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サバイバルイベント前の道中

 一度魔法都市の方へ戻りまして、そっからデヴィスマックへ向けて進路を取っている。

 ゲート経由でも行けるらしいのだが、ここはアラド公国経由で行きましょう。

 ラルドもしばらく走っていませんからね!

 RIOの世界のグラフィックを楽しみながら旅するのも乙な物であるのだ。


 相変わらずドッドッドッドと癖になるリズムで走ってくれるラルド。

 ちなみにだが、竜車も改造してありました。

 セバスの地味な努力と、魔法都市まで進出してきたブレンド商会のコネによって、アラド南西の国で生産職プレイヤーに発見されたゴムを利用したタイヤ、鍛冶の国の技術でバネ・サスペンションを作り広く普及させていた。


 快適な竜車となっている。

 内部も凄いぞ。


 知らぬ所で、凪の世界大全エンサイクロペディアが智慧の本に進化しており、その智慧の本-ウィズ-によって空間拡張が施されている。


 ようするに、内部に二十畳程の空間が有り魔法を利用した生活補助システムが設備されていた。

 魔法都市に行って良かった。

 各々素晴らしい研究をしていたんだな。


 すっかり乗り物酔いを克服した凪。

 隣に銀色の狼を従えるエリー。

 フェンリルってやつですかねぇ…。

 もちろん肩には雪精霊フラウもいる。


 代わり映えがしないのは俺とユウジンとハザードぐらいだろうな。

 なんだかんだ、この3人は装備のアップグレードくらいしかして無いからだ。


 イベントには、やはり飛行船の運行も開始されてあるらしい。

 ただ、そこそこ広い世界にプレイヤー達は散ってしまっているので、スカイホエールを運用する事は無かった。

 ワイバーンによる牽引が主な飛行船の運用法となっていた。


 地上では走竜種ランバーンが駆け抜け。

 上空では飛竜種ワイバーンが飛び交う。


 ファンタジーって感じ。

 いずれ、俺達プレイヤーにも飛行船を個人利用できる日が来るのだろうか。

 いや、確実に来るだろうな。


 未だオークションで本当の価値が判らぬまま売られている推奨VRギア。

 だが、発売された推奨ギアはかなりの数売れている筈だ。

 心ない転売人以外は確実にリアルスキンモードに手を出してしまっている人も居ると思うんだ。


 ゴムを見つけて流用してる奴とか絶対そうだろ!

 もっとそう言う人達とかかわり合いたい。

 ノーマルプレイヤーの情報は、ロバストさんがこっそりハザードさんの事について尋ねて来る時に貰っている。


 今回のイベント、ロバストさんも再会が楽しみなようで。

 因に、デヴィスマック連合国のクェス・アスダラス州に行ったらまず教会によりなさいとの事。

 マリヤ聖司書からの言葉であります。


 せ、せい司書…。

 いかんな、因に俺は年上が好みだ。


 魔法都市から魔法結晶をお土産に持って行こう。

 あの時は、ログアウト時間が迫って居たから、大急ぎて部屋を出るとゲートを抜けて魔法都市に戻った。

 ろくに喋れなかったんだっけな。


 そういえば、最近エリーともろくに喋ってないな。

 まぁ、彼女も集中して自己鍛錬に励んでいる様なので、あまり口を出さないでおく事にした。

 少し寂しい気持ちもあるが、致し方ないのだろう。


 そんな事を思いながらエリーの尖った耳をぼーっと見ていると、彼女は一瞬こちらを向いて顔を赤くした後、そっぽを向いてしまった。


 なんなんだ!

 そんなに鍛錬で形が変わった耳を見られるのが嫌なのか?

 俺だって柔術をやっていた高校時代に潰れた耳はそのままだぞ?


 耳の外枠のナンコツがこりこりしてて実に気持ち悪い感触なんだよな。






「エンカウントです。荒野狼ワイルドコヨーテの群れです」


 竜車内に知らせが入る。

 ラルドならその辺の魔物くらいはぶっこ抜いて置き去りに出来るんだけどな。

 まぁ魔物が魔物だしな。


荒野狼ワイルドコヨーテ

『デヴィスマック連合国の荒野全域を縄張りとする魔物集団。狡猾。遠吠えで長距離間の連絡を取り合い集団で狩りを行う』


 群れの規模によってハンターランクが変わって来る訳だが、ゴブリンやコボルトと違って個体の強さもそこそこであり、集団になれば余裕でハンターランクBを超える。

 有象無象という訳でなく、しっかりとした連携をして来る辺り、ずる賢いコヨーテである。


「規模は?」


 窓から顔を出して御者席のセバスのハザードに聞く。


「ざっと四十七頭、本腰を入れた狩りと思える」


「それでは私達は本腰を入れて狩られると言う訳ですね」


 ハッハ。ご冗談を。

 なんて雑談をしている場合ではないぞこの馬鹿執事と賢馬鹿。


「ラルドの調子はどう? 休ませておいて、俺達でコヨーテの相手をするが?」


「キュロロロロロ!!!」


「クボヤマ様、彼も気合い十分な様ですよ」


 久々の道中で、ラルドもテンションが上がっているのか、戦闘に参加させろと言った風に喉を鳴らしている。

 荒野の太陽に反射したそのエメラルドグリーンの竜鱗が眩し過ぎるよラルドさん。


 じゃ、馬車は走行したまま蹴散らす感じね。

 そのままひき殺してちょーだい。


 戦闘は、いつの間にかラルドの隣を走っていたフェンリルと、ユウジン、ハザード、ラルドが行う。



 コヨーテは後ろから追いかけて来る十頭。

 そして、前で待ち伏せする残り。


 獣にしては考えられているが、獣だな。

 後ろを担当するのはユウジンで十分だろう。

 ハザードも居るので完璧にオーバーキルである事は否めない。



 まず、ラルドが竜車ごと数頭を引き転がす。

 おいおい、耐久度どうなってんの?

 また壊れない?


 そして、横に飛び避けたコヨーテをフェンリルとハザードがそれぞれ喰い千切り、爆殺して行く。

 本当に便利ですね。その杖。

 あと、フェンリルが仕留めるごとにこっちを向いてガッツポーズを決めるエリー。


 …わかったから。



 凪は少女漫画を読んでいた。

 どっから出したアホ。

 お前なんでも有りか。

 変わったなお前。


 ユウジンは言わずもがな。

 器用に首だけ飛んだ死体が残っている。


「お前ら、コヨーテの皮売れるんだからちゃんと狩れよ」


「なんだユウジン。今日は一段とまともだな」


「最近刀の開発で金欠気味でな…なぁ、ブレンドからお金預かってない?」


「…いや、預かってない。売れ行きも落ちたんじゃない?」


 目を逸らす。

 今度ジュースでも驕ってあげようかな、ハハハ。


 結局使えるコヨーテの皮はユウジンが殺した十頭だけだった。

 あとは爆散、ミンチ、凍って台無し。


 みなさんお疲れ様でした。

 回復は任せてね。

 誰もダメージ受けてないみたいだけど。


 こういう移動戦では、本当に俺は使えないのである。

 聖十字セイントクロスは直線の攻撃だから遠距離じゃまず当たらんよ。

 だから牽制以外、直火アタックだし。



 そういえば、イベントの進路日程をすっかり忘れていたので。

 暗黒迷宮にはまだ挑んでいない。

 死にかけ損である。


 まぁ、強くなったんだけどね。

 それなりに。


 ちなみに、まだ誰にも言ってない。

 お披露目もまだなのである。

 順調な旅路だったしな!







 イベント会場である、クェス・アスダラス州の州立自然公園はまさに大自然って感じである。

 いや、生き残りバトル形式のサバイバルじゃないのか?

 違う様です。


 ガチサバイバル要素を取り入れているらしい。

 プレイヤー vs プレイヤー vs 公式の放つ強化モンスター集団。

 といった三つ巴合戦なんだとか。


 強化モンスターも一筋縄では行かない強さではあるが、ドロップアイテムが特別仕様だとかなんだとか!

 全開サバイバル予選、何も出来ないまま終ってしまった人が多かったので、そんな人達にも楽しんで頂ける様にね。


 もちろん、狙いはアレだぞ!

 優勝だ。


 サバイバルで生き残ったメンバー。

 得点上位8パーティーが決勝トーナメントへと足を進めるのだ。


 決勝トーナメントは、団体戦。

 パーティの戦略、連携が物を言うな。

 ハザードはもちろんロバストさんのパーティに行くのか聞いた所。


「俺は一度ギルドを抜け修行中の身だ。パーティには俺の代わりが既に居るだろうしな」


 と区切った所で。


「あれだ、良かったら俺も一緒に戦わせてくれないか? お前達と」


 そう言ってくれた。もちろんだとも。

 共に学園で高め合った仲間じゃないか。


 もちろん余計な波紋を生まない様にロバストさんには俺からこっそり話してある。

 っていうか、メル友なんだぜ。


 ロバストさんも一応推奨ギアは購入してあるんだと。

 何かしら、公式運営側からアクションがあると踏んでいるらしくてそれがあってから踏ん切るそうだ。

 ギルド引き継ぎとかそんなアクションの問い合わせは個人でしてるみたいなんだよな。

 公式からの反応は薄いらしいが。








「誰かが荒野駝鳥ワイルドランナーに追われている様ですが、救助に向かいますか? 今からですと間に合いますが」


 セバスから連絡が入る。

 車内の空気が一瞬張りつめる。

 皆の顔は満場一致っぽいな、助けよう。


「すぐ救助に向かおう!」


「畏まりました。ハザード様が先行して向かわれてます」


 窓から外の様子を見る。

 賢鳥に乗り、遠くに見える砂煙を追いかけるハザード。

 そのままドアを開け、走行中の竜車を伝って御者席まで行く。


「追われてるのは2人組の様ですね」


「見えるんだな」


「執事の嗜みですので」


 従者じゃなくていつの間にか執事になっている。

 まぁ、それで良いけども。


「ラルド! 全力だ!」


「キュロロロロロロロ!!!!」


 ラルドは吠えるとスピードを上げた。

 走竜種ランバーンの利点は、ある程度の速度なら保ち続け走る事が出来る体力と頑健で強靭なその体躯なのだが。

 走るのが得意な種族が、長距離走が出来て短距離走が出来ない筈が無い。


 久々に見るな。

 走竜種ラルドの全力疾駆。


 まるでクラウチングスタートを取るかの様に姿勢を低くする。

 走る事に掛けては、人間よりも長けているんだろうな。

 初めて見た時は、尻尾が御者席に直撃するので怖い思いをしたが、セバスが竜車と繋ぐ部分の長さを調節してくれているので安心だ。


 流石セバス!

 あっという間に追いついて行く。


荒野駝鳥ワイルドランナー

『荒野を走る飛べない鳥。翼は威嚇の為のもである。強靭な脚から出される蹴りには注意が必要だ。嘴も鋭く気性も荒い。だが、そのたまごは大きく濃厚で美味』



「ディメンション・石壁」


 ドゴン!と駝鳥と追われる二人の間に壁が出現する。

 慌てて停止する駝鳥。


「ラルド、速度を落として! 二人とも竜車に掴まって」


 速度を落とした竜車にしがみつく二人。

 そのまま再び速度を上げると、駝鳥との距離を引き離す。

 しばらく走り、竜車を止めた。ずっと掴まっているのもキツそうだったからな。


 丁度止まった時にハザードが戻って来た。


「ワイルドランナーはどうしました?」


「ああ、潰したよ。殺さないと死ぬまで追っかけて来るからな」


 なるほどね。

 そして竜車に掴まっていた二人を向く。


 顔面土汚れで、リュックを背負った男女であった。

 二人とも追いかけられた恐怖か、顔面蒼白だった。


「大丈夫ですか?」


 自動治癒オートヒーリングと掛けると、大分落ち着きを取り戻したみたいだった。


「あ、あんたってもしかして戦う神父?」


「ば、バトルジャンキーエクソシストの〜?」


 は?

 なんつー噂が広まっとんじゃ!


「私はただの神父ですが…」


「そんな事よりお前達、ワイルドランナーに何をした」


 ハザードが言う。

 一度追いかけると地の果てまで追っかけて来ると言われる荒野駝鳥ワイルドランナーを怒らせるなんて普通はしないそうだ。


「いやぁあの駝鳥のたまご、かなり美味って聞いてな」


「そうなのよねぇ! 美味なのよ〜」


 黒髪短髪で揃えた男が言い、金髪でウェーブの掛かった長髪の女がおっとりした声色で同調する。

 なんか気が抜けるな。

 さっきまで顔面蒼白だった二人なのに。


「あっそう…ですか」


「確かに、美味いと聞く」


 何とも、二人はハンターの中でも美味い物を求めて旅するプレイヤーだった。

 なにかのロールプレイかと勘ぐったが、本当にリアルでも美味しい物好きの夫婦だった。


 そして、リアルスキンモードプレイヤーである!

 重要だな。

 たまたまデヴィスマック連合国で小耳に挟んだ卵の噂をイベント会場に移動するついでに試そうと思ったら、気付かれてこのざまだったとか。


「ほら! ミキのお腹の音さえ静かだったら上手く行ってたんだって!」


「だ、だってケンちゃん! お腹減っちゃったんだもの…仕方ないもの」


「確かにそうだものな…おまえは昔から食欲旺盛だもんな、ま、そんな所が好きなんだけどよ」


「ケンちゃん!! 私もケンちゃんとケンちゃんの作る料理が大好きなの〜!」


 バカップル。じゃないや馬鹿夫婦。

 RSMPリアルスキンモードプレイヤーは馬鹿ばっかりか!!!!







 仕事が忙しくて1日執筆止まって申し訳ない。

 新キャラ登場。

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