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未定  作者: 数学やらなきゃ
3/3

決心

それからの目的のない月日が流れていくのは早かった。異世界転生してから五年、ニツポン帝国では成人式を十五にやるらしく、俺も一人前の農家になろうとしていた。ヒロシはというと十二になった次の日に突然家を飛び出して行ってしまったらしく、一ヶ月くらい大問題になってしまったが、今ではそんなこと殆どみんな忘れてしまっていた。


成人式の日、ヒロシが帰ってきた。

あの幼かった頃の面影はほとんど残っておらず、幾つもの死地をくぐり抜けてきた屈強な男に様変わりしていた。

「僕は遂にやったよ。ギルドランクオールAランクだ。」

帰って来て早々俺の所にやってきてそう言った。この五年間で俺もある程度の常識は身についており、ギルドランクがオールAというのは十五歳にしては中々腕の立つ戦士であり、商人であり、万能人であった。オールAというのは、ギルドというのがまずたくさんあって同職、商人系ギルドや戦闘系ギルドと医療系ギルドがあってその全てのタイプのギルドを一個ずつ以上Aランクにした時、名乗れる。

「すごいな、ヒロシ。俺は正直言うとCランクくらいでモンスターにやられてしまったんじゃないか心配してたんだ。君は俺なんかよりも前のタロウなんて話にならないだろうってくらい弱かったのにね」

「やめてくれよ、昔とは違うんだ。努力もロクにしてこなかった人間に馬鹿にされるとイラつくんだ。」

「そんなにピリピリするなって。お前の方がもう強いのは分かりきってんだからさ。まあ俺も同じ努力をしてたらそこまで行けたのかもしれないけどさ」

と茶化したら、

「うるさい。一生君は俺が努力すればこれくらい余裕さと思っていればいいさ。今更努力したところで君には埋められない差ができてしまったけどね。精々過去に縋ってればいいさ。雑魚。」

と挑発してきた。それには俺も我慢ならなくて、

「おい、なんだよその言い方。別に何言ったっていいだろう。お前の方がもう強い。そこには変わりないんだから、ちょっとくらい負け犬の遠吠えだと思って許しといてくれよ。」

「黙れよ。お前らはみんなそうだ。元の才能でとか言って努力をしないで、努力してるやつをなめて、結局何もできないくせに。お前だけは違うと思ってた。僕より強かったから。でも結局立場が逆になるとそうやってたらればの話を始めるんだ。僕はもう帰る。」

そう言って後ろを向いて家から出て行くヒロシにムシャクシャして、思いっきりそこらへんにある太い本を投げつけた。

だが、こちらを向かずその本を取り、

「不意打ち……か、僕も変わったと自覚してる。お前も変わったな。いや、お前は元からそういうやつだったか。お前はタロウじゃないんだよな。」

と言い帰っていった。


体の中にずっとモヤモヤした不安や焦りのような感情が渦巻いているようで、何か行動を起こさなければ気が済まない感じがした。

だから、俺は冒険者になってあいつを超えることをここで決めた。


この感覚を俺は覚えていた。

この感覚は転生の前日に、いや、もっと前から感じていた。忘れたかった、けれど決して忘れることのできない体に何かがこびりついたような感覚だった。


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