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初っ端から

 一斉テレポートした。

 場所は?


 森の少し開けた場所である。

 静かだな。

 空気も澄んでいる。


 ハイキング気分で深呼吸をした、その瞬間。

 もの凄い爆発音と共に遠くの空に火柱が上がる。


「うそーん…」


「ノーマルプレイヤーでそんな威力のスキルあったっけ?」


「詠唱省略では出せない威力だ、多分アレは開始前のカウントダウンで予め詠唱をしていたんだろう。もしくは強化モンスターだな」


 俺が呟いた後に、ユウジンとハザードが答える様に返した。

 火傷なら直せるが、火達磨直せるかな。

 聖書が燃えたら終わりなんですが、

 そう簡単に燃えない様にはしているけど。


「うっしゃ。燃えて来るぜ〜。じゃ、行って来まーす」


 そんな事を言いながらユウジンは森の中に消えた。

 そしてハザードもいつの間にか飛び立っていた。

 セバス達は拠点設営と防衛に位置取りを開始している。


 俺は残された。

 おい、なんでだよ。

 パーティプレイだろうどう見ても。


 全滅のリスク拡散だって?

 ふざけんなよ!

 なんで回復職の神父を置いてけぼりにするんだよ。

 セバスに聞いたら。


「クボヤマ様、守るの下手糞じゃありませんか。前回の準優勝者でもありますし、ここは遊撃として立ち回ってください」


 私達三人は拠点制作と守備向きですのでね。と、一言告げて消えて行った。

 なんなの?

 ほんでエリー。

 あたし知らないですからね!みたいな雰囲気出すの辞めろ。

 俺はお前の何なんだ。師匠か。


 パーティイベントだろコレ!

 みんなで力を合わせてだろコレ!

 なんだよもー!


 ドゴーン。

 バゴーン。

 チュドーン。


 そんな音が響いて来たので、一端絶望するのは辞めた。

 パーティのポイントを確認すると。

 既に55ポイントだった。


 早速何パーティか殲滅させてる計算になるな。

 1パーティ殲滅で16ポイントは入るからね。

 このルールをよく考えれば、最後の一人を狩る事でハイエナじみた事が可能なんだよなぁ。


 とりあえず、好きに動こう。

 人が集まる所と言えばなんじゃらほい。


 強化モンスターだな。

 幸い近くに赤い目印がある訳で。


 ってか、こっちに向かって来てない?

 マジかよ。





自動治癒オートヒーリング!」






 バリバリバリバリ!!!

 自動治癒を発動させた瞬間、左から森の景観を打ち壊しながら巨大な象が突撃して来た。

 慌てて飛び退く。

 体高は人の五倍以上。

 牙は人並みの太さと鋭さを兼ね備えた白色が四本で、先っぽにプレイヤーの残骸と思われる革のベストと血痕がちらほら。

 目は真っ赤に血走っている。



太古の巨象エンシャントヒュージ・レッサー

『太古の大陸に存在した巨大な象。太古の眠りから強制的に起こされたため、力は衰えている。普段は温厚だが、興奮すると目が血走り、暴走する。暴走した巨象数匹で、一つの国が滅びた事がある』



 おい。





 おい!






 強化モンスターじゃなくて最強クラス格下げじゃねーか!!

 こんなの相手に出来る分けない。

 すぐさまユウジンとハザードを応援で呼ぶ。


『ヘルプミー! ヘルプミー!』


『どうした? こっちは忙しいぞ』


『こちらも忙しい』


『知ってるよ! とにかくお前ら戻って来い! 最強級のモンスターに遭遇したんだけど! こっちは死にかけてるんだけど!』


『いや、お前死なねーじゃん』


『モンスターは5Pまでしか貰えないからな、価値が薄い』


『多分ドロップは古代系だと容易に予想できるからいいから早く来い! パーティ戦だろうが!』


 ハザードにも思わず敬語を使わず、ユウジンを相手にしている時の様に接してしまう。TPOだ馬鹿!

 んな事行ってる場合か。


 古代系ドロップだと聞いて、二人は暢気に『ならいく(いこう)』と返事すると緑色のマーカーが俺自身を示す青マーカーに接近して来るのが見えた。

 この調子だと後3分もしないでどちらもたどり着くだろう。



 3分か。

 早いんだろうが、今の俺には遅く感じる。


降臨フォール! コーティング!」


 全ステータスが俺の過剰なMND値に底上げされる。

 打つかり稽古をする気は無い!

 足狙いの直火当て聖十字セイントクロスだ。


 狙うのは後ろ足。

 前足外した時、後ろ足で踏みつぶされるのは流石に嫌でしょ。


 人間、限界を超える様な動きをすると、急に回りが遅く感じる様になるよね。

 思考やら何やらが加速する感じ。

 多分それだろうな。


 上下左右縦横無尽に暴れる牙と鼻を身体を捻る様に飛び込んで躱す。

 頑張れ俺の関節。捩じれろ、縮まれ。

 なんとか抜ける。


 その後は前足だ。

 無理だ。

 目の前にあった。



聖十字セイントクロス!! ングっ…!!!」


 腕が折れてしまった。

 いかんな、蹴り飛ばされただけで360度ボキン。

 皮は完全におじゃん。

 腕の腱と筋だけで繋がっている様な状態。


 自動治癒オートヒーリングが直してくれる。

 しばらく掛かりそうだな。

 呪い、毒物系はまだ良いのだが、こういう物理的損傷の治りが地味に遅い。

 そりゃ、部位欠損ペナルティが発生しない様に段階を踏んで聖書さんが直してくれてるからなんだけど。


 巨象、遠心力に振られながらも方向転換をする。

 こっち向いてる。

 完璧俺ターゲットなんだよな。


 何もして無いのに。

 因に直火当て聖十字セイントクロスは、硬い皮膚に少し焦げ目を入れただけだった。


 オーマイゴッド。

 俺は蹂躙されるのか。

 生き返るかもしれないけど、一応コーティングしておこう。

 最悪、ヌルっと隙間を縫ってな。


「ディメンション・百年砦の城壁」


 俺と巨象の間を分つ様に巨大な城壁が姿を現した。

 そのあまりの質量は、凄まじい衝撃を上げながら大地にめり込んで行く。

 木の根とかおかまい無しだな。


「ッわっぷ! 土まみれだよ!」


「死ぬよりマシだろう。む、クボ逃げろ。抑えきれない」


 血が上った巨象には、迂回するという選択肢は無いようである。

 突進を繰り替えし、巨大な城壁はヒビが入り今にも砕けてしまいそうだった。


「ちょっと腕の治療中で素早く動けないんだけど!」


 タイミング悪しである。

 ハザードは空に居るからな。安全圏だろう。


 巨象が突進しながらハザードを見上げて喉を鳴らした。

 まさに強者の風格だろう。

 種の歴史から、なにから、俺達人間とか格と言う物が違う。


 それを感じさせる咆哮だった。

 思わず身体が硬直してしまう。

 すぐに聖書が打ち消してしまうが、アレはマンドラゴラの鳴き声の遥かに上位のスキルなんだろうか?


 賢鳥リージュアが魔法陣に消える。

 強制的に帰らされたのかな。

 ハザードは落下するが、ギリギリで浮遊の杖に掴まっていた。

 ずっと浮き続けるだけの杖だっけ。


 そのまま、百年砦の城壁をぶっ壊した巨象がまた吠える。

 今回は自動治癒をハザードにも掛けている。

 それはもう効かん。


 だが、為す術が無い。どうする。


「俺も知らない魔物だな。質量でせめて来るならこっちだって考えがあるぞ」


「ど、どんな…?」


「それを超える質量で対抗するのみだ」


 本気で言ってんのかコイツ!

 さっき凄そうな名前で凄い感じの盾出して、それ破られたばっかりじゃん。


「いや、良いアイデアだぜ! だが先に部位破壊と行こうじゃないか」


 横から割って入って来たのはユウジン。

 巨象の片側の牙を全部切り落としながら言う。


 今にも突進して来そうだった巨象がたたらを踏む。

 ナイスユウジン!


「遅いぞ!」


「まだ5分も経ってねーよ」


 されど5分である。

 5回は殺されてた自信がある。


 パーティの攻撃の要がそろった。

 遊撃を担当する俺達前衛な訳だが。

 前衛の中でも役割が別れていて。


 まぁ判るだろう。


 ユウジンが前衛(至近距離)。

 ハザードが後衛(近距離)。

 俺が回復(超至近距離)。


 超攻撃的なのである。

 それぞれのリーチに沿ってだな。

 距離感と言う物はシビアに定められているんだぞ?


 動いていない物だったら運動エネルギーなんぞカス同然だ。

 俺は降臨フォールの出力全開にして像の最初に傷つけた前足にしがみつく。


「うおおおおおどっこいしょおおおお!!!」


 関節をぶん殴り、折る。

 足かっくんの要領だな。

 だが、その際余波に巻込まれて俺は潰される。


「ディメンション・炭坑族ドワーフつい×2」


 膝をついてバランスを崩した象の顔面。

 未だ健在のもう片方の牙に向かって縦に重なった巨大な石柱が飛来する。

 バギンバギンバギン。

 絶大な質量兵器だな。

 十分な位置エネルギーを蓄えた石柱は容易く巨象の牙を圧し折り、その勢いのまま像を転がしてしまった。


 折れた勢いで前転。

 生き物の弱点である腹がむき出しになった状態で、鬼火力を誇るユウジンにバトンタッチされる。


「鬼闘気。鬼神の一撃」


 全身から吹き出る湯気と共に、茹で上がったタコの様に真っ赤になった彼の身体から鬼神の如き一撃が見舞われる。

 それは神鉄から出る天鋼あまはがねで打たれた名刀-天道てんとう-も相まって、巨象の腹は、あれだけ頑丈だった皮膚は、いとも容易く斬り裂かれた。


 弱点特攻の割には、内蔵は無事なんだからな。

 驚くべき程頑丈な魔物だった。


 ドロップアイテムがポップした。



『太古の象牙×6 部位破壊報酬』

『太古の巨大骨×3』

『太古の象皮×3』

『完熟した巨象の肉×一塊』

太古の記憶エンシャント・メモリー×1』

召喚サモン白象アドロイ

『巨象の咆哮』



 一杯ドロップしたな。

 均等に分けれるのが半分と。

 肉塊、これは置いといて良いや。



太古の記憶エンシャント・メモリー×1』

召喚サモン白象アドロイ

『巨象の咆哮』


 この三つどうする。

 でもなんとなくみんな欲しいのは散けてるよな。


「…わかってるよな?」


「ああ。大体察しはつく」


「じゃ、せーので言おうぜ」


 ユウジンがせーのと言う。


太古の記憶エンシャント・メモリー×1」

召喚サモン白象アドロイ

「巨象の咆哮」


 はい、散けました。

 因に俺は絶対余りものになるであろう『太古の記憶エンシャント・メモリー×1』を選んでいた。

 なんでかって?

 消去法だよ。


 確実に、召喚を選ぶのがハザードだろ。

 ユウジンもハザードが確実に選びそうな物は流石に選ばないだろう。

 よって二択な訳だが、太古の記憶なんて興味ないだろ。

 これで決めうちだ。


 部位破壊も、止めも決めたのは彼等だ。

 彼等の隙に選ばしてやるんだ。



 さてさて『太古の記憶エンシャント・メモリー×1』って一体なんなんだろうね。

 まぁそれは後でも良いか。

 騒ぎを聞きつけたプレイヤーが集まって来た。

 疲労した所を狙うハイエナ共だな。



 ドロップ品はイベントが終わってからゆっくり調べてみよう。

 コレはもしかしたら俺の求めてる物かもしれないしな。






「クボヤマ様って、基本死にかけるじゃないですか? 逆手に取って全てのリスクをあの方に背負って頂く法則ですよ。フフフ。LUK0は伊達じゃないですよね」


 と、執事姿の男が呟いてました。


 ドロップアイテムなんて、クボヤマ以外は久しぶりの感覚なんじゃないでしょうか?多分そうでしょう。

 巨象の想像は、ロードオブ○リングの『オリファ○ト』を参考にお願いします。

 

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