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鍛冶の国『エレーシオ』

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 ここは鍛冶の国『エレーシオ』の宿屋である。


 俺達は坑道の一件の後、無事にエレーシオまでたどり着いた。

 マグマで坑道を一つ潰してしまった事については、悪魔鉱人形デモンゴーレムの事を話すと、納得してくれた。

 アダマンタイトがまだ眠っているかもしれないぞ、と鉱夫達のやる気に繋がっていた。


 俺はてっきり、マグマでおじゃんになってしまったかと思っていた悪魔の憑依していたアダマンタイトだが、ちゃっかりユウジンが拾って来ていた。

 あの喧騒の中、本当にこういう事に関してはちゃっかりしている。


 で、エレーシオについた途端。

 彼はアダマンタイトを持って鍛冶屋に向かっていった。


 俺はというと、一先ず教会に行ってみた。

 気になるのは、この国の奉る神についてだ。


 あら?

 教会は普通に女神像が置いてあった。

 普通にヴァルカンの像があるのかと思っていたが、そうでもないのか?




 本日も教会の女神像の手前で礼拝を済ます。

 女神様申し訳ございません。

 偽女神像アウロラレプリカは、ヴァルカンにあげてしまいました。


 破壊不能属性だとあっても、神顕現なんてものに使用すると消滅しちゃうんだな。

 失ったが、後悔はしていない。


 反省はしている。

 俺が弱かったからだ。


 ヴァルカンに助けられたからなんとか生き残ったものの、それが無ければ俺は確実にあの悪魔に殺されていたと思う。

 聖火バラだって、強い意志を込めるだけに簡略化された物を譲り受けて発動しただけだった。

 あとで、坑道の雑魚魔物に向けてバラを唱えてみたが、発動しなかった。


 発動条件は何なんだろう。

 改めて、魔法と言う物を探るべく、魔法都市アリアへと急がなければならない。


 が、しばし鍛冶の国を楽しむのも良いな。

 職人の街って意外と良いよね。


 鍛冶の国エレーシオは良いな。

 国の名前になった街エレーシオと鉱山の傍に出来た坑夫の街があるだけの、規模としては小さな国なのだが、街を支える人がほぼ職人気質なので、洗練されたその街並は『シンプルイズベスト』を体現してると言っても良い。


 そうそう、この煉瓦とかふんだんに使用した喫茶店とかね。

 ガラスも質がいいし、ほとんどの建物で使われている。

 この世界にもガラスの技術はある。

 ただし、都市部以外はあまり使われていないといった形だ。


 田舎の村なんかに行くと、窓ガラスがあったとしても外は見えない程質が低いか、木の窓だ。

 察するに、魔法都市が隣にあるからかもね。

 透明なガラスを作るんだ、現代で言うガラス工場の工程を魔法で担ってるに違いない。


 そう思いながら俺はコーヒーを飲み終えると、喫茶店を出て、ユウジンが通っている鍛冶屋で向かう事にした。

 差し入れは、喫茶店で買ったサンドウィッチである。





 ユウジンの通う鍛冶屋は、始まりの街で鍛冶屋を営んでいた親方の師匠さんのお店である。

 職人気質の中でも一際頑固そうな人だった。


 多くの鍛冶屋が武器以外の物の鋳造だったり、弟子を沢山取って量産体勢を作る等、時代の波に乗ろうとしてる中、その親方の師匠さん。

 グラノフという方なんだが、個人向けの武器職人というスタンスを崩さずに、武器は魂込めて自分の手で打つもんだ、という古き良きを愛する人。

 べつに農具とかも手で打ちゃいいんだが、生涯武器職人宣言している。


 いいね。

 そう言うのは好きだよ。

 終身名誉武器職人の称号を与えよう。笑


 いや、馬鹿にしてる訳じゃないよ。

 実際に腕は素晴らしい物だったし。


 自動で形を変化させる金属があるのかと尋ねてみたが、そんなもの知らん。

 形を変えるのも決めるのも俺だと結構キツめの声であしらわれた。


 いや、怒ってる訳じゃないよ?

 断じて怒ってる訳じゃないよ?


 くそが。

 グラノフ氏に神のご加護があります様に。




 件の鍛冶屋に入る。

 グラノフ氏とユウジンは、アダマンタイトをどうやって武器作成に活かすか考えていた。

 その辺の話しはついて行けないのでスルーしている。


「差し入れ持って来ましたよ、調子はいかがですか?」


「おう、ありがとな」


「ケッ、柔な神父が何のようだ。ここは鍛冶の国だ、鍛冶神ヴァルカン様の国だぞ」


「まぁまぁおやっさん」


 こんな風に当たりが強いのである。


 ここで気付いたのだが、鍛治師の中でも職人歴が長い、または鍛冶屋の歴史が長い所の鍛冶師は鍛冶神ヴァルカンを崇めていた。

 鉱山の中に神殿があったのも、鍛冶の国がその山の麓から広がっているのも、関連付けは出来ない事も無いな。


 ってか神殿を作ったのは、大昔のドワーフそれで間違いないだろう。

 あの神殿の建築技術は、素人の目から見ても人間が作った物には見えなかった。

 なんだろう、雰囲気と言う物を感じたよね。


 まぁ、宗教問題とは現実の世界でも世界大戦に発達しているものだから。

 当たりが強いのも仕方の無い事だと思っている。


 一旦休憩という訳で、三人でサンドウィッチを食べる。

 どうだ美味かろう。

 あの店の名前何だっけな、見て来るのを忘れたから今度また行こう。

 そんな事を考えていると、お店のドアが勢いよく開かれた。


「親父! いい加減こんな小さな鍛冶屋辞めて、ウチに来いよ!」


 入って来たドワーフ族の男性は、グラノフ氏の事を親父と言いながら店の中に入ってこようとする。


「何しに来やがったこのタコ! てめぇにウチの敷居を跨ぐ資格はねぇ!」


 対するグラノフ氏は、息子と思しき男性に金槌やその他工具を投げつける。

 危ないなおい。


 堪らず、ドワーフの男性は逃げ帰って行く。

 一体なんだったのか。


「おやっさん…」


 ユウジンが誰もいなくなった入り口とグラノフ氏を交互に見て何とも言えない表情で溜息をついた。彼もこの場面に何度か遭遇していたのだろうか。


「一体どうしたんですか」


「ケッ! てめぇに教える筋合いはねぇ!」


「おやっさん。それとこれとは話しが違うだろ」


 ユウジンがそうなだめると、グラノフ氏も判っているのかポツポツと話し始めた。


 グラノフ氏の息子は、街でそこそこ大きな鍛冶屋を開いているらしい。

 弟子も沢山取り、鋳造メインで農具、工具、武器、鉄製なら何でも作っているそうだ。流行と言う物を大事にし、鍛冶職人というより幾分商人気質な質だという。


 まぁ、それは良い事だと思うぞ。

 グラノフ氏も、頭の中では理解しているらしい。

 自分のやり方は古いんだと、だがどうしても受け入れる事が出来ないんだとか。


 まぁ単純な問題、住み分けすれば良いと思うんだがな。

 そして最近になって、息子さんは宗教を変えたらしい。

 それでどうしても俺に辺りが強くなってたと。

 ああ、なるほどね。


 グラノフ氏が言うには、ドワーフは鍛冶神を崇めないと良い鉄が打てなくなるらしい。ドワーフの国に鋳造なんかが流行っちまって、人族の真似事かと嘆いていた。


 話しを聞けば聞く程、なんだかんだ込み合った背景が見えて来た。

 そしてその原因とも言える側の人族が、すぐそばに居るのだ。

 そりゃ虫の居所も悪くなるだろうな。


 俺はどことなく居づらい空気に退散した。

 もうグラノフ氏のお店に行くのは止そう。

 火に油を注ぐばっかりになってしまうしな。


 何となく悲しい気持ちが湧いて来たので、とりあえず自分を落ち着かせる為に教会へ行こうとしていると、後ろから呼び止められた。


「おい、あんた。親父の店に居た神父だよな? ちょっと話し良いか?」


 あ、さっきの息子さんだ。

 ではお店に入って話しましょうかと、俺は先ほど行った喫茶店に再び戻って来たのである。


「このサンドウィッチ、親父が手に持ってた奴ですね」


 出てきたサンドウィッチを見て、グラノフ氏の息子である、グランツ氏が呟く。

 意外と見てるんだな。

 彼は俺の名前を聞くと、敬語になった。

 ここまで名前広まっちゃってんの…?


「そうですよ。少し前に寄って、美味しかったので私が差し入れに持って行ったんですよ。ほら、職人さんって集中すると食べないじゃないですか?」


「はは、確かにそうですね。でも、ありがとうございます。親父は元気にしていましたか?」


「ええ、私の友人がお世話になっています」


「へぇ、何をしているんですか?」


「武器を作る話し合いをしているらしいですよ。まぁ私は話しについて行けませんがね、アダマンタイトがどうとか」


「アダマンタイト!? 神鉄と呼ばれる希少鉱石じゃないですか。ああ、そう言えば南の坑道でアダマンタイトのゴーレムが出たとか出なかったとか」


 話しは伝わってるんだな。

 まぁそこそこ大きな鍛冶屋を構えるんだ、情報が来るのが早いんだろう。


「アダマンタイトですか…確かに今では親父くらいしか打てる人が居ないかもしれませんね」


 だが、と彼は夢を語っていた。

 いずれは鋳造でも技術を確立して、さらにグランツ鍛冶屋を大きくさせるんだと。


 彼も彼也に、父親を追っているんだな。

 まぁ、不器用なグラノフ氏の事だ、本音を言えないんだろう。


 俺は彼の話しを聞いてそう思った。

 だが、親子の問題に口を出す気持ちは無い。

 余計なお世話になってしまいそうだからな。


「そういえば、何故、鍛冶神ヴァルカンを崇めるのを辞めて、鞍替えしたんですか?」


「ああそれですか? 新しい技術を取り入れるためですよ。歴史的には私たちドワーフが人族に鍛冶の技術を伝えて来ましたが、時代は移り変わりますから。これからは手を取り合うべきだと思っています。だから私は知る為に鞍替えしたんですよ」


 何もそこまでする必要は無いのに。

 でも、本当に商人みたいな聡さだな。

 そう思っていると彼は続ける。


「って言うのは建前で、本当は店を大きくする為の販路と資金作りの為だったんですけどね」


 そして俺の目を見て言う。


「実を言うとお願いがあります。私の店の為にどうかお力添えを頂けないでしょうか?」


 ん?なんだ。

 俺が出来る事なんか、祈るくらいだぞ。



「中央聖都ビクトリアへの販路を作る為に協力をお願いしたいのですが」








 因みに偽女神像アウロラレプリカに書かれている通り。

 中央聖都ビクトリアの大教会の女神像アウロラシンボルに持って行くと、聖光レイを習得できるお告げを女神様から直接頂けます。

 浄化の光ですね。

 でもあくまで、習得できるお告げを聞く事しかできませんが。

 聖火バラとの性能の差もありますよ。

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