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師匠と愛弟子

 更新が遅れました。

 ビクトリア大教会の一部損壊と第五都市の壊滅。魔王サタンが残した傷跡はこの地に住まう者に取って多大な物となった。


 特に現法王であるエリックの病身に倒れた姿を見た教団関係者は、この世の絶望と言った表情を浮かべていた。


 人の口に戸は立てれない。


 今回の騒動にて、様々な噂が尾ひれを付けて行き交い。最終的に聖王都の堅牢な結界が破られたのは、法王エリックの病のお陰で女神の加護が一部無くなってしまったからという物になっていた。


 この噂はセバス調べだ。

 ほぼ間違いないだろう。


 当の本人は、療養という形で大教会の向いの建物のとある一室のベッドにて横になりながら聖書を片手にタイムブレイクティーを味わっている。


「しばらく厄介になりますね」


 ニコニコとしながら紅茶を飲むエリック神父はなかなか様になる。法王であるときの彼は奇妙な雰囲気をかもし出しているが、ギルドの裏に立てられた孤児院の一室にて寛ぐ姿は不思議と安心を感じさせる。


「もちろん。聖王都の復旧が住むまでただ働きはしませんよ。この孤児院の世話は任せてください」

「いや、孤児院それは別に良いんですが。別にここで休む必要性はあるんですか?」

「随分と嫌われてしまったものです……」


 と、言いながら涙を浮かべるエリック神父であるが、コレは嘘泣きである。

 もうね、雰囲気で判断つくんですわ。


「……成長しましたね」

「ええ、おかげさまで」


 彼は、紅茶を飲み干して一息つく。


「実際、少しばかりマズい立ち位置に落ち入ってまして。今流れている噂に乗じて時間稼ぎをしているんですよ」

「病の件ですか?」

「そうですね。実際にはただ少々身体に酷な攻撃を浴びてしまったのと、サタン君に法定聖圏セントリーガルを一部破壊されてしまった反動が来ていまして……気を抜くと——」


 と、エリック神父は、そこで一端話を区切って身体ごと視線を俺に向けた。

 スッと、高尚な力の領域が部屋から消え去る。


 その途端にエリック神父の少し小じわがありつつも未だ張りを保つ肌から瑞々しさが無くなり、一気に皺が露出している部分である手と顔に刻まれて行く。


「こうなっちゃうんですよ」

「……」


 絶句である。

 そして再び空間に圧倒的な存在感を放つ力が生まれると、エリック神父の顔は若かりし頃に戻った様に瑞々しさを取り戻した。


「法定聖圏とは、一体? ただ聖王都を守るべく築き上げた超巨大魔法陣ではないんですか?」


 その問いに、再び淹れ直した紅茶を一口。「この紅茶は教団でももっと輸入するべきですね」と前置きして答える。


「かなり昔の話になりますが、人間界の中心部として聖王都は築かれました。その時絶対的な象徴となるべく女神様に相応しい街並を築き上げる事を、当時の法王は信託によって授かったのです。それが法定聖圏セントリーガルであり、法王の力の源でもあります」




『二度と希望を失わない為に』



 それが、初代法王の言葉だったらしい。大災害が起こっても唯一不変でいられる程の巨大結界魔法陣が法定聖圏セントリーガルでもあり。法王の強い意志の元に振るう事の出来る守る力でもある。


 と、エリック神父は告げた。


「今回は全てが後手後手に回ってしまった結果と人間の心の腐敗が原因でもあります。いつからか、私は意思を見失いかけ別の物と混合してしまっていたのかもしれません」


 遠くを見ながらそう呟くエリック神父。その視線は儚く、ティーカップを握りしめる手は少し震えていた。


「第五都市の復旧は私のギルドと開拓ギルドでもあるリヴォルブが受け持ちます。力が不安定な内は、ここで休んでおいてください。あと、別件もあるでしょう? と、いうかソチラが本題でしょう?」

「バレました……?」

「なに少し自分の力が足りなかったばっかりに多大な犠牲を払ってしまって、此方にはそう言う素振りは見せない様にしつつも少しばかり自分自身に遺憾を現す様な雰囲気を出してるんですか」

「い、言う様になりましたね。でも、自分自身の力不足には到底怒りが収まりませんよ」

「それは私もですから」


 頷く神父に俺も頷き返す。お互い、何も出来ずに終わってしまった今回の騒動に対して深く思う事がある。だが、ソレとコレとは話が別だ。


「時間稼ぎとは一体どういう事ですか?」


 少し前に言った神父の言葉をサルベージして再び問う。大体時間稼ぎするくらいなら、率先して第五都市の復旧や、聖王国の市民達に安心感を与える為に前に出るのが教皇であり法王であるエリック神父の勤めだろう。


「混乱に乗じて、私の反対勢力が大きく動いています。今迂闊に前に出れば足下を救われかねません。責任問題でもありますからね。本当に今回の件は全てが裏目に出ていますよ」


 「はぁ…」と溜息をつくエリック神父。


 反対勢力は、サルマンという思わぬ生け贄に乗じて、不安定になった現法王の立場を下し、新たな法王を祭り上げているらしい。


「有力な枢機卿らから新たに推薦を受けているのはジュード・アラフと呼ばれる人物です。第一都市を治める枢機卿が一体どこから拾って来たか判りませんが、一度だけお会いした事があります。法王である私が一瞬見透かされている様な感覚に落ち入った不思議な目をしている青年でした」


 反対勢力は、簡単に言えば偶像崇拝よりも現神達により預言を元に規律するべきだとする物達である。


 女神像を偶像崇拝と見なすとは、どこまでも不敬な奴らだ。教団の現勢力のやってる事と対して変わらないが、もう少し規律を厳しくし、人を律して世界を平等にするべきであると唱える一波である彼等に鞍代わりしてしまうと、聖王都からある種の自由が奪われてソレに伴って様々な不幸が起こってしまう可能性がある。


 目先の不幸としては、マリアが酒を飲めなくなり。ボンテージスタイルじゃなくなる。いや、俺としては規律されて嘔吐しないだけでもハッピーな出来事なんだが、自分のスタイルを崩されたマリアを想像すると、少し可哀想な気がして来た。


「私としては、第五都市復旧を貴方に任せて、ついでにサルマンの代わりの枢機卿の位置に正式に就いて頂きたかったのですが。オースカーディナルの誓約も消えてなくなってしまったらしいですし?」

「絶対に嫌です」


 俺は、即答した。ついでに重大責任どえらいもんまで背負わされてしまうなんて堪ったモノじゃない。本当に油断ならない。


 エリック神父は「即答は酷いです」の言葉と共に、「ですが…」と言葉を続ける。


「偶然か、はたまた必然か判りませんが。枢機卿に一つ空席が出来てしまったのは確かです。私の息の物が復旧と混乱の鎮圧にばたついている今、彼等はその席を確実に取りに来るでしょうね」


 法王(教皇)の選別は枢機卿の中から行われる。法王に選ばれるだけの格を持つ枢機卿は七人。そう、中央聖都を取り囲む七都市に君臨する枢機卿から選ばれるのである。


「彼は危険です。直感ですが、あまり座を譲りたくはないのが本音です」


 そう言うエリック神父の目はいつになく本気だった。これは冗談でも何でもなく、本当に危険性が増しているのかもしれない。


「まったく、面倒な事には面倒な事が重なりますね」

「本当ですね」


 そう言いながら俺とエリック神父は笑いあう。


法王位選ポープスローンを行う為の枢機卿会議が行われるのは、もう少し後になるでしょう。今の所教団よりも堅牢なこのギルドに身を隠している内は……ですけどね」

「いつまでも隠れている訳には行かないでしょう?」

「そうです。混乱もありますから、いずれは民衆の前で先導して行かなければなりません。自分の役割を忘れた事は片時も無いですよ?」

「ですが、それからどうするんですか? 確かに私は愛弟子ですが、貴方の立場を守れる程の位に就いている訳ではありませんよ? 特務枢機卿は法王の下でこそその実力を発揮する物だった訳ですし」


 エリック神父は瞳を閉じて数秒程思考に耽る。そして、考えがまとまったのか目を開けると俺に言った。


「私に考えがあります。これを期に教団の体制も少し変えて行かなければなりませんしね。それは———」















 エリック神父が放った一言に、俺は二つ返事で了承した。


 現法王、エリックの一言には、それだけ重みがあり、俺にとってもそれだけ価値のある物だった。それはギルド福音の女神やギルドリヴォルブ。


 はたまた東の縄張りを治めるJOKERや、様々なプレイヤーとこの世界の住人を巻込んだ大騒動へと発展して行く。











 次回からは、またプレイヤーズイベントになります。

 たぶんゴタゴタして行くんじゃないかと思います。

 頑張ります。


 最近小説投稿の感覚が空いていまして、設定がどうなっているとか凄くマチマチになって来ています。

 暇があれば過去の文章を読み返して伏線を拾おうとしてます笑

 ですが、伏線と言える程の伏線でもなかったりしますので。


 懐かしい登場人物がまた出たぞーとかそんな感じでお願いします。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔方陣構成する一つの都市落とされたら全部の機能落ちるとか何? こういう複数の都市に結界とか魔方陣の核担わせるのってリスク分散が大体の目的じゃない?普通は バラバラに配置して一つでも…
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