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思わぬ再会、同行者達

 目覚めました。あ、いや別にログインしたとかそんなんじゃないよ。

 普通にRIOで寝て夜を明かしました。


 RIOでは睡眠も重要になってくるわけで、ステータス補正で俺は睡眠を我慢する事ができるが、ユウジンは疲れをいやす為に睡眠が必要だと言う事が判った。寝ると精神力が回復するのね。やっぱり単純じゃないな。色々な要素が絡み合っている。

 別に俺は科学者じゃないから、この世界の物理法則を解き明かす役目は他の誰かに譲るよ。もし物理学者がこのゲームをやっていたらだけどね。


 俺もユウジンもリアル時間で今日明日は時間があるから、RIO時間で北への進路を十分に稼げる事になる。

 北への旅商人への許可は俺が貰っておいた。二人くらいなら大丈夫らしい。移動費は一人銀貨5枚。50000ゴルド。ジャスアルの通貨だ。大国なので、しばらくはゴルドで乗り切れると予想しているが、魔法都市や鍛冶の国など大きな国に行けばその国の通貨に切り替えないと行けないみたいだな。

 金貨銀貨は要するに世界通貨と呼ばれているものでどこでも仕えるのだが、小さな買い物をする際には面倒くさいのだ。


 俺のこの旅は、ほとんどユウジンの財産に依存している。笑

 いや笑っちゃ居られない。


 エレージオまでは二人旅なのでなし崩し的になんだかんだ行けると思うが、問題は、アーリアである。

 魔法の書物を読むにはジャスアルでも金貨1枚かかった。100万ゴルドだ。入場用の預かり金貨だけでだ。施設利用料として銀貨80枚だけ返って来たんだが、それでも入るだけで20万ゴルドだぞ。

 はぁ、あの日は地図を見るだけで終ってしまったが、また行きたかったな。


 さてさて、いよいよ旅立ちの時だ。

 エリック神父に挨拶をしようと思ったのだが、居なかった。どこに行ったんだろうか。でも昨日の時点で旅に出る旨を話している、馬車の時間もあるし、行くしか無いか。

 必要な物は全て空間拡張したバッグに入れている。ただの革袋だけどね。お陰でお金がパーだ。なんと言う事だ。

 今の俺の出で立ちは、黒い神父服に黒いブーツ。皮で出来たリュックサックを背負っている。因みに片方の肩に下げるタイプのバッグや腰に付けるタイプの小袋しか無かったので、わざわざ道具屋と裁縫屋に掛け合い作って頂いた。


 アイデア料としてほぼ原価で作ってもらったのだが、その原価が高かった。素材は最初のエリアボス。『森林大狼フォレストウルフリーダー』の皮である。根切りに値切って売ってもらった。

 ってか俺を見たプレイヤーが目を丸くして驚いている内に勢いで交渉して来た感じ。神父姿にびっくりさせちゃったかな?そんなに珍しいかな?


 そんな訳でお金もなくなったので俺の荷物は水とラビットの薫製肉諸々と予備のナイフである。いつも使っているナイフはベルトに挿している。

 その他の荷物は、ユウジンの小物類だった。


 かれのINTとMNDの低さがここに影響している。

 比較的重要性の高い物のみが入れられている。彼の空間拡張は重たい物はそれこそかなりの重さまで行けるが、拡張性があんまりなくて持ち物の種類が入らなかった。水と干し肉と予備の刀が数本とそれの整備セットだ。着替えは俺が持っている。


 ってことで、鍛冶屋に挨拶してから来ると出て行ったユウジンもそろそろ待ち合わせ場所の北門に向かっている頃だろう俺もそろそろ教会を出ないとな。

 え?今まで何をしていたかって、礼拝です。







「師匠、おひさしぶりデス。見事な礼拝っぷりデス」


 懐かしい呼び名だなと思ったら、後ろにはブロンド美女がいた。透き通った肌に、整った鼻筋。なんだかんだ、見た事あるような、無い様な。でも髪は緑じゃないし、耳もまん丸だ。白人美少女って感じ。


「えっと…エリー?」


 その少女はコクンと頷いた。


「間に合いました。実はですね、数日前、彼女らも私を尋ねて来ていたんですよ」


 そう言いながらエリック神父がドアを開けて入って来る。

 後に続いて入って来た、ローブを来た小柄な女の子と、背の高いオールバックのクールガイ。何となく察しは付くぞ。


 エリー、凪、セバスチャンである。


「なんでまた」


 少し動揺してしまって、上手く会話が切り出せない。そんな中、エリック神父が説明してくれる。


「前にですね。あなたが図書館に行った後、彼女達もこの教会を尋ねて来たんですよ。この世界の住人としてですね」


 リアルスキンモードにしたのか。


「忘れられなかったそうですよ。あの時のあなたの表情が」


「ワタシ、師匠みたいナロールプレイをスルためにはどうスレば良いか考えマシタ」


「ロールプレイじゃないけどな。って、エリーなんで片言なんだ?」


「ワタシは、日本に来てまだ間も無いかラデス」


「私もあなたの旅を心配していたんですよ。丁度彼女達が来てくれたので秘密裏に鍛えていたのですよ。ある程度この世界に慣れる為の方法はあなたを参考にして、魔法を覚えて頂き、私の知り合いの場所でこの世界のお勉強をして頂いていました」


 な、なんだかただならぬ予感。

 どうやら、神父は気を利かせてくれたみたいだな。旅立つ俺にかけがえの無い仲間達を届けてくれたみたいだ。


「だってほら、あなた友達居ないじゃないですか」


 何だとこの野郎!いるわ!最低一人は居るわ!なに?神父からみたら俺たちは友達じゃなかった様に見えたの?なんなの?うががが!


「思いっきり寄生虫ですね」


「………泣くぞ」


「冗談です」


 リアルスキンモードは泣くエフェクトじゃなくて、本当に泣けるんだからな!


「ヒキコモリってやつデスネ! ワタシが友達になりマス!」


 思いっきり傷を抉って来る外人だな。ちくしょー。でも嬉しいよ。友達が一気に増えた。やったー。



 ははは…。




 もう神父なんか知らんもん。

 プリプリしながら俺は教会を出る。振り返ると神父はいつまでも手を振ってくれていた。でも素直に嬉しかった。また再会できた事にね。

 時刻を知らせる鐘が鳴る。やべぇ、馬車の時間だ。マズい。


「置いて行かれる! 早く行くぞ!」


 俺達は北門へ走り出した。俺はいつものショートカットを使う。裏路地だ。彼女達を振り返ると、キョロキョロしていた。やっぱり珍しいんだな。







「おっせーぞ。アレンさん待ちくたびれてんぞ」


 貧乏揺すりをしながら、イライラした様にユウジンが言う。

 間に合ったようだ。息を切らしながら弁明する。ついでに人が3人増えた事もな。


「あれ? なんでその人達はどうした?」


 ユウジンは息を切らしているエリー達3人を見ながら言う。まぁ大体察しは付いているのだろうが。


「さっき、出発前に、エリック神父が、連れてけって」


「いいから息整えてから喋れ」


 そうだった。体力は有るんだが、素早さが無い俺はそれはもう必死こいて走った。だって余裕で付いて来るから、こっちがケツ叩かれてるみたいだったんだもん。絶対足遅いって馬鹿にされる。

 いや遅いけども。


 事の顛末を話すと、ユウジンは判ってくれたようで、旅商人のアランさんに説明と交渉を始めた。エリック神父の話なら、と快く乗っけてくれたアランさんに感謝だな。だが実際ギリギリ詰めても乗れて4人までである。

 ここでセバスチャンが旅商人に商売の勉強と、御者のやり方を教わりたいと御者席で馬を動かす役目を率先してくれた。

 流石セバスチャン。お前は良い従者になる。


 多少バタついたが、俺達の旅がスタートした。


「俺はユウジン。こいつのリア友だ」


「師匠のご友人デスカ! ワタシはエリーと申しマス」


「アタシは凪。彼女のクラスメイトよ」


「セバスチャンです」


 おいセバス・・・。まぁ話を聞く限り彼女の学友だろうな。

 お互いが自己紹介を済ませ、俺は彼女達に旅について話した。これからの進路と目的である。もしかしたら付いて行きたくないかもしれないしな。途中で別れるかもしれん。


「ワタシはロールプレイに拘りマス! エルフの姫騎士デス!」


 まだ諦めてなかったのな。でもまぁ、容姿は近いからいいんじゃない? 聞く所によると、彼女は北欧出身の様だった。エルフの伝承が残っているようで、子供の頃から憧れていたようだ。才能は『氷精霊の加護』。

 おい!また固有名!なんかすげーぞ!


「ん〜アタシはまだ決まってないけど、エリーが心配だかね!」


 典型的な委員長タイプと見た。才能は『探究心』。

 だから!固有名!


「私は、お嬢様の良き従者でありたいです」


 才能は『多彩』だった。

 もういいよ。セバスチャン。お前だけは信じてたのに。


「なんつーかクボ。お前の才能とかカスみたいだな」


 最強の才能を持ったヤツが更に抉って来る。何だよ俺なんて所詮そんなもんだよ。くっそ、才能なんか努力で凌駕してやる。と、俺は才能も有って努力を怠らなかった結果達人の域に居るユウジンの前でそう悪態をついた。折れそう。






 特に何か有った訳でもなく。日は沈み、夜になった。

 ずっと馬車を動かしていたアランさんとセバスチャン、そして女性陣には就寝を促し、俺とユウジンで夜の見張りを担当しようと案を出したのだが、彼等にはあえなく却下された。

 流石に人数が多いので、アランさんには眠ってもらっている。ってか、俺は本気を出せば数日は眠る必要が無い(試した)ので、別に最初の街へ向かう一日二日くらいどうってことないんだが。


 騎士になるには経験も必要だそうだ。


 順番はエリー、凪の二人が前半で、俺とユウジンが後半を担う事になった。セバスは中番って感じで、前半の途中から後半の途中までを担当する。


 前半は暇だな。とりあえず、この無駄に才能豊かな連中に勝つべく魔力ちゃんをこねくり回しながらクロスたそと戯れて、聖書ちゃんを抱きしめる。

 こういう言い回しは変態だな。最近、ユウジンに教えてもらったファンタジー小説を勉強がてらに読んでいたのだが、存外面白いな。ライトノベル。



 要するに。

 魔力操作を自分の周囲に展開させて、その中で念話の応用、念動を使いクロスを浮かせて動かす練習をしながら、聖書を手に持ちひたすら瞑想と称して暗記した中身を読み上げる作業である。今では普通に寝転びながら出来る様になった。まぁ、普段は座禅を組んでいるが、いずれは自分の身体も浮遊させれる様になりたい。

 デスタ○ーアみたいに。


 ユウジンは俺の隣で黙って寝ている。爆睡だ。まぁ魔力を感応する事に関してはとてつもなく鈍感なので、邪魔はしていないだろう。

 そして交代の時間になる。

 セバスが準備してくれた夜食を食べつつ、俺は近くの木に背中を預け修行の続きを行う。まぁ何か有ったら近くで素振りをしているユウジンが多分気付く。俺も集中力はとんでもないくらい上がっているので、異物が来たら判るしね。


 セバスの飯は美味かった。とんでもなく。彼の『多彩』は、なんでも出来る彼の性格から現れたんだろうか。納得である。

 ちなみにみんなのテントも彼が張った。そして野営の準備も彼が行った。

 この数時間で彼はとんでもなく必要な人材として変貌を遂げた。


 彼は俺たちの修行風景を静かに見守っていたようだ。自分の寝る時間になったら音も無く就寝していった。



 何事も無かった様に朝が来た。この野営パターンは定型になって、後々セバスが俺たちの修行に混ざる事になる。





この世界の人は一日の始めに礼拝することによって、MND補正を貰い『一日頑張るぞ♪』という風に仕事を開始するのである。

やる気スイッチ。


プレイヤーの露店で物を買う神父NPCの噂が出回っています。

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