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方舟の秘密

 海底洞窟だった。


 海竜リヴァイアサンに掴まって、西海域の海底に沈む方舟を目指して俺達は進む。水中呼吸の魔法を教えてもらったのだが、俺達に魔法の才能な残念ながら無かった。


 氷魔法が扱える俺ならば、雪山グラソン族の氷雪系魔法が使える俺ならば水適正はあると思ったんだが、血統的なモノらしく、それ以外の適正はてんでダメ。


「それでも英雄か? いや、英雄故か。みそっかすじゃのぉ〜」という言葉と共に、俺達はとりあえずの水中適応魔法を施され、手を掴まれてダイブした。


 次第に光蘚の様な物は無くなり、真っ暗な洞窟を抜ける様になる。せっかくの海底なんだ深海の風景を眺めてみたかった。


 そんな事を思っていると、急に隣でしがみついている神父が光り出した。

 水中適応魔法で海中でもなんとかなっているが、この水圧。


 神父よくしがみついてられるな。

 馬鹿でかいオース・カーディナルと呼ばれる誓いの十字架を背負っているのに。


(少し強化しないと水圧に耐えれませんので、ついでにこの光で海底観光と行きましょうか)


 テレパスが来る。

 俺はまだテレパスを習得していないので頷く事で意思表示した。




 海底洞窟はどうやらリヴァイの住処への道だったようで。

 そのまま広い場所へ抜けた。


 相変わらず深海なので真っ暗で何も見えないが、近寄って来る巨大な甲冑を付けた魚の牙だけが見えた。


(こりゃお前ら! 変な奴らが寄って来るじゃろが! 明かりやめんか)


(お、広域テレパスですか。でも降臨フォール状態じゃないと私しがみつく力が足りないんですよ)


(ぬぉっ! ちょっと尻尾を突かれたではないか、レディの下半身を突くなど、なんという奴じゃ! その光はよ止めて!)


(ふむ、あまり生態系を変えたくはないのですが…)


 焦るリヴァイの声。この辺の主ならこんな深海魚黙らせとけよ。

 と思ったが眼前に現れたゴツくて巨大な深海魚の目を見つめると寒気がした。


 さっさとこんな場所抜けようぜ。



 そんな事を思った矢先。

 眩い程の光が後方に。


 その光は十字架の形をしていた。


(とりあえず尻に噛み付いていた魚はこれで消しましたよ)


(尻っていうな!)


(でもほら、これで向こうの光にお魚さん集まってますし)


 異様な光景だな。

 巨大な深海魚達が、その光に群がる姿。


 普段くらい分珍しいのだろうか。

 でも、深海魚って目が良いって利くしな、逆に眩しすぎるんじゃないだろうか。


 甲冑魚や、その他にも強靭な鱗を持った魚。

 亜海竜種や、アンコウの様に光をぶら下げた魚。


 多種多様な魚を後に、俺達は一隻の巨大な船の元へたどり着いた。

 その船は、どういう訳か未だ船内中枢部に浸水はしておらず、一部は風化しているが完璧な形で残っていた。


「これが、方舟ですか」


 調度品も風化している様だった。神時代の始まりだと竜族の歴史では言われているらしい。俺はその辺は詳しくわからないのだが、クボヤマの話だと神時代は未だ伝承の域でそれほど多くの記載が乗ってないそうだ。


 解明する方法は知ってる物に直接聞くしかないと。

 聖職者、神父なんだろ。

 じゃ、神様に聞いて来いよと言ってみたら「今彼女達の力を借りずに修行しているので、この旅が終わってギルドに戻ったら聞いてみます」だと。


 え、聞けるの?


 風化した調度品を不用意にさわり砕けさせてしまい焦る神父の姿を見ていると、そんなに偉い奴なのかと疑ってしまう。まぁ、黎明期から何でも有りだった様な奴だし、そう言う事もあるのだろう。


「ママからよく寝る前に話してもらってたのじゃ、この船の一番奥の安全な場所に英雄への繋がりを隠してあると」


 子守り話として竜族には伝わっているみたいだ。

 ってかママって、お前一体いくつなんだよ。


「わしら海竜種は幾千の時を生きるからの、わしは生まれて900年以上じゃから、人間の年で言うと9歳じゃ、あと50年程で1000歳を迎えるのぉ〜」


 そうして長年、来るべき時の為にこの方舟を守り続けている種族。それが、海王種の中でもその頂点に立つ西海域の守護竜、海竜リヴァイアサンなのである。


 名は受け継がれて行くのか。

 なんか感慨深い物があるな。

 俺にも受け継ぐ名前とその鼓動がある。


 そんな事を思いながら船長室にたどり着いた。


「ここじゃ、これが世界の縮図じゃ」


 船長室には、ビリヤード台を二つ繋げたくらいの大きさの正方形のテーブルがあった。そのテーブルには世界地図が立体ホログラムの様に表されていた。

 その世界地図を照らし出しているのは、中央に浮く羅針盤である。羅針盤の中央には、下半分だけ残された砂時計が未だに砂を貯め続けていた。


 不思議な光景だな。

 地図は脈打つ様に風の流れ、波の動きが読み取れる。


 そしてこの砂時計の今もなお時を刻む様に落ち続ける砂。

 一体何を表しているんだろうか。


「これは、世界の動きを表しておる」


 リヴァイがそう言った。

 今現在の世界の動きを観測する事が出来るとか、どんな軍事兵器ですか。


「もしかして、この黒くなっている大地は…」


「魔大陸じゃ」


「人の支配する大陸と魔の支配する大陸ってことか?」


「違うのじゃ、魔ではなく、邪。邪神の影響を今なお残しておる大陸の事じゃ」


 なるほど。北の大地を見てみると、凍土は灰色になっていた。

 これはどういう事だ?


「まだ邪神の影響は少し残りつつあるという事じゃな」


「まるで、世界が邪神の勢力に囲まれている様に思えますが…?」


「その通りじゃ」


 リヴァイは続ける。

 黒に包まれていない大陸は、リアルの地球の様な物だった。


 形等には若干に違いがあるが、ローロイズがポルトガルだとすれば、最初の街であるジャスアルはリアルでいう地中海のど真ん中。アラド公国はフランス的な位置。一時期話題になっていたデヴィスマック連合国はまさに東ヨーロッパ諸国だろう。


「だとすれば、北の大地はロシアだな」


「北の聖門はフィンランドあたりでしょうか」


「バルド海を消すなんて…運営め!」


「ふ〜む、地形はかなり変わっていますが、大体の位置は掴める様ですね。魔法都市はイギリスでドワーフの国はオランダ辺りでしょうか?」


 そんな事を言い合う俺らに、キョトンとした表情を見せるリヴァイ。

 まぁ判らなくて正解か。


 問題は、丁度現実の世界地図程の大きさの人間の住まう大陸を囲む様に、三倍程の大きさの真っ黒な大陸がある事だった。


「グ○メ界か! 暗○大陸か! 地球四つ分の広大な広さが売りとかパッケージに書いてあったけどな、ほとんど真っ黒じゃねーか!」


 運営、もっとしっかり作れよ!

 まぁまぁ落ち着いてくださいと宥めるクボヤマ。

 俺の勢いはまさに縮図をボコボコにしそうな程だった。


「お、恐ろしい奴じゃの。カルシウム足りてないんじゃないか?」


「というよりも、これはまぁ彼の癖みたいな物なので許して上げてください。あれ、この大陸だけ、黒くなってませんね。邪神の影響を受けている大陸とつながっているのに」


「そこは人、魔族、獣人、全ての種族が住まう大陸じゃ、北は人の支配が強いが南は魔族と獣人が強い」


 そして未だ種族差別問題が根強く残り、混沌とした社会が築かれているらしい。

 魔族は全て邪悪かと言うと、そうではないらしい。


「そんなことより、英雄との繋がりって世界の縮図の事か?」


 話の本筋を戻す。

 たしかに、世界の縮図を見にここへやって来たのだが、最早目的は違う物になっていた。海竜の伝承に続く、英雄の繋がりとやらを探しにな。


「いいや、世界の縮図とはこの世界の今を表したもの。本来の意味はわしもあんまりわかっとらん」


「じゃ、なんなん?」


「ふ〜む。判らんのじゃ〜、良い所で寝落ちしてしまったからの」


 くそ幼女!

 ここからはノーヒントか、何かしら無いのかクボヤマ。


「その繫がりがあるとしても、私は英雄の器ではないですし、あなたも既に英雄の鼓動を持っているでしょう」


 鍵になるモノ。それは人だとクボヤマは告げた。

 たしかに、繫がりならば、それに繋がる人物が居なくてはならない。


「一度戻って人を連れて来るのはいかがでしょうか?」


「うむ、それが良い様じゃの」


 そう言ってきびすを返したその時、船内を衝撃が襲う。


「な、なんだ!?」


「邪の波動を感じます! 外に出ましょう!」


 走り出したクボヤマにリヴァイが慌てて水中適応の魔法を掛け直す。そして俺も掛けてもらいクボヤマの後を追った。


















「な、一体何故この場所がバレたのじゃ!?」


 方舟が隠されている場所は、明るい。

 発光性の珊瑚礁で照らされているからだ。


 だが、その明るい珊瑚礁は方舟以外を映し出している。



 大小様々、大量の死海蛇デスシーサーペント

 甲冑を身につけた魚人や、赤いイカも居る。


「これはマズいの。帝種の死海蛇が従えとる」


「やまん。人に聞くより鑑定の魔法を試してみた方が良いですよ?」


 そうだった。習ってたの忘れていた。




甲冑魚人・古代種

『堅牢が甲冑とかした鱗がその身を守る甲冑魚が永年その姿を変えず魔力を貯め、邪神の力によって魔族として変異を遂げたもの。古代種の大きさを保っているため、その身は愚鈍』


甲冑魚人・新種

『時代に適応して来た深海の甲冑魚。邪神の魔力を帯びてさらに凶悪に進化した。進化して来た種であり、今もなお進化し続ける。小型化して居る分、溜め込まれている魔力の質は上質』


デビルスクウィット

『深海の紅い悪魔と呼ばれているイカ。人を襲う。その凶暴性故、水面まで浮上して来るので、生息海域にボートで入る事を禁止されている。吸盤は牙の様に鋭い』


死海蛇デスシーサーペント・帝種

『本来、王種までしか成長しないこの種であるが、稀に誕生する海の災厄がある。帝種になれば本能的行動から打って変わって知能を持つユニーク個体としての力を持つ、破壊本能の固まりであるクラーケン種を唯一越える邪海の災厄。その力は竜種に近いとされる』



 凶悪な面々だな、その奥に蠢く黒い影が見える。

 こいつは…。




イビルクラーケン

『邪海の主。キングクラーケンが邪神の力で姿形を変えた。闇に溶ける様なその身には邪の波動が宿る。キングクラーケンとは比にならない程凶悪になってしまった海の怪物』



ついでに幼女も鑑定しとこうか。


海竜王女リヴァイアサン

『海竜・海王種。古くから西海域を守護する存在。竜にしては細長い姿と持つ、竜と龍とのハーフ。竜の贅力に龍の魔力を併せ持つハイブリットとして900年程前に誕生した。親は東洋の神龍『ジンロン』と海竜神『レヴィアタン』。処女』




 レヴィアタンと書かれていますが、戒名みたいな物なので。

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