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サバイバル夜の陣

 一人遊撃継続中です。

 ユウジンもハザードも移動が早過ぎてついて行けませんでした。

 ステータスの差をひしひしと感じました。


 さてと、時刻はそろそろ夜である。

 夜だからセーフティーエリアでキャンプ待機?

 のんのん。


 何の為に食料になる魔物が居るんだ。

 何の為にこんな広大な大自然を使っているんだ。

 もちろん夜もサバイバルは続きます。


 ルールには至って変更無し。

 ただ、レアドロップの魔物が夜専用にチェンジするくらい。

 夜行性とかあるのね。


 日が暮れてからが本番である。

 噂によると、PKギルドが参加しているみたい。

 PKという単語を聞くと、初めてのログインを思い出すな。


 ノーマルプレイヤーからかけ離れた行動ばかりを取っていたから、PKに遭遇する事は無かったが、色々な国の役所の掲示板にはプレイヤーと思しき人の指名手配書が張られていた所を思い出す。

 あのプレイヤーはどうなったんだろうな。

 俺を刺した奴。


 別に気にしちゃいない。

 ゲームの厳しさを一番最初に教えてくれた恩人だからね。

 傷を負っていたら直してあげるくらいの心の広さはある。

 ただし、俺だけだけどな。


 さて、夜営である。

 三人が固まって表示されているマーカーの場所へ向かう。

 とりあえず、小動物の魔物を道中狩っておく。

 今日の夜飯だ。


『ネイチャーバーベキューラビットの肉:イベント専用』

『ネイチャーバーベキューバードの肉:イベント専用』

『ネイチャーバーベキューピッグの肉:イベント専用』

『ネイチャーバーベキュー…』


 昼に動いたら夜はキャンプだ!

 ってことですか。

 お酒の準備はあるんですか? ギ○スが飲みたい。


 二十歳になって初めて、自宅近くのアイリッシュバーに一人でお酒を飲みに行った事があったな。

 カウンター席でいきなり話しかけられたかと思ったら、お前初めてなの?って聞かれて、あれよあれよと知らないオッサンにフィッシュ&チップスを勝手に注文されて食べさせられた経験がある。

 まぁ美味しく頂けた、引っ越してその店には行かなくなったが今でも営業してるんだろうか。


 話しがずれたが、俺の口は既にバーベキュー状態である。

 ってか、新たな要素を発見した。



『ネイチャーウッドの落とし物を拾いました』


 普段は流れないログだけに、この表示を見るだけでも楽しい。

 スポットって言うのがあるのかもしれないが、割と大きめの傷が入った木の根元に茂っている草。

 ネイチャーウッドの新芽だとか。

 山菜としてバーベキューの飾りにならないかと思って毟っていたら、奥の方で見つけた。


『ネイチャーウッドの落とし物を拾いました』


 光る握りこぶし大の種なんだけど。

 拾って中を割るとだね。


『種がネイチャーコーンに成長しました』


 トウモロコシになったよ!笑

 他にもネイチャーオニオン、タマネギだな。

 長ネギ、キャベツ、レタス、トマトと言った風に、色々な野菜に変化するのである。


 若干トウモロコシの出現率が多い所を垣間見ると、どう見ても運営は俺にバーベキューをさせたいようだ。


 ああもう。

 早く帰ってバーベキューしたいのだが、まだ見ぬ食材ドロップが俺を待っているのだろうか、そう考えるとついつい新芽をかき分ける作業をしてしまう。

 よし、もうちょっとピーマンと長ネギをドロップさせてから戻ろう。


 この時は忘れていた。

 ギャンブル中毒に落ち入ってしまった、奴がついつい次に懸けてベットをし続けてしまう様に。


 この木に大きな傷を付けた本人が現れるまでな。










大自然の守り主ネイチャーガードスタッグ・憤怒

『州立自然公園の主。自然を支えるネイチャーウッドを守る牡鹿。その森を荒らす物が居ると激昂し、姿を現す。怒れば怒る程その肉は熟成されて美味くなる。さらに、幼体をリラックスしてる時に即死させた肉は世界十指に入る程。※イベント期間中につき状態が1段階上位変化中。』




 鋭い角を持った巨大な鹿が、またも怒り狂いながら姿を現した。

 正直言ってすいませんでした。

 野菜はお返し…できませんがどうか神に免じてそのお怒りをお鎮めください。


 マジで。


 突進して来た鹿の角はいとも容易くその辺の木を削り飛ばす。

 マップを定期的に確認するのを忘れていた。

 そして魔力探知もだ。


 完全に野菜の亡者でした。

 ええ、まったく。


 畜生!俺はバーベキューするんだ。

 お前も食材にしてやる。


降臨フォール! コーティング!」


 バーベキューをするんだ。

 真正面から突進して来る鹿の角を厚めのコーティングを施した手で掴む。

 象に比べれば圧倒的に軽かった。

 それでも人の3倍近くはありそうな巨体。

 木を角で抉る程の力を持っている鹿だがな。


「鹿肉! うおおおお」


 バーベキューをするんだ。

 基本的に獣は踏まれると骨が潰れかねないので、顔中心に打撃を与える。

 鹿の角を正面から受け止める。


 素晴らしい、突進が止まったのだ。

 靴から摩擦で煙が出ているが、気にしない。

 象戦で成長したのかな?


 だが、鹿さん頭良い。

 ちょっと感動していたら、身体を下から掬い上げられた。

 空を舞いそうになるが、角を掴んだままだったので鹿の上に綺麗に着地する。


 若干股間にダメージを負ってしまったが死ぬより痛くないから無視。

 着地の瞬間、手に持っていた角の先っぽが折れた。

 木を抉る程の角だぞ。それが折れる衝撃を股から全身に感じた訳だ。


 聖書さん頑張ってくれてる。

 マジで。

 考え出すとじわじわと無視できない痛みが広がって来そうだ。


 決着は容易い。

 折れた角が幸いした。

 背中に乗っているのでいくら暴れたってしがみついてれば落ちない。

 巨大ロデオだ。


 頭の方まで近づくと、耳に向かって角を差し込んだ。

 鹿の巨体がビクンと一瞬震えた後、倒れた。



『大自然の鹿肉・熟成 一頭分』

『守り主の角・部位破壊報酬』

召喚サモン大鹿ドリュー


 ドロップアイテムである。

 食材モンスターなので、一頭分表記という事はまさしく全部位が食べられるのだろうか。

 まぁ解体必須なのだろうが、慣れているしいいか。

 鹿肉が手に入りました。

 ローストとかステーキもしくはワインで煮込むといい。

 セバスにご要望しなければ。

 野菜も大量にあるしな。



 野営地にたどり着いた。

 川から少し離れた位置である、ハザードもユウジンも既に戻って来ていた。

 お腹が空いたんだろうな。

 あいつら、戦闘装備以外持たない様な奴だしな。


 ハザードは自分で作った何かの薬草と木の実を煮て混ぜて濾して乾燥させて固めた固形物を食べていた。

 鑑定すると『賢人の非常食』とでる。

 だから何なんだよそれ。


 本人も栄養価はカロリーメ○トとほぼ変わらないらしいが、味は糞マズいと言っていた。

 そして残り汁は苦酸っぱマズい感じの青汁になる。

 ハザードは俺らと会う前、一人旅の時はもっぱらコレで過ごしていたらしく、セバスの料理に感激していた節がある。


 でも今でも炭酸で割ってログイン一発目に飲んでるんだって。

 特殊なバフでもあるのかな。

 どう見ても青汁健康法です。ありがとうございました。


 川を挟んでテントを張る人達がちらほら見える。

 向こう側にも渡れるのね、知らなかった。


 川から少し離れた位置に俺らのテントはあった。

 流石ですセバス。

 何人かがキャンプファイヤーをやろうと丸太をくみ上げている最中でした。


 バーベキューコンロは5台ほど設置され、椅子もテーブルもフルで準備されている。

 あれ?なんだか人多くない?


「よ〜神父。今夜はごちそうになるぜ」


 知ってる声が声を掛けて来る。

 ロバストさんでした。


「奇遇ですね。やや見知らぬ顔が多い様ですが」


「ああ、すまねぇな! こいつらギルドのメンバーだよ」


 辺りで寛ぐプレイヤー。

 みんなリヴォルブのギルメンなんだとか。


「この辺じゃ色んなギルドが夜は不戦条約を結んでPKギルドに備えてんぞ」


 話しを聞く所。

 裏掲示板なる所で、PK集団も日頃の鬱憤を腫らす様にこのイベントにて合法的に人を狩れる日を心待ちにしていたんだとか。

 で、昼活のプレイヤーが寝静まった頃を見計らって奇襲を仕掛けて嬲り殺そうぜという祭りが怒っているらしい。


 どこまでも危険な連中だな。

 集団襲撃に抵抗する様に、集団自衛へと正規の掲示板の方でも発展して行った方だ。



「ようするにプレイヤーズサブイベントってこったな」


 有志によるイベントと化しているんだと。

 まぁ勝てばポイントになるしな、負けてもパーティが機能していれば復活できるし、普段からPKが横行するよりもいいんじゃないでしょうか。

 ガス抜きは大切である。


「要するに、時間まではバーベキュー大会ってことですね」


 俺はセバスを呼び、大自然の鹿肉・熟成を見せた。

 皆の衆!

 今夜は肉だ! 野菜だ! バーベキューだ!


 大量に野菜を取って来て良かった。

 大盤振る舞いである。

 たまたま運営が貸し出してるバーベキューセットを持って来ている人も含め。

 バーベキューは更なる盛り上がりを見せ始めていた。


 川では漁師が魚を釣る。

 なんと、釣王も参加していた。


 魚を提供するから肉をヨロシクだって?

 構わんとも!

 釣王に神のご加護があります様に。


 祈りを捧げると何やら複雑そうな顔をしていた。

 俺のとなりで肉をハムハムしている。

 装備にライフジャケットを着ているだけなのに。

 愛玩動物的な可愛さがある。

 それが人気の秘密なのかもしれないな。


 もう隣では、エリーがせっせと肉を焼いて俺の皿に装っていた。

 妻かよ。

 女子力アピールも良いが、せめて鎧をしっかり着てくれ。

 いつ奇襲が始まるかも判らない状況で、あの時の青いドレスをきるんじゃない。










 指定時刻より大分早い時間である。

 俺、ユウジン、ハザード、釣王のみが微かな変化に気付いた。

 俺の薄く広げてある魔力に何か入った。

 ユウジンも俺にアイコンタクトを送ると、俺の感じた方向と同じ方向を向く。

 ハザードは『クロウ』を召喚し、既に飛ばしていた。


 ちょんちょんと俺の袖を引っ張る人が居る。

 釣王である。


「網に何かが引っ掛かったみたい。PKかしら、イベント開始かも」






「あ、イベント対岸だった、ワタシそっちいくね」


 そう言って、釣王は船を出現させ対岸のあの憎い神父達の騒ぐバーベキュー会場へと向かっていた。

 俺達がせっかく用意した釣王ファンクラブキャンプを捨てて。

 俺は、この一瞬だけPKになる事を誓った。




 更新遅れて申し訳ないです。

 12月14日まで仕事で多忙なので、一日1更新を守れない日が続くかもしれません。

 それでも時間が空けば複数回更新は隙をついて行きますよー。

 目指せ年内60話。


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