師匠の教え
ログイン前にユウジンからメールがあった。
遂にパーティ対抗イベントが行われるらしい。
その内容は、パーティ対抗のサバイバル戦。
よりポイントを獲得したパーティが決勝トーナメントに上がれると言う物。
※書きでリアルスキンモードプレイヤーもサバイバルのみ相互連絡のシステム補助適用がなされるとか。
サバイバルからトーナメントって前と一緒だな。
だが、定番。盛り上がるだろう。
パーティ制か〜。1人〜6人までのパーティで参加可能らしい。
集団戦からのトーナメント勝ち抜き戦なんて。
色々楽しめて燃える展開じゃない?
ログインした。
はいはい礼拝礼拝っと。
魔力展開はもうお手の物って感じ。
ピザの生地を薄く伸ばす様に、いや、例えがおかしいな。
とにかく薄く広くを極めて来たと言っても良い俺だが。
最近は趣向を逆にして、ひたすら密度を高くするという事に拘っている。
密度を高くすると、肌ギリギリに纏う事しか出来なかった。
一応、ハンタークラスの授業で初心者講義と言う物を受けて来た。
そして衝撃の事実が発覚する。
魔力を展開するとかいう魔術は無い!
全ての魔法は体内を循環する魔力を外にアウトプットする訳である。
一応いつもやってる瞑想はそれなりに鍛錬の効果があった。
俺のそこまで多くない魔力を外から補って循環させるという物だった。
だが、外の魔力を拾う為に魔力展開を必要以上に広げ過ぎると、元々持っていた魔力を練る機会が少なくなり、結果として体内の純粋な自分の魔力を練り上げる事が難しくなるらしい。
で、実際に自分の体内の純粋なる魔力を循環させ、水系初級魔法を唱えてみた。
水がチョロチョロ出るだけでした。
はは、マジで魔法に掛けては才能が無いな。
というよりも、今までやって来ていた魔力展開に慣れ過ぎて他の事がやりづらいと言った形だ。
仕方ないので、魔力展開は続ける。
もうそれしか無い。
利点もあるからね、魔力枯渇が起きづらいと言った点である。
俺の降臨もこの常識とは真逆の効果で行われている様なもんだしな。
そう悲観するのはやめておこう。
だが鬱憤は残るので、逆の事をしているのである。
魔力ちゃん、当たってすまない。
しばらくこのままで居させて。
密度を高くした所で、俺の魔力の低さからしたら、一般の方が身体強化するよりも劣っている訳で。
ただヌルッと少しだけ軌道を逸らす事しか出来ない様だった。
徒手格闘練習に付き合ってくれたハザードに「ローションみたいで気持ち悪いな」と言われた。
辛い。
この状態では聖書さんもクロスたそも常時手に持たないといけないからな。
マジで何も無い非常時にしか使う事は無いだろう。
まさに時間の無駄ってやつだ。ははっ…。
そのまま学校長用書庫に入り浸って読書でもしようと思っていたが、何となく気分が乗らないので辞めた。
中庭のラルドの相手をしていると、校内放送で呼び出しを受けた。
理事長室にお越し下さいだとよ。
一体なんなんだ。
「貴方には簡単な神聖魔法しか教えてませんでしたからね。良い機会です、少し個別トレーニングをしましょうか」
理事長室に行ってみると、そう言われた。
口調がどことなくノリノリであるこの神父。
エリック神父はその白地に青いラインの入った神父服を翻すと、指をパチン。
理事長室の例によって聖書しか並べられていない本棚がゆっくりと開いて行く。
漆黒の壁にゲートが浮かび上がった。
なんじゃこりゃー!
こんな仕掛けが理事長室に隠されていたなんて…。
ってか理事長室なんて呼び出さない限り誰も来ないだろうが、応接室があるしな。
普通にゲート開いとけよ。
「私の特別部屋です。と、言うより中央聖都ビクトリアの特別部屋に繋がっていると思って頂ければ結構です」
ポータルとはまた違った長距離転移門の様だ。
ゲート自体の技術は元からあるらしい。
ヒューズから聞いた。
特殊な材料の壁にゲート用の魔法陣を書くと出来るらしい。
ポータルは、ゲート程の長距離は移動できない物の地面にゲート用の魔法陣を描くだけで設置可能な分、革新的なアイデアだと言われているらしい。
ゲートの壁用の特殊な材料はこれまた驚く程高いんだとか。
そうするとだね。
学校長用書庫なんか、どこぞにそびえ立つ塔に繋がっているんだろうな。
あれ?
それを見つけ出せば頂部にあるランクで言うとSSSランク。
原典クラスの魔本まで空が飛べればひとっ飛びで行けるんじゃないか?
いや、無いな。
あの学校長だ。
絶対何かしらの対策を施しているに違いないだろうな。
ってか塔一つ持つなんて何者なんだ。
もうゲートは書庫への移動で慣れた物だ。
そう思って入ろうとすると顔面を強打した。
「あ、申し訳ありません。許可を忘れてました。はい、どうぞ」
・・・。
いつか、なかす。
ゲートを抜けると、小さな部屋だった。
観葉植物と丸いテーブルに丸い椅子が置かれてるだけの簡素な部屋。
テーブルの上には一冊の聖書が置かれている。
「ユニークな戦い方ですよね」
そう言うと、テーブルの上の聖書が浮いてエリック神父の肩の上に。
「私も少し勉強させて貰いましたね。いやぁ、良い弟子を持つと師である私も成長できるものですね。メリンダが羨ましかったですよ」
そして、彼の胸元から一つのクロスが浮かび上がり開いた聖書と重なり頭上に上がる。そしてエリック神父は白い光に包まれる。
「それは…」
「これにはある意味で驚きました。常識に逆らった鍛錬を続けた結果でしょうね。回りの魔力を法力に変換し、神聖魔法として利用するなんて、降臨でしたっけ?」
神父から輝きが消える。
あ、どうでもいいことかもしれないけど。
神父の栗色の髪の毛が白い光に包まれて逆立つと、まさにスーパーサ○ヤ人だった。
「ですが、勿体無いですよ。貴方のは無理矢理、神の力の効果の一部を引きずり出しているに過ぎない。聖書をクロスを重ね掲げるという事は、神との対話を意味します」
浮遊させ、開いた聖書の上にクロスを持って行く。
聖書とクロスが光り出す。
まさにファンタジーだ。
聖書に書かれている文字が、浮かび始め光り出す。
聖書を読み上げる様に連続して流れていく文字達。
それに呼応する様にエリック神父の白地に青ラインの入ったクロスもクルクルと回り始めた。
「初めに、神聖魔法と言う物は何かを媒介にしなければなりません。それはなんだと思います?」
「聖書とクロスですか?」
「違います。それは、貴方自身の意思です。深く、深く女神を、人を愛したものだけに、女神は答えてくれます。それを信託と言います」
余程の修行が無い限り、信託と言う物は降りてこないそうだ。
聖書とクロスはただの補助だそうだ。
「貴方は本当に聖書とクロスを親身に思っていますね。信託は簡単に成功してしまうでしょう。ですが、私も新たな発見をしました」
神父はドアを明けで外に出る。
俺も後を追うと、そこは何も無いただ広い空間だった。
その中に二人で立っている。
「信託と降臨を掛け合わせると、不安定だった降臨が不思議な事に一本にまとまったんですよ」
それは凄かった。
輝く聖書の文字が流動し神父を包んでいる。
この感じ、何かに似てる。
ってかここの雰囲気も何かに似ていたんだが、何だろうな。
あ、鍛冶神の神殿だ。
一切のおふざけが許されない様な空間。
もしかしたら、女神の神殿なのか?
女神の神殿がプライベートエリアだとしたら、この神父ヤバイ。
「ここは女神の神殿ですから、やっぱり素晴らしく安定しますね」
当たってたよ!
「これは根本の力。神時代の魔法だとアウロラは言っていました。なので私は貴方の降臨を真似てこう名付けました顕現と」
「ル、顕現ですか…」
神父が中二病になった大変だ。
遅過ぎる発病は質が悪いらしいぞ!
たしかに似ているな。
あの時と、鍛冶神が俺を助けてくれた時の小さな炎の暖かさと。
エリック神父の発する輝きは、俺を優しく包んでくれている。
もう神々しいったらありゃしない。
「貴方も何かの由縁で神を現世に呼び起こした事があると聞きましたよ。その時の感覚を思い出してください」
なんで知ってるんだこの神父は。
鍛冶神を現世に呼んだ事、そして偽女神像をマグマにドボンした事も知ってるのかな。
やべぇ、振り回した事も伝わってんのかな。
鍛冶神の野郎、チクりやがったな!
「では、改めて修行です。今からこの状態で貴方を追い込んで行きますので、頑張って顕現を覚えて私に一撃でも報いなさい」
・・・は?
「因に女神は私のですから。他のにしてくださいね」
「だったら何に頼れと言っているんですかッ!」
ガチで殴り掛かって来る神父。
俺はヌルヌル魔力でヌルっと避ける事が出来た。
「また面白い物を開発していますね。ですが、今の私は神級神聖魔法である聖光を魔法陣必要とせず無詠唱で放つ事が出来ますよ」
降臨!
とにかく、やらなければならない。
ってかギリギリ紙一重で避けれる攻撃をして来るなんて、この神父は楽しんでるんじゃないだろうな。
この状況を、俺をいたぶる状況を!
なんつー神父だ!
規格外にも程があるだろう!
因に、せめて信託を実現させて、顕現状態までの練習をさせてもらってからじゃダメですかと息も絶え絶え提案してみたが。
「そんなのこっちが面白くないじゃないですか」
ニコッと返された。
何がちょっとトレーニングだ!
思いっきり超必殺技じゃねーか!!!
ぐわあああああああ!!!!
念動と言う物は、念話と同様。
物と魔力のパスをつなげて自在に操ると言う物でした。
魔力で搦め捕って操るなんて、非効率過ぎます。力技です。
クボヤマはアホでした。
少しはファンタジーの世界について勉強したら?笑
と凪当たりに言われそうですね。
かく言う凪も常識に当てはまらない魔術ばかりですが…
スーパーサ○ヤ人2でました。エリック神父も成長しているってことですね。




