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別れ、そして坑道の魔物

 アラド公国北の国境の砦は、アラドとヴェントゥを縦断する運河の傍にあった。この運河のお陰で、ヴェントゥとアラドの結びつきは強い物となっているらしい。

 やっぱり航路で行けるようだ。

 乗ってみたいな。


 だがそこまで大きな船ではなかった。

 これじゃラルドは乗らないな。諦めよう。


 代わりにラルドには川沿いの道を走ってもらう事にした。

 景色を眺めつつ、旅を続けよう。

 時折出現する川辺の魔物を蹴散らしながら進んで行く。


 う〜ん。

 御者席に居るセバスの隣に座ると、まるで風の中に居る様な気持ちになる。


「風が気持ちいいな」


「でしょう? 私も御者特典だと思っておりますよ」


 まったく羨ましいぜセバス。

 雨の日には大変だろうけど。

 雨外套を来てラルドを駆ける姿は本当に従者の鑑だよ。




 さて野営だ!

 旅商人用の野営施設があったのでそこを利用している。

 ある物は使っとかないとな。


 この世界、結界とかあればいいのに。

 まぁ野営中の見張りも楽しみであるし、重要な修行タイムであるが。


 夕食は、川で釣って来たらしいコモンフィッシュのソテーだった。

 淡水ならどこにでも住んでいる魚らしい。味は普通。


 そう言えば、以前アラド中央都の朝市にてマグロの様な巨大な魚を目にした事がある。

 大型回遊魚スピードチューナと行って、世界の海を回る魚らしい、たまったま川に迷い込んでいるのが穫れたんだとか。

 もの凄い高値がついていた気がする。


 海が遠いからな。それとも、かなり美味なのか。

 気になる所である。



 夜食は、ラビット肉のシチューだった。

 ラビットの肉まだ残ってたのな。


 定番である。

 俺には、始まりの街の教会で作り続けた思い出のある一品だ。

 セバスが作るラビットシチューは、当然俺の作るシチューより美味い。


 俺だって子供達には美味しいって言われたんだぞ。

 本当だぞ。


 各々が野営の時間つぶしを始める。

 俺は瞑想だな。


「クボヤマ様、少し良いでしょうか?」


 なんだ?

 俺は一端瞑想をやめる。


「誠に申し訳ないのですが、私達、ヴェントゥについた辺りで現実時間で1週間程お暇を頂きたいと思います」


「……テストか」


「はい。誠に申し訳ございません」


 いやいや、そんな畏まって言うなよ!

 なんか怖くなったじゃないか。

 彼等は学生だったな。それも仕方ないだろう。


 現実時間で一週間か、RIOの世界ではそこそこ長い期間になる。

 ん〜それまでヴェントゥで待っているってのもな。


「ユウジン、ちょっといい?」


「なんだ?」


 一端素振りを止め、こっちへ来るユウジンに事の顛末を話し、これからの事を決めた。


 俺とユウジンはヴェントゥから徒歩で北を目指す。

 で、テスト期間が終わったセバス達は竜車で俺らの後を追うそうだ。


 まぁ竜車はセバスが交渉して手に入れた物だし、いいんじゃない?

 もし俺らがバラバラになったとしても、俺は別に徒歩で良いよ。


 凪もエリーも十分強いからイレギュラーが無い限り早々負けないと思う。

 無理して俺達と同行しなくても良いと思う。


 鍛冶の国へついたら俺はユウジンと別れて単独行動で魔法都市まで行く予定だったから。





 そうして夜も更けて行く。

 幾つかの村、街を抜け、俺達は泉の国ヴェントゥの首都についた。


 大きな泉の外周を囲う様に街が出来ていて、泉の真ん中には城がある。

 カリオス○ロの城だな。

 観光マップを見てみると、カリオス城だった。


 広大な泉の外周を街で囲むなんて凄く不便じゃないかと思ったが、交通手段はほぼ船らしい。

 点在する街を時計回りと半時計回りに順繰り回っている船が何隻もあるのだそうだ。

 良いアイデアだね。

 さっそく、教会へ向かう為に乗る事にする。


 もちろんエリーと二人でだ。

 今日が終ればしばらくお別れだからな。

 なんとなく名残惜しいが、テストで良い点とれる様に俺も祈っておこう。


「師匠、船デートデスネ」


「…そうだな」


 最近、二人で歩いているとしょっちゅうこういう事を口にする様になった彼女を俺は船から見える首都の街並から目をそらさずに軽く流す。


 まぁこんな風に軽い調子であるなら。

 俺も変に真剣に考える必要も無いだろう。


 もしその時が来たら、今の俺には無理だろう。


「テストが終ったら、すぐに追いつきマス」


「行き先は魔法都市と鍛冶の国だ。その辺はセバスに話してある」


 何かあれば念話してくれれば良いし、ログイン前にメールを入れてくれれば良いからな。

 彼女は「ハイ」と一言。

 少し悲しそうな目で景色を見つめていた。


 そして、俺とユウジンは特にヴェントゥで特に観光をする訳でもなく、すぐに北を目指して進み出した。












 二人旅も恙無く進む。

 ヴェントゥから北へ航路で北上し、俺らは今、鍛冶の国の一歩手前であるモータニア山脈の坑道手前の村に来ていた。

 ラルドが居る時であれば、山脈を東へ迂回して、そこの国を経由して行けるのだが、徒歩でなら坑道が近道なのだ。


 それと同時にとある依頼も受けていた。

 俺の噂はこんな所にも広まっているようで、手厚い歓迎があると同時に。


 坑道に得体の知れない魔物が出没して、困っている。

 それをどうにかしてくれという依頼だった。


 坑道としては使えない事も無いが、新たに見つかった鉱脈へと繋がる坑道を封鎖する事になって、採算が取れずに困っているそうだ。

 事情を知らない鍛冶の国の職人達から催促が届いていてもどうしようもないと。


 依頼の報酬は、鉱山の魔物の鉱石でいいらしい。

 鉱山で産まれる魔物は、その身に鉱石を宿しているそうだ。


 もう人が何人も殺されている状況を考えると。

 かなり厄介な魔物が潜んでいると予想できる。


 そうすると、その身に宿す鉱石も、かなり貴重な物になるとかなんとか。

 本当かな。

 まぁ、断るとエリック神父の顔を潰す事になるので受けるけど。


 ユウジンも珍しく即答で了承したしな。

 鉱石は別にいらないからユウジンにやるよ。


 そうして俺らは坑道へと足を伸ばす。

 「ここがそうです」と言われる。

 鉄製の頑丈な扉がある。

 坑道の職員が、扉の鍵を外して行く。


 一体何個付けてんだよ。



 ズズズ。と重たい音を発しながら扉が開いて行く。

 俺とユウジンは薄暗い坑道へ足を踏み入れた。


 どっちも辺りを照らす様な魔法を持っていないので、俺が松明を持っている。

 坑道の壁に、松明が照らす二人の影がゆらゆら動いていて凄く不気味。

 そう言えば俺、怖いの苦手なんだよな。


 リアルで一度占い師に、君は霊感は無いけど霊を殴り倒すエネルギーはあるよ。

 なんて言われた事がある。

 信じた事は一度も無い。


 ヤバいな。そう考えると凄く怖くなってきた。

 今の俺はMND系のデバフが掛かっている状態。

 聖書さん読もう。力を貸してください。





 ふぅ落ち着いた。


 坑道は下り坂になっていた。

 これ、入り口付近で崩れたら、俺らは確実に死ぬよな?


 いかんまただ。

 不安な事を考え出すと止まらなくなる。

 聖書さん助けて。


 埒が明かないので、常に聖書さんとクロスたそを両肩に浮かせてます。


「なさけねーな」


 うるせーな。

 コイツはコイツでなんで平気なんだろう。

 あれか、霊感ないからか?

 達人ならその辺の感覚とか研ぎすまされてそうだけどな!


 魔力が斬れるんだから、もしかしたら幽霊だって斬れるのだろうか。

 ありえるな…。


 あー怖い。洞窟怖い。

 狭い所無理だわ


 そんな時、俺の魔力が何かを感じ取った。


「ユウジン、何か居るぞ」


「俺は今の所何も感じないけど?」


 いや、確かに感じる。

 しかも後ろからだ。


「……!? 後ろ! ユウジン後ろ!」


「む!? …って何も居ないじゃんか、驚かせんなよ」


 二人で後ろを振り返るが、何も居なかった。

 おかしいな、確かに気配はあったんだが…。


「ってかなんだよユウジンお前もビビってるじゃん」


「いや、ビビってねーし。お前じゃねーし」


 そうやり取りしながら安心した様に前を振り返ると。










 何か居た。




「!?」


 二人そろって心臓を握りつぶされた様な感覚が広がった。

 癖なのかもしれないが、ユウジンが即行で刀を振るう。


 ガギンッ!

 根元から折れてしまった。


「うそだろ!」


「お前絶対普段は木刀持っとけよ! もしくは抜刀すんなよ! 絶対だぞ! ビビって人殺しましたじゃすまないからな!」


「そんな場合じゃねぇ!」


 たしかに!

 パニックに落ち入った俺達は一目散に逃げだす。


 追って来る。

 マジかよ!


 ヤバイ超怖い聖書さん助けて!

 聖書さんが光る。


 落ち着いて来た。

 なんで、俺、あんなもんにビビってんだろ。


 ただの得体の知れない何かじゃん…。

 はぁ…。


 ちょっと、聞き過ぎ。

 だけどありがとう聖書さん。


 振り返って冷静に鑑定した。



悪魔鉱人形デモンゴーレム・アダマンタイト

『悪魔が鉱石に憑依した姿。憑依した鉱石によってレベルが変わる。悪霊が憑依すると、人形にはならず呪いの鉱石になる』


 悪魔か!魔物か!


「ユウジン! アレは悪魔が憑依した鉱石だ」


「なに! なら斬れる! やっつけるぞ」


 いや、お前さっき刀おられたばっかりだろ。

 彼は木刀を持っていた。世界樹刀ウッドオブアースか!

 破壊不可属性だな、それなら行ける筈だ。


 色々制限がついてる刀だが、最近ユウジンは重さにも慣れてしまったようで、もっと重くなれと要求するぐらいだった。


 勢いとは裏腹に、軽い音がする。

 そりゃそうだな、そういう仕様なわけだし。


「バカじゃねーの!? 人じゃないんだぞ」


「すまん、少しパニクってた。聖書のバフくれ」


 聖書さん、あいつにもお願い。

 ユウジンも少し落ち着いたらしい。


 以前坑道を駆け上がっている状態だ。

 鈍足な俺が全力で走ってギリギリ追いつかれない速度なので、運が良かった。

 だが俺の体力が持たん。


 それよりアダマンタイトってなんだっけ。


「えっと、普通のゲームなら神鉄って感じでかなり貴重な鉱石だよ。ああ、俺の刀が通じないわけだわ」


 そう暢気に言う彼。

 ちょっとまて、そんな貴重な鉱石なら、憑依している悪魔も相当な上物じゃないか?

 だが悪魔なので、一か八か聖十字セイントクロスを放つ。


 躱された。


「おお、効くみたいじゃん。俺が抑えるから、当てろよ」


 そう言いながらユウジンはまた斬り掛かった。

 拮抗する。

 彼の表情はキツそうだ。そりゃ壊れないだけで今は制限武器でしかないしな。


 俺は聖十字を当てる事に成功した。

 ボロボロと悪魔鉱人形デモンゴーレムの身体が崩れて行く。


「よっしゃ、鍛冶の国前に良いものゲットだぜ」


 そう言いながら崩れ去った悪魔鉱人形デモンゴーレムの欠片を手に取ろうとした時、鉱石が手の形を形成すると、ユウジンを掴み投げた。

 坑道を支えている柱にぶつかる。

 かなりの勢いがあったみたいで、柱は折れ、彼はバウンドしながらゴロゴロ奥に転がって行った。


 その間、悪魔鉱人形デモンゴーレムは復活しようとしていた。

 俺は悪魔鉱人形デモンゴーレムに聖十字を当てると、ユウジンを追って坑道を駆け下りる。


 俺が走り抜けた後ろで、悪魔鉱人形デモンゴーレムが復活し、追ってこようとした。

 だが、運がいい。

 折れた柱のお陰で崩れた天井に押しつぶされた。


 自業自得だ!




 彼を助けないと。







※現実時間とRIO時間についての質問はこれからもなあなあになってると思うので、指摘されてもどうすることもできません。ご想像にお任せします。



 幽霊が恐い神父(笑)

 パニックしています。

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