特待クラス
グリモワール魔法学校に晴れて入学した俺達な訳だが、ハンタークラスは新米ハンターからそこそこのランクまで登ったハンター、商人を目指す若者やら商人をしている若者など様々な人が居る。
もっとも、これはハンターなどで他に仕事をしている人等が利用するクラスであって、他にもクラス分けはされている。
かなり沢山クラスがあったので覚えきれなかった。
俺はアリアペイを持って初回講義に参加した。
オリエンテーションだな。
この学校の説明を改めて行うらしい。
この時期に入学した階段教室に集まる生徒達に向けて、ハンター協会の方々や魔術講師達の紹介が行われる。
ほうほう、図書館の立ち入りは自由。
貸し出しもアリアペイに借りる本を登録する事によって可能にしていると。
実に興味深いな。
俺の中でアリアペイは図書カードとして機能する事になるだろう。
開幕オリエンテーションな訳だが、校内を回る前に集団面談を行うそうだ。
そんなもん入学前に終らせとけよ。
って思う訳だが、まぁ皆仕事を持ってるので全員参加が義務づけられてるこの講習でまとめちゃう方が都合がいいのだろう。
俺達5人は、入学を申し込んだ時が一緒だったので、運良く同じグループでの面談だった。
面談の相手は。
右からグリム学校長、エリック神父、バレル教頭、カサドハンター組主任だった。
・・・はい?
「…お久しぶりです。クボヤマさん」
「おぉ、彼が君の愛弟子か!」
ニコッとしながら、微笑む神父に隣の学校長が身を乗り出す様に俺を見ると話しかける。
「儂の事は覚えておるかな?」
「ごめんなさい覚えてないです」
本当に記憶に無い。
それを聞いて、少ししゅんとする学校長をエリック神父がフォローする。
「まぁあの時は彼も緊張していましたしね」
「では改めて初めましてじゃの。儂がここの学校長グリム・グレムじゃ」
「あ、はい。初めましてクボヤマです。っていうかエリック神父、何故こんな所に?」
「それは私がこの学校の理事だからです」
・・・は?
教頭もハンタークラス主任も、俺が停止している隙にという感じで挨拶を挟んで来る。
いや、色々衝撃過ぎて理解が追いついていないんですが。
よし整理しよう。
えっとここは魔法学校で、エリック神父は理事だからここに居ると。
よし理解した。
「はい、理解しました」
「早いですね」
「今ので早かったのか? 儂には思いっきりついて行けてなさそうに思えたが…」
くそ、好き勝手言ってくれるぜ。
次は絶対驚かない。
絶対だ。
「よし、君らは面談免除じゃ、単なる顔合わせじゃったからな」
これからが大事な話しなんじゃがな、と学校長は続ける。
因みに面談、俺以外一言も喋っていない。
これの何が面談か!顔合わせか!
ただのドッキリじゃねーか…。
「君らの実績はハンタークラスではなく、ウチの特待クラス並みじゃ。なので特別待遇クラスへの移動をお願いできんか?」
で、でた〜!
特別待遇ゥ〜〜〜〜!
エリック神父、流石にいくらなんでもそんな事をお受けする訳に行きませんよ。
どうせ図書館を利用するだけだったので、特待クラスなんて。
ただ名前があるだけにしか思えないし、俺が居ても何の意味も無さそうだ。
「失礼ですが、私は従者なんですがよろしいんですか?」
「セバスチャン君だったかな? 君は従者としての登録であるならば可能じゃ」
セバスはそれを聞いて安心していた。
おいセバス。
それはお前、特待クラスの実力は無いと言われてんだぞ。
気付け、従者でいれれば何でも良いのか?
何でも良さそうだな。なんでもねーよ。
「それは俺もいいのか?」
ハザードがでる。
なんかみんなやる気だな。
使えるのもは何でも使っとくスタイルか?
それにはエリック神父が答えた。
「君はメリンダきっての頼みですからね。魔女の弟子、賢人ハザードさん」
「メリンダ師匠が……」
あのおばあさんが、誰かに頼み事なんてね。
ハザードさんは余程気に入られてたんだな。
ってか、いやいや。
えええ。なんだかなぁ…。
「なんだか煮え切らない様ですね? クボヤマさん」
「当たり前ですよ。いくらエリック神父のご好意でも、私には身に余ります」
そう答えると、エリック神父はため息をついた。
「素直に親の行為として受け取ってほしいんですがね」
「いえ、確かに神父の元に来て凄くお世話になりましたが…」
過保護ですよ!神父!
他にも私より才能のある人が一杯居ると思うんです。
「まぁ、それが貴方の良い所なんですけどね」
ひと呼吸置いた所で、エリック神父は口を開いた。
「貴方達の—「特待クラスには、己の魔法を自由に研磨する事を承認しておる。その方が伸びる奴らなのでな。君らにももちろんそれが当てはまる」
「グリム。今は私が—「じゃが、レポートを毎回提出しなさい。期限は卒業するまでじゃ。依頼として受け取ってくれればよろしいかのう」
エリック神父の言葉を遮って、学校長が言う。
ああ、もしかしたら凪の世界大全を知りたいんだろうか。あれがレポートで発表されたら、魔法常識が覆ると思うんだが。
凪は良いのだろうか。
見てみると、「図書館…魔法学校の、図書館…」とトリップしていた。
結局なあなあになって俺達は特待クラスへの移動が決まった。
入学初日の出来事である。
まぁいいや、図書館に行けるなら俺は関係無いし、幸い決まった授業等は無く、自分で学びに行くハンタークラスと変わらないみたいだしな。
レポートが面倒だけど。
だがそれを比べるまでもない程の待遇が特待クラスには用意されていた。
まずは寮である。
豪華ホテルかよ。
そして研究施設等は独立していた。
なんともよく壊してしまう生徒が特待クラスには多かったそうなので、共用にすると他の生徒に迷惑がかかるだとか。
因みに寮が豪華なのも。
他の一般寮の生徒に迷惑をかけない為に離し居心地を良くしているのだそうだ。
何とも、昔悪魔召喚の儀を一般寮で行った馬鹿が居るんだとか。
いや、天才とも天災とも言えるかもしれん。
とにかく、馬鹿と天才は紙一重だと言われる由縁が判るクラスだと。
で、興味を引かれるのはやはり図書館である。
世界の本という本が集まるグリモワール魔法学校の図書館は凄い!
と資料にも書いてあったが。
特待クラスのアリアペイは、その図書館にプラスして学校長用書庫が開放されているらしい。
書庫はやはり、寮の中だった。
どんだけ一般生徒から隔離したいんだ。
自由にやらせるとか行ってたけど、癇癪起こして一般校舎を破壊した生徒が居たとかいう話しじゃねーか!
本音の建前の壮絶な温度差を感じました。
耳がキーンとするね。
だが、その学校長用書庫は半端無かった。
素晴らしい!
寮の奥にある頑丈な漆黒の扉に特待クラス登録のアリアペイをかざすと、ゲートが開く。
ゲートが開くのも驚いたが、恐る恐る中に入ってみた。
360度、漆黒の扉を囲う様に、ずらっと巨大な本棚に並べてある本。
本。本。本。
例えるなら本の塔だな。
かなり高い所にまで本を置いてるみたいで、上の本を取るには建物の内枠に沿ってついてある階段か、梯子を使うしか無さそうだ。
空を飛べれば楽なんだが。
図書カードがグレードアップした。
そう捉えておこう。
だが、ここにインテリジェンス。
俺が求める物についての答えが必ずある様な気がした。
とにかく、特待クラス。
規格外が多そうである。
ってかキャラクターが濃さそうだな。
特に、特待クラス用の修練会場とか、苦労して作ったらしい。
絶対壊れない事に着目したんだって。
床と壁は超硬度に錬成した一品。
どっちも幾重にもはられた特級結界が張ってあるそうだ。
そして、自動修復付き。
動きを阻害する超重力魔法発生装置。
一般生徒が紛れてしまった時の為の蘇生装置もあるんだって。
その結果、まだ一度も壊された事の無い施設だとか。
何が『特待クラスはなかなかしなんから大丈夫』だ。
俺の中で特待クラスの扱いが、どんどん危なっかしい物になって行く。
Sクラスと略称されているが、これはあれだろ。
サドンデスのSだろ。
どうせ、Sクラスに関わると突然死するから気をつけな。
とか流行ってんだろ。
流石にそんな事はないか。
何にせよ、少し心構えを持っておいた方が良いな。
だが、エリック神父には感謝です。
学校長用書庫だけでも、ありがたいです。
どうか死なない様に頑張ります。
俺には聖書さんやクロスたそ、魔力ちゃんが居るから。
ちょっと一発祈っとくか。
ふぅ…。
彼女達となら、こんな変態集団の中でも頑張って行けそうです。
「これで良いじゃろ、皆ユニークな研究をしてくれそうじゃしな」
「まぁいいでしょう。彼ならきっと気付くでしょうし」
「これはハンタークラスからの移動なので、カサド主任に任せます」
「教頭それは!」
「私は他の特待生も見ているんですよもう見きれませんって」
「ほっほっほ! 今年は皆元気がいいわい」




