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少し勉強してきたぞ

 ログインした。いつものごとく、教会の寝室である。

 これは、親を失った子供や浮浪者が一時的に寝泊まりできる様な場所として使われている物である。10畳くらいの間取りにシングルベッドが四つと小さな机が一つ置いてあるだけの簡単な作りだが、本が在る事に気付いた。

 こちらの世界の本はどうなっているのか。ってな具合で、ログインしてからとログアウトする前に少し読んでいる。


 ま、聖書の類いしか置いてないがね。

 死に戻りした時はなんだかんだ聖書を読むと落ち着くね!

 このまま行くと神父職まっしぐらって感じの俺のゲームプレイである。



 っていうより、このゲームの仕様をイマイチ判っていないのである。攻略本なんて売ってないし、サービスが開始したばかりのゲームらしいので、情報があまり無い。基本的なシステムはその他VRMMORPGとは変わらないらしいが。


 絶対違うと俺は思う。

 HP、MP、STR、DEX、VIT、INT、MND、AGI、LUK。スキルやレベルアップといったゲームらしい要素を俺は未だに体感していない。

 そして何よりMMOの醍醐味、パーティープレイである。


 神父服(神父さんから頂いた)で兎(東の草原の初期モンスターのラビット)を狩り続ける私は回りから見てなんと思われているのであろう。


 しかも、武器は未だ投石。皮は手で剥いでいたが、今は神父さんに借りたナイフを使っている。石で攻撃して、ナイフで止めを刺す。

 俺は一体何を目指してるんだ。そろそろと言っては良いけど、フラストレーションが溜まって来ている気がする。未だ件の友人から連絡は来ない。


 メールの返信には

『最初のレイドボス終ってからすぐ迎えに行く』

 と書いてあった。


 相変わらずゲームを楽しんでいるんだろうな。レイドボスってなにか判らんけど、とりあえずボスって事はかなり先まで進んでいるんだろうな。





 兎狩りが終ると、教会に戻って調理に取りかかる。今日は兎肉のシチューにサラダとパンである。教会には身寄りの無い子供達も住んでいるので少し多めに作る。

 なんでこんな事をしているのかと言うと。部屋や服を貸して頂く代わりに、教会の雑務を引き受けると言った話だ。


 まんまと神父として働かされている訳だ。

 だけど、特に不満を持っちゃいない。そこそこ狩りと言う物にも慣れてきたしね。あと俺は兎の肉を持って行くと子供達が喜ぶし、兎の皮で子供達の服を繕ってあげたり。


 悪くないじゃない。こんな生き方も。


 新しいプレイスタイルだな。なにせこのゲーム[RIO]は無限大だ。色んな可能性を秘めている事をひたすら感じるばかりだね。






 ログイン前に本を読んで来た。RPGの攻略本である。

 とりあえず、別の古いゲームの攻略本であるが、基本的な仕様は変わらないんじゃない?ってコトで熟読してきたぞ!


 効率よくレベルを上げるにはソロではなくパーティプレイが基本的らしいね。今までの俺はいわゆるソロプレイヤーだったらしい、最初は特に問題ないらしいが、新しいエリアを開放する為にはボスという物を倒さなくては行けないらしくて。

 ボスを倒すにはソロではほぼ不可能という事だ。


 あと、プレイヤースキルってのも気になった。ゲームのスキルなどを、無詠唱で行ったり、その他決闘などの対人戦で役に立つ物らしい。俺の場合ヒールを無詠唱で使えるようになった事もプレイヤースキルの一端だ。

 あっさり殺された俺からすれば、コレは鍛えない訳には行かない。護身術としてね。東の草原を駆け巡った俺からすれば、そろそろ初心者プレイヤーではなくパーティ可能なクラスのプレイヤーにはレベルアップしてるんじゃなかろうか。


 いやでも、少し恐ろしいな。トラウマが在る。怖いな。

 俺自身が未熟だったとは言え、人に殺される感覚はどうしようもない。

 ヒールを覚えてから死に戻りはほぼ無くなったが、より制限はされているだろうがリアルな痛みと絶望感は心に来る物が在るね。


 そう言う時は、この教会の大聖堂で祈るって心を清めるだけである。

 あれ、マジで、これは、神父になってしまったのか。


「ご熱心ですね」


 考えにふけっていたらいつの間にか隣に神父さんがいた。


「何か悩みでも抱えているんですか?」


「エリック神父。私はそろそろこの教会を出ようと思います」


 パーティープレイがしたいからな。それを聞いた神父さんは、言葉を選ぶ様に間を置いてから話始めた。


「それはあなたのご意志です。あなたは今までこの教会に多大なる協力をしてくれました。それは本当に感謝しています。ささやかな餞別ですが、私が昔使っていたクロスを差し上げます」


 あと、と付け加える様にエリック神父が言葉を紡いで行く。聖書の最初と最後に書かれている言葉だな。良く読むから覚えている。


「…では、行ってらっしゃいクボヤマ」


 エリック神父の言葉で、内側から力が溢れて来る様に感じた。


「私の祈りを与えました。精神力補正が付きます。あとそのクロスですが、あなたが思うままの姿を表します。私のお下がりですが大事に使ってくださいね」



 そういった形で俺の教会引きこもり生活は終った。

ただし、勉強内容は一昔前に2DMMORPGをした時の攻略本で。


うわさ話。


投石で弱らせて兎を仕留める神父様が居るらしい。

RIOのNPCの行動範囲すごすぎだろ。って広まっているらしい。


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