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ゴッドファーザー

時系列は少し前から始まります。

今回は8000文字超えました。

最近長くてすいません。

「あの、フォルトゥナさん? ……これは一体?」

「いーの!」


 胡座をかいて瞑想の姿勢に入る俺の上に体育座りする運命の女神。彼女の小さな背中が、その重みが完全に俺に身を委ねる様にのしかかる。

 なんだかとても危険な香りのする構図なのだが、彼女が言うには半減してしまったレベルとステータスを取り戻す為には、より効率の良い鍛錬をしなければ行けないのだそうだ。


 で、その結果がコレ。

 確かにこれは、精神力が鍛えられマスネ。


 今の俺には才能が消滅した『ただの人』であるため、今までに培った精神値のボーナス補正は無い。精神値のみだが、半神に匹敵しそうな程だったため、その量が半減した所で人の限界をとうに越している状況だったが、それはそれでかなりの量が無駄になってしまったんだな、とへこむ。


「でもでも! 今なら取り戻せるの!」


 と健気なフォルを見ているだけで俺はなんとかやって行けそうだ。


「オースカーディナルの本来の使い方は、誓約を超えた先にある物なの。誓約によって力を得るんじゃなくて、重たい誓約を課せば課すだけその精神値の見返りは大きく変わって来るの」


 衝撃的な事実である。

 攻撃力と防御力が上がると思っていた、オースカーディナルなんだが、よくよく考えた所の単なるやせ我慢が上手くなるというマゾ仕様だった訳だ。


 知らずに使っていたからこそ何とかなっていた訳で。


「地力でクラーケン倒すなんて精神値に引っ張られた結果なの。魂の力は存在力の証明なんだから」


 と褒めているのかよくわからない感想をフォルから頂く。

 とりあえず、超絶やせ我慢の結果なのだろう。

 そう、俺は死を恐れない。めっちゃ怖いけど、リアルスキンモードのプレイヤーの中で、一番死んでいるのは俺じゃないだろうか。


 例えゲームの中でも死ぬのが怖い。と安定した生き方をするリアルスキンプレイヤーは多い。


「カーディナルの誓約を最大限にするの。瞑想するだけの精神は私がなんとかするから、暴れる魔力ちゃんをしっかり支えてあげてね」


 と、言いながらカーディナルの誓約を一気に上げるフォル。

 他人が弄れるのかよそれ。


 彼女の理論はこうだ。

 聖書、十字架クロス、聖体の三つが揃う事によって三位一体トリニティとなる。これは人間の神に至るまでの道であり、この儀式を行う事によって膨大な精神値が加算され肉体から精神体をすっ飛ばし神へと生まれ変わる。


 長い年月をかけて聖なる魔力をしみ込ませた聖書。

 同様に祈りを捧げて来た十字架クロス

 そして修行によって洗練された聖体。


 この三つが揃う時、人は神へと昇華する。歴代の法王の中でもこの真理にたどり着きそうなのはエリックただ一人だけなのだという。


「それを俺に教えていいのか?」

「どれかが欠けていると無理なの。それは天文学的な確立で、クボには無理なの。あと肉体から聖体に変質する時は、魂が肉体の束縛から開放される時なの」


 要するに、死ねってことか。

 恐ろしい事と無情な現実を同時に俺に突きつけるフォルトゥナ。


 そして、その儀式を簡略化。本来人のみでは無理なのだそうだが、神だからできるんだと。神だからって理由は万能だ。


 幸いな事に、オースカーディナルによって精神値の限界値は無効化されている。そう、半神と言えるレベルにまで発展できる器は既に出来ていた。

 あとは三位一体トリニティの儀式によって爆発的に増加させるのだという。それは、オースカーディナルの補正ボーナスよりも絶大な力となる。


 本来であれば内燃させなければならない魔力を俺は常に放出してデロデロさせていた訳で、その存在力は持ち主依存では無く、すでに独自に個と言う物を持ち始めているんだとか。

 そして聖体という代用の聞かない物を聖職者おれの聖なる魔力で代用するンだとか。


 そうかそうか、魔力ちゃん遂に出番です。

 行ってらっしゃい。


「じゃ、魔力が膨大な精神力へと置き換わるの。クボは魔力ちゃんをしっかりと支えてあげるの」


 フォルが体操座りのままに首だけ動かして俺を見上げる。これが、オースカーディナルじゃなくてクロスたそだったらな。このセーフティーモードは俺だけの空間であり、嫁達をいちゃいちゃ出来る飛んでも空間だった訳だ。


 そう考えるとこの十字架マジでいらん。でもまぁこの機会に上手く利用させてもらうとする。そして枢機卿の立場も捨ててやりたいのだ。

 邪神の尻拭いだけ終わらせたらとっとと世界を見て回りたいの、未だ魔法学校へのレポートの提出すらままならない状況だという事をすっかり忘れていた。


 どうしよう。

 もしかしたらみんな卒業まで行ってたりするんだろうか?


 そんな思考もすぐに余裕が無くなる。

 三位一体トリニティが始まった。


「ふぅんぬぐぉ!」


 変な声が漏れた。簡易化されて、規模が縮小されているというのに魔力ちゃんが俺の精神値に置き換わり器に蓄積されて行く。

 なんだっけ。これ、パワーレベリングって言う奴。でもパワーレベリングって強い仲間に強い所に連れて行ってもらって経験値を貰う所謂『吸い』って奴だよな。


「ある意味それで合ってるの、余計な事は良いから、魔力の制御を確りして!」


 フォルの応援を糧に、俺は必死に魔力を制御する。まるで自分の身体が原子炉担っている様に感じる。気を抜けばすぐに炉心融解メルトダウンしてしまう様な錯覚の中、精神値として膨れ上がった魔力ちゃんを自分の中で循環させる。


 INTが低い俺は、決定的に魔力を扱える幅が少なかった。だが、MIND値になれば話は別だ。むしろMIND値を操る専門家でもある。


降臨フォール!!」


 少しでも消費量を増やす為に発動する。

 元々体外の魔素を掻き集めて精神値に変える技『降臨フォール』が自分の内包される魔力で可能なレベルとなっていた。


 そう言えばMP量ってMIND値が主体だったような。半神並みだった精神値という事は、俺の中の魔力はかなり膨大な数になっていただろう。

 使い道が無かった訳だが。


 その量の魔力が精神値に置き換わっているって、一体どういう事だ。

 それを思い出すと、この儀式が果てしない苦行の様に感じて来た。


 いかん。精神を研ぎすませなければ。


「全ての魔力が精神値に置き換わって、MPという概念を超越するの。要するにMPゼロ。でも、魔力という概念が消える代わりに、その身自体がMPとも言える様になるの」

「え、それってもしかして、MP使い切ったら死ぬ?」

「……使い切る程の戦闘はこの先無いと思うの」


 何故、君は少し間を置いたんだ。そして否定でも肯定でも無い答えが返って来た訳だが、俺自身が魔力ってことか。


「言い当て妙という奴なの。MINDの塊と称した方が正しいわけ」


 なるほど。常に降臨状態って訳だね。

 俺の頭の中に最強という人文字が浮かび上がる、だが、降臨状態でもエリック神父に叩きのめされた記憶も同時に蘇り、瞬時にその馬鹿な思考をシャットアウトする。


 何の為に北の聖堂へ足を運んだと思ってるんだ。

 精神修行の為だろう。


 半減しても膨大な俺の魔力が遥かに膨れ上がって精神値に変わって行く。それを考慮すると、才能が無くなり、レベルが半減してしまった被捕食ペナルティは運命だったと感じてしまう。

 半減してないと、完全に俺のキャパシティを超えた世界に片足を突っ込みかねなかったからな。


「元々、あなたの才能は無限精神値量産型なの。オースカーディナルで人智を超える精神値のみ身につけれてはいたけど、それを操る器がお粗末。肉体自体は幾度となく復元した継ぎ接ぎだったから、修行以前に聖体になる可能性はほぼゼロ。今後とも軽々しく身を呈しちゃダメなの」


 フォルが悲しそうな声でいう。フォローも糞も無い事をバッサリ言う彼女であるが、相応に俺の事を心配してくれていたようで。


「うん、それは約束できないけど。ごめんなさい」


 俺も素直に謝る事にした。

 悪い事をしたらすぐ謝る。

 それが大事なんだ。


「もう……でもそこが貴方の良い所なの……」


 そう言って再び身体を俺に預ける。

 密着する事で、彼女の加護がより俺を助けてくれているのが判る。


 ふむ、魔力ちゃん。

 今まで活躍の場が無くて辛い思いをさせて来たけども。


 これを乗り切れば一生物の強い結びつきを得る事になりそうだ。だって俺の身体の構成が精神値に置き換わった魔力ちゃんになるってことでしょ。


 オッケー、即結納してやるよ。


 そんな事を思っていると、急に魔力ちゃんから高揚した意思が流れ込んで来た。そして急激に操りやすくなった魔力ちゃんをせっせと精神統一によって蓄積して行く。















———


 と、言う訳で今の俺は純粋なる精神力の塊。

 純粋なる精神体として生まれ変わった訳だ。


 天門ヘブンゲートに移動属性が付いた訳ではなく、天門ヘブンゲートによって天界経由で場所を行き来できる様になっただけだった。


 そして精密鑑定で俺を見ると皆驚愕するだろう。

 なんせMINDしか無いんだからな。

 HPもMPもSTRもVITもAGIもLUKもINTも何もかもがMINDになってしまった。


 馬鹿だろ。

 主に俺が。


 そして、間に合って良かった。常に降臨状態になる事に無事成功したのは良かったんだが、如何せん必殺技が無くなってしまった。


 聖十字セイントクロスは?

 いや、アレ既に小手調べにとりあえず放っとく的な立ち位置じゃん。

 だめじゃん。


 事実、俺の身体自体が聖十字セイントクロスを直接的に放出する様になったんだ。それは以前の物とは比べ物にならない程の威力を発揮する訳だが、それとこれとは話が別である。


 何か新しいのが無いかなと思った所。

 以前一度きりであるが、神鉄に憑依した悪魔を葬り去った一撃。


 聖火バラである。

 それを練習しようとしていた時、フォルが急に慌て出したのだ。


雪精霊フラウちゃんが危ないの! クボ! お願いだからそんなくだらない事やめて早く助けに行って! 今なら天門で一瞬なの!」


 だ、そうだ。

 くだらないってお前……。


 少しへこみそうになったが、天門の隙間からフラウが消滅させられる瞬間が一瞬見えた時、俺は躊躇無く聖火バラを放っていた。

 以前は全く使う事の出来なかった聖火バラだったが、今では特に変わった様子も無く使用できた。


 そう言えば、運命の聖書フォルトゥナって女神アウロラ鍛冶神ヴァルカンの性質を同時に持ち合わせているんだったな。

 もしかしたら大分前から使える様にはなっていたのかもしれない。そう考えると複雑な気持ちになる。


 聖火バラは邪のみを滅する炎である。聖光レイと違い、一瞬で消滅させるパワーは無いが、例え避けられてもその火の粉がまとわりつけば小さい所から確実に燃え広がり消滅させる性質を持つ。


 ちなみに、エリック神父は限定条件下で聖光レイを行使する事が可能なんだってさ。こう言った神の技の担い手は基本的に一人に一つ限定らしい。

 と、言う事は、未だに鍛冶神ヴァルカン神火メギドは誰にも使われていないのか。彼の寂しがる姿が容易に想像つく。

 俺は人ごみが嫌いだぜとか言いながら実際一人になると急に寂しくなって此方を見つめるタイプだからアイツ。ある程度の仲になると急にガードが緩くなるタイプでもある。

 男のツンデレとか受け付けてないんだが。


 まぁいつか、神火メギドの担い手が現れるだろう。それはプレイヤーじゃないかもしれないが、もし居たら邪神討伐に誘いたい。

 敵か味方か判らないけどね。


 プルートを撥ね除けて、聖火バラに包まれた雪精霊フラウを抱きとめる。羽を毟られた事によって大分力を失っているのが判る。


自動治癒オートヒーリング


 今の俺なら精霊すら治療してしまえる。もう無駄に名前の凝るのは辞めた。自動治癒は自動治癒でそれ以外の何でも無い。効果範囲が自分以外、そして肉体にも広がってしまったため、もう一括りにしてしまった。


 断じて名前を考えるのが面倒だった訳じゃない。

 自動治癒・運命操作も、今回の自動治癒も、なんら変わらないんだ。

 それで良いじゃないか。うん。


「神父ゥゥゥ。僕はずっと待ってたよねぇ!! 」


 ベヒモスの腹の中で最後に見せたあの気持ち悪い微笑みを見せながらだが、眼は狂気に包まれたままのプルートは俺の心臓を握りしめたまま一瞬で肉薄しようとする。


 人の心臓を何だと思ってるんだ。

 だが、以前感じた様な強大な力の差はプルートから感じ得ない。


 むしろ、俺からすればお前らは弱点属性な訳で、勝負は一瞬にして決まる。三位一体トリニティは成功したが、未だ精神値に置き換わった魔力ちゃんの放出が止まらない。

 何故かというと、心臓という核となりうる重要な器が消失しているからだった。


 大切な結納の席で、結納品を忘れてしまった俺。

 そりゃ、魔力ちゃんも怒って出て行くわ。


 判りやすく言うと、そんな感じである。

 止めどなく放出される精神値。聖なる力である。

 その向きを変えてやれば良い。その程度の制御が出来なかったらとっくに三位一体トリニティは失敗に終わっていただろう。


「ッ!」


 辛うじてその力の本流から抜け出せたプルートは、流石冥界の王と言える。だがしかし俺の目的は別に在る。


「……ハハハ! 自分で自分の心臓を消し去るなんてもしかして馬鹿? 馬鹿なの? ハイ死んだ! これで貴様は永遠に冥界に取り残されるのみだね!」


 狂った様に叫ぶプルート。


「貴方は何を言ってるんですか?」


 俺から溢れ出ていた力が止む。そう、放出していた魔力により消し去ってしまったかに思えた俺の心臓であるが、その辺は抜かりない。綺麗に邪の芽を消し去ると、そのまま心臓を俺の中に取り込んだのだ。

 元々魔素を絡めとるのが上手だった魔力ちゃんである。素早かった。


 そして結納トリニティの儀式は完成を迎える。

 心臓が作り替えられて新しく核に置き換わる、フォルはそれを聖核と呼んでいた。それが一体なんなのか詳しく理解する事が出来なかったが、私同様に名前を付けてあげてとの事だった。


 かなり安直だが、核をそのまま可愛く呼ぶとクレアって呼べそうだから。

 うん、魔力ちゃんの名前は『クレア』と呼ぼう。

 聖核だからセイントクレアだね。クロスたそと若干似てるので、そこは高級感を意識してクレア・ホーリーでもいい。






(クリームシチュー見たいな名前ありがとう! やっと力になれた!)

(わ〜、おめでとうなの! 魔力ちゃん…じゃなくてクレアちゃん!)







 聖なる力の塊である俺の力の源『聖核・クレア』がここに誕生した。何やら俺の精神空間で二人とも騒いでいる様子だった。


(クリームシチュー? そんな事より一瞬で決めるぞ!)


 俺は狂気に笑い続けるプルートに向けて、聖火バラを放つ。それは、流れ出ていた聖力のままに放っていた最初の物とは全く持って質が違った。

 フォルとクレアによって完全に制御された聖火バラが、プルートの足下から一瞬にして燃え上がる。



 そしてそれは邪神の力を完全に燃やし尽くした。



「ぁ……僕は…ただ地上に、渇望して……」

「邪神に踊らされてはいけません」

「間違って……?」

「間違う事は誰にでも在りますから」



 果てなき精神統一から、俺の怒りは完全に邪神へと向いていた。元々プルートも神の一人であるから、存在を消滅させる事は難しい。この場で消滅させる事が出来たとしても、また復活してしまう。


 神とはそう言う者なのである。

 神の子と神は大きく違う。冥府の神ハデスは、我が子の成長を促すべく、あえて冥界の一部を譲渡したのであった。


 ハデスの不在の時、そこにつけ込んだのが邪神だったと言う訳だ。

 無用な好奇心を刺激して、冥界での職務を放棄させてまで地上への渇望を促進させた邪神の波動が全ての原因でもある。


『どうやら終わったみたいだな』


 二重に響かせた様な声でハザードが姿を現した。

 あれ、いつの間に彼はコウモリの翼の様な物を四枚も生やしているの。疑問が浮かび上がるが、今はそれどころじゃない。


 強大な悪魔の力を彼から感じたからだ。


『うわ、天敵。でも俺は敵じゃない。味方だ。友達の友達は友達って言うだろ? だったら俺とも友達だ』

『良かったなディーテ。友達が増えて』


 ディーテってまさかあのデカい悪魔か!

 見た感じ、俺と同じかわからないが、ハザードも同化している様に思える。


「あれ? クボさん戻ってたの?」

(私とはまた異質の核が二つありますね。これは実に興味深い)


 もしかしてこれは彼女の本の声なのか?


『ん、俺らより先に核を持っていたとなると、先輩か?』

『おいディーテ。楽しんでんじゃねーよ』

『いいじゃないか、そのくらい許せ』


(わー! お仲間さんが一杯なの!)

(は、初めましてっ! さっき生まれました! しぇ、聖核のクレアです!)


『クリームシチューだな。ハザードの好物らしい』

『おい、人の記憶を勝手に見るな』


(悪魔核に聖核ですか。実に興味深いですね)

「えっと、あんたみたいに意思を持った存在って事でいいの?」

(その通りです。あとクリームシチューとは一体……興味深い。凪様も昔家庭科の授業でとても素晴らしいクリームシチューをお作りになって一時期クレアおばさんと呼ばれていたんですね)

「やめてよ!」


(わ〜、クレアちゃんの先輩なの〜?)

(しぇ、しぇんぱいっ!?)


 ハザードの一人芝居はさておいて。

 緊張するクレアも可愛いがさておいて。


 これは一体どういう事なんだ。

 因にこの核達の会話は、思念を通して仲間だと認識している人らにも聞こえている。ディーテのみ、ハザードの声帯を利用して話しているようだが、ぶっちゃけ紛らわしいから辞めてほしい。


 数秒思考してみたが追いつかなかったので、皆一様にパワーアップしたと言う事で無理矢理理解した。


 俺は井戸端会議に発展した彼等を纏める。

 そんな様子を見ていたセバスが「ゴッドファーザー……」と呟いていた。


 おいセバス!












———


『来たか……』


 ハザードが呟いた。

 それと同時にとんでもないエネルギーが超スピードで冥宮に飛来した。


「久しいな、ボッチ悪魔」

『ハハハ、息子の教育に失敗したお前に言われたくない』

「ぐっ」


 いかつい顔をしたおっさんが、ディーテに核心を突かれ険しい顔を作る。そして怒り心頭という面持ちで、すっかり座り込んでしまったプルートを睨む。


「ひっ! 父上!」


 プルートは震え上がり泣き始めた。


「お前という奴は!! 冥界の仕事を任せれば責任を持つかと思えば、何を遊んでいる!!」


 一喝。そして此方を振り向いた。


「愚息の暴走を止めて頂いて誠に感謝しています。このたわけが! 謝らんか!」


 優しい顔で微笑んだかと思えば、強烈に怖い顔で息子を叱り出す。

 忙しいおっさんである。


「良いんですよ、全ては邪神が悪いのです」

「そう言ってくれると助かります」


(責任転換が上手デス)

(何が何でも丸く納めるつもりなんでしょうかね?)

(いや、多分あのおじさんの顔が恐いのよ)


 エリー、セバス、マリア。

 聞こえてるんだけど。

 軽く睨むと眼を背ける彼等。


「邪神討伐に力を貸して頂ければと思います」

「無論、冥府からは最高戦力を送り出しましょう。だがしかし、この愚息の下に就かせていた者達も相当なくせ者でして、私は逃げ出した無限を再び追わねばなりません」


 そして、ハデスは未だ横たわるユウジンを見つめた。


「申し訳ないですが、私でも世界鬼はどうする事も出来ない。あれは地上世界の意思の塊。無限はなんとかできるんですが、世界の意思は管轄外なのです」

「……一体どうすれば」

「今の所は、彼自信が意思に打ち勝つしか方法はありません。ですが、」


 とハデスは付け加える。

 そしてユウジンが握りしめている無骨な木刀を一度見て言った。


「唯一抗う事の出来る切っ掛けが、この木刀となっています。世界樹を削って作られたこの木刀を探って行けば、答えにたどり着けるかもしれません」


 ハデスは自分の経験と知識から苦し紛れにヒントを割り出す。

 そう、結局の所ユウジンが打ち勝つしか無いのだ。


 それでも、一つの希望が在るなら俺はそれを確実に摑み取りたい。

 皆の意思も既に世界の果てと呼ばれる場所へ、そこにそびえる世界樹の元へと向かう事が確定していた。









 魔力ちゃんも無事に嫁入り。

 やりきった感がありますね!笑


 なんだかごちゃごちゃしてきましたね…。


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