して綺麗にした、王宮に相応しい大きくふかふかのソファーに移動させて、上着をかけ寝かせた。

 ソファーに移動させたあとは、俺もソファーに座り(広かったのと、万一のために近くにいただけで他意はない)、背に凭れて仮眠をとった(違和感を感じて起きたら、いつの間にか尻尾を枕にされていた。流石に起こすと、リディは何度も何度も謝ってきた)。

 もちろん、次の日からはちゃんと休ませたが。



 要約すると、掃除、休憩の声かけ、食事の用意。


 確認しておくが、俺の仕事は『護衛』だ。執事ではない。

 後ろで常時控えている訳ではない(掃除したり食事の用意をするため)が、護衛だ。

 ……そもそも、国内で最強の魔導師であるリディに、なんのために護衛をつけているのか、という疑問は未だに解消されていないのだが。



 資料を拾いつつ、はぁ、とため息をつくと、ちょうど一区切りついたらしいリディがこちらを見ていた。

 ちなみに今のリディは普通の、体にあったサイズの深緑のローブを着ている。

 事情を知っている人しかいない、もしくは自分一人の場合は普通のローブを着ているようで、あの無駄に大きく黒いローブは魔導師として他人に会う時用らしい。


「どうしましたか、ロギルさん」

「……なぁ、俺の仕事ってなんだ?」

「え? 護衛……ですよね」

「そうだよな」

「ええ。そうですよ」

「護衛らしいことはひとつもしてないがな」

「そ、それはほら、ここを襲う人いませんし」

「俺はなんのためにここにいるんだよ……」


 そうつぶやくと、リディはきょとんとした顔でこっちを見た。


「……え? アセルス様から聞いてませんか?」

「王から? いや、聞いていないが」

「でも、王の命令でここに来たんですよね?」

「そうだが、それを聞いたのは団長からだぞ」

「うそ……」

「嘘をついて何になる」


 何故か絶望した顔で膝をつくリディ。

 一体どうしたというのか。


「アセルス様……絶対面倒臭いからって任命書だけで済ませたんだ……!!」


 リディの身体からは、ふつふつと黒いオーラが出ている。


「お、おい、どうした?」

「ふ、ふふふふふふふふふ。そうですよね、アセルス様がちゃんとやってくれると思った私が馬鹿でした」


 何故かわからないがリディが怒っている。

 その顔のせいで怖くはないが。


「リディ、落ち着け。紅茶を入れてやるから」

「ありがとうございます、ロギルさん……でも、流石にこれはダメです。道理でロギルさんが不思議そうな顔をしているはずですよね。業務内容の食い違いがあったんですから」

「業務内容って、アンタを危険から護るってことだろう?」


 俺は手早く紅茶を入れ、リディに差し出す。

 リディも紅茶を飲み、少し落ち着いたらしい。


「それも入ってますけど、それは重要ではないんです。自慢じゃないですが、私が危険になるなんてこと、ほとんどありません。あまり王宮からでないのもありますが、これでも一応魔導師ですから。そういった事態は自分でなんとかなる場合が多いです」


 落ち着いてもまだ腹ただしいらしく、リディはぷりぷり怒っている。全く怖くないが。


「まぁ、そうだな。だからこそ、俺はなんのために此処にいるのかわからないんだが」

「そうです! それです!!」

「……なにがだ?」

「此処にいる理由ですよ! それを、アセルス様にお伝えしたのに、ロギルさんが知らないことが問題なんですっ」


 曰く、アセルス王に伝えたその理由とやらを、俺に伝えるようにと何度も言ったにも関わらず、伝わってないことが問題らしい。


「これは一大事ですっ! こんなんじゃ、ロギルさんが左遷されたみたいじゃないですか!」


(正直左遷同然だと思ってたから間違いではないな……)


「とにかく! 一度アセルス様にお会いして、問いたださなくては。場合によっては、報告しなくてはなりませんし」

「ほ、報告? というか、王に会うと言って、そんなにほいほい会えるものではないだろう」

「大丈夫です。なんなら今すぐでも会えますよ」


 なぜそこで断言できるのか。

 王は今はまで何をして、こんなにリディからの信用を地に落としたのかが気になるところではある。

 8年前の騎士の叙任式では、威厳のある王に見えたのだが……


「そうと決まれば、行きましょう! 直談判です!!」


 鼻息を荒くするリディに、いきなり腕を掴まられる。

 別に、避けられなかったわけではないが、今の彼女には避けさせない謎の気迫があった。


「リディ、何言って、」


 彼女が短杖を構えたのを見て、慌てて止めようとしたが、一応護衛対象を力任せに止めるわけにもいかず、間に合わない。



「〈エスペラール・ラオム。我に従いし空間の精よ、我らをかの場所に移せ〉!」





 そして、藍の宮の研究室から、二人の姿が消えた。

いつもより長めですが、グダグダしてしまいました……

文才がない己が憎いです


前話更新日のアクセスが多く、ビックリしました

それと、ブックマークを付けてくださっている方がまた増えていた事にいい意味で驚きを隠せません


それに、なんと、この話に感想を書いてくださった方もいました。

感涙です……!!


みなさん、本当にありがとうございます!



これで年内の更新は最後になると思いますが、来年も精進して参りますので、「魔導師様の護衛(世話係?)」をよろしくお願いします!

よいお年を!


1月17日誤字訂正しました

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