幕間-ハザードの進む道-
※息抜き投稿です。多分今日で一日四話更新は終ります。最後っぺで書きなぐってました。来週からは一日一回ペースでかける範囲でやって行こうと思います。読んで頂いて、沢山のご感想を頂いて本当に嬉しく思っています。ありがとうございます。
俺は今、ジェスアル王国南東部へ向い移動している。
なんとかハンターランクDでも受ける事が可能なキャラバンの護衛依頼を受け、同行している形だ。
リアルスキンモードに来た事は正解だった。
俺の目標が見つかったからな。
決闘大会で惨敗した俺は、自分の強さに憤りを感じていた。
プレイヤースキルだってロバストに引けを取らないし、攻略最大手ギルド『リヴォルブ』のサブマスター、ナンバーワンアタッカーだと自負していて、ロールプレイなんかに負けるなどとは微塵にも思って無かったからだ。
俺の戦い方は様々な武器で他を圧倒するスタイルだった。
武器制限解除スキルにより、装備できる武器がアイテムボックスに入れてある全ての武器となっているので、戦いの最中に出し入れするだけでトリッキーな攻撃を可能とする。
実際に、それでリヴォルブ最強のアタッカーとして活躍して来たのだ。
だが負けだ。
勝手にユウジンを倒すと息巻いていた俺が恥ずかしかった。
ユウジンとは何の因縁も無い。
ただ俺が一方的に嫉妬していただけだったから。
圧倒的なプレイヤースキル。
最初のレイドボス戦からぶっ飛んだ強さを見せていたあいつに、俺は追いつきたかった。
実質、ユウジンはリヴォルブ最強のアタッカーだと回りからは思われていた。
ギルドに入ってすら居ないのにだ。
そして勝手に居なくなった。
居なくなった後も彼はギルド最強のアタッカーだと言われていた。
ロバストは気にするなと言ってくれたが、俺には現実を受け止める事が出来なかった。
強さを模索して、ギルドを利用して属性武器を作成したり、武器制限解除などに手を出していた訳だ。
だが強くなった実感はあるがあいつの影には一つも届いていないと心の中で諦めていた。
あの日、あいつは俺の事を覚えていなかったようだがな。
教えてもらった通り、俺はリアルスキンモードをプレイする事にした。
リアルスキンモードの世界に行き、俺は驚きで声を無くしてしまった。
システムアシストが全く存在しない世界。
これがあいつの見ていた世界かと思うと、何もかもが輝いて見えた。
これで俺も強くなれる。
根拠も無いのにそう思っていた。
そして、俺は言われた通り、占い師の元へ向かい自分の才能を占ってもらう。
「才能はないねぇ………強いて言えば、色んな物に挑戦できるよあんたは」
別の意味で言葉を失った瞬間だった。
特出した才能なんか無い。
まぁそんな物だな。
乾いた笑いが出た。
「はは、所詮持ってるやつらしかナンバーワンは取れないってことだな…」
「一番に拘り過ぎさね。人生やる事は他にも沢山あるんだよ」
俺も何故そこまでナンバーワンに拘ってるのか判らなかった。
いつからだろう。
誰かの背中をひたすら追い続けるだけの毎日が始まったのは。
呆然とする俺に、占い師は言葉を投げかけて来る。
「才能があるってことは、必ずしも役に立つってことじゃあ無いんだよ」
・・・。
「一つに特出した所で、無限の可能性をドブに捨ててる事さ、あたしゃそう思う。努力を才能にしか向けれなくなった頭でっかちだってね」
「占い師……いや、メリンダさん。俺は一体どうしたらいいんだ」
「そんな物自分で決めな! なんであたしがそこまでしてやらなきゃいけないんだい!」
再び俯く俺に、メリンダさんは溜息をついて言ってくれた。
「なら、あたしの所に来て占いでもやるかい? でもあたしの訓練はきびしいよ?」
占い…。
魔術か。
……そうか。それがあったんだ。
その時、俺の頭の中で眩い程の閃きが起こった。
これだ、と思う物を見つける事ができた。
「全部だ。全部。魔術も武術も極めればいい。俺はナンバーワンを諦めない。勿論占いも教えてくれ。頼む。いや、お願いします」
そう言って頭を下げる俺に、
「あたしゃ厳しいよ、挫折するんじゃないよ」
そう返してくれた。
この日からメリンダさんの元での修行が始まる。
メリンダさんは色々な魔術を教えてくれた。
それこそ豊富な種類だ。
我ながら凄い人を師に持ったと思う。
そして合間に、俺は武器・武術の鍛錬もする。
こっちは独学だが、現代知識を使えば補えない事も無い。
毎日が楽しい。
やはり、目標と言う物は高ければ高い程良いな。
持たない物は、持たないなりのやり方で、高みを目指せば良いだけだ。
そんなわけで、俺はメリンダ師匠の最後の試験を受け『賢人の塔』を目指している。
「あんさん、凄い沢山武器背負ってるけど、他の荷物はどうしたんだい?」
「ああ、ここにあるよ」
俺はディメンションを唱える。
空間拡張の上位魔法だ。
これには制限が無い。ただし、制御をミスると俺も取り込まれてしまうブラックホール魔法である。
覚える為に何度も死んだ。窒息死だ。
「あ、あんさん。こ、高位の魔術師様か?」
「いや、まだ修行中の身の旅の魔術師だ」
「魔術師ってのはとんでもねぇな! 馬車いらずだ! なんでまた、リュックなんて背負ってんだ?」
ああこれか。
一々戦う時に武器を亜空間から出すのも、めんどうだからな。
凡庸でよく使う武器は、始まりの街にも最近出回って来たバックパックと呼ばれる高機能リュックに詰め込んである。
「でも腰に剣さげてるってこたぁ、剣士でもあるのかい?」
「そうだな」
「たまげたぁ!」
そう、両腰には長剣を挿している。
その他にもローブの中には短剣数本。
バックパックは口を限界まで開いて、自作やら買ったヤツやらが隙間無く押し込まれている。
でバックのサイドには独自配合の薬草だ。
完璧に俺専用ソロ仕様バックパックだな。
これが俺のやり方だ。
才能よりももっと大事な物を、俺は師匠から教わったのだから。
キャラバンと別れて、更に南東部へ。
この辺まで行くと、村、もしくは猟師の山小屋がログアウトポイントになってくる。
たしか賢人の塔は『燃える夕暮れの村』から近かった筈だが、その村すら未だ見つからない。
仕様がない。
「召喚・コーライル。周囲を見て来てくれ」
一羽の烏を呼び出すと周囲の探索をしてもらう。
合図があった、どうやらもう少し南東の方向に行けば村があるらしい。
もう夕暮れ時になっていた。
村が見えて来た。
なるほど、名前に恥じない村だな。
その村は夕陽を浴びて燃える様に輝いていた。
翌日、俺は賢人の塔の入り口の前に居た。
最後の試練か。
これが終れば俺は、世界へ出てみようと思う。
まだ始まってすら居ないのに俺は何を考えているんだか。
一先ず目の前の塔に集中しよう。
ハザード回でした。
いつあるか判りませんが、次回のハザード回は挑戦賢人の塔あたりです。