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サバイバルマッチ

 開会式は素晴らしかった。

 打ち上がる祝砲、花火の様な魔法の中をスカイホエールが悠々飛び回っていた。

 飛行船を利用して、空からの撮影もされるようだ。


 ノーマルプレイヤーが自分の動画を撮影して掲示板にアップできる様に撮影の魔道具も用意されているらしい。

 すごいな。知らなかった。


 あ、ラルドでひたすら草原を走る動画とかどうだろうか?

 つまらないか。


 で、開会式の挨拶はジェスアルの国王だった。で、デヴィスマック連合国各州の代表と大統領が軒並み連ねる中で、来賓席にエリック神父がいた。

 ちょっとあなた。

 そんな所に居るってどんだけ大物だったんですか。


 まぁ思い当たる節々はあるけども。

 で、驚いたことに協賛にブレンド商会が居たこと。


 知り合いが大御所過ぎて、緊張して来たぞ。

 落ち着け俺。聖書さんを一心に読み上げるんだ。


 よし落ち着いた。

 試合の合間にエリック神父に挨拶をしに行かなければな。

 だが来賓席まで通してくれるのかな?

 そこが問題である。



 さて、決闘大会である。

 魔術クラス、武技クラス、無差別クラスと別れている。

 まぁ、呼んで字の如くだ。

 魔術のみと武技のみ、何でもありの無差別といった所。



 今回俺達パーティの中で出場するのはセバスを抜かした4人。

 セバスは完全なサポートに回るそうだ。

 で、魔術の部には凪が。

 あとは俺、ユウジン、エリーは無差別級。


 俺はまず魔術クラスに行っても攻撃魔法が無い。詰んだ。

 武技クラスに行っても魔力ちゃんと聖書さんが拗ねるからな。


 ユウジンは、まぁ、そう言う奴だし。


 エリーは武技クラスかと思っていたが、そうか雪精霊フラウが居たんだったな。一緒に戦うには無差別クラスじゃないと無理か。





 で、予選はサバイバル方式だった。

 一気にふるい落とす気だな。運営め。


 内容は最後まで残った二人が決勝予選進出だそうだ。

 A,B,C,D,E,F,G,Hまである組み分けで、16人が決勝に駒を進めることに鳴る。

 本日はA,B,C,Dのサバイバル予選である。

 エリーとユウジンと俺は組み分けが被らなかった。

 因みに俺はHだから明日だ。今朝瞑想で高めた気分を返してほしい。


 エリーとユウジンはAとD。

 この組み合わせは基本的に決勝予選であたるタイプだろ!この二人。

 エリー、頑張ってくれ。










 いつの間にか俺は、高い所から試合を観戦していた。

 そう、来賓席である。


 なんでだ!

 セバスの隣で観戦しようと思って移動していたら、エリック神父に掴まって、このすごい奴らが軒並み連ねる『来賓席』へと連れてこられたのだ。


「良い成長を遂げているようで、私も心から嬉しいですよ、クボヤマさん」


「そうですね。彼女は妄信を捨て、実直に励んでいますから」


 ロールプレイという妄信を捨て、真摯にエルフの聖騎士になるべくな。


「彼女を導いて上げてくださいね」


「はい、エリック神父が私を助けてくれた様に、私も様々な人を導いて行こうと思います」


「暇があったら顔を見せてくださいね? 子供達も寂しがっていますから」


「はい。またいずれ始まりの教会には寄らせて頂きますよ」


 エリック神父とそんな会話をしながら、試合を観戦する。

 サバイバル形式だから、始まった瞬間様々な武技・魔法が飛び交う乱戦状態だ。

 エリーの戦い方はタンク職として教わったものを自分流にアレンジしたのだろうか。


 守って盾で弾いて場外。

 守って盾で弾いて場外。


 実に堅実だな。

 次々仕留めて行く様に、観客席から歓声が上がる。




「あのエルフのタンクかなりの腕前だぜ! シールドバッシュで上手く場外に落としてる!」


「スキル名を言わずに体感で行ってる辺り、かなりのPSプレイヤースキルだ」


「そんなことより超美人だぜ! 自然な美しさだ、顔面補正エディットやってない証拠だな!」



 なんかパーティメンバーが褒められるって嬉しいな。

 彼女は今回、雪精霊フラウを出さなかった。

 切り札として使うのだろう。


 まぁ雪精霊フラウは何度も見ているから、驚くことは特にないが、彼女も俺達の様に何か隠して編み出しているかもしれないからな。

 油断大敵である。



「そういや昨日見たぞ今勝ち残ったエリーって女の子と神父がデートしてるところ!」


「ばっか、神父様がそんなことする分けないだろNPCだぞ」


「いや本当はプレイヤーだって聞いたぞ!」


「NPCだったらとんだ生臭坊主だな!」


「ちげぇねぇや!!! ハッハッハッハ」


 思わず椅子から滑り落ちた。

 なんだその噂。そう言えばエリー達からも初めて会った時NPCとか聞かれてたな。そんなに違和感無いの?溶け込んでんの?

 引きこもってたからかな。


 まぁ度肝ぬいてやる。

 その神父も大会に出場してるからな。ちくしょー。


 エリック神父に来賓席に試合が終わった彼女達を呼んで良いか聞くと、快諾してもらったので、エリーとセバスを来賓席まで連れて来た。

 立場的には護衛の騎士とその従者と思われているらしく、二人は意気揚々と便乗する様に俺の席の隣に立っていた。



 座れよ。目立つだろうが。

 このロールプレイ変態共が!



 ユウジンの試合が始まる前にまた下から声が聞こえて来る。

 例のあいつらだ。


「おい、エリーちゃんもやっぱりNPCだったのか?」


「神父の騎士をしてるぞ! 従者も隣に居る」


「ってかあそこ来賓席だぜ。おれ生臭坊主とか言っちまった」


「やべぇやべぇ!」


 丸聞こえだ馬鹿共。

 そう言ってひと睨みしてやると、彼等は三者三様逃げ出して行った。

 まぁこのゲームは信用度とか実装されてるからな、下手に信用を失うとペナルティも存在するようだし、ノーマルプレイヤーでもこうなるのは当たり前か。


「プー……クスクス」


 エリーはひたすら笑いを堪えていた。

 ロールプレイしてんなら騎士らしくしろよ。まったく。


「おっと、ユウジンの試合が始まった…ぞ?」


 彼は最初からぶっ飛ばしていた。

 彼が会場中央で回転切りを放つと、その剣圧に弾き飛ばされる様に全員場外。


 来賓席も唖然である。

 会場も。


 そしてぽつり、ぽつりと声が聞こえて来た。



「侍さんだ…。侍さんが返って来た!!!」


「え、あのレイド無双した攻略ギルド最強アタッカーの?!」


「え、北門での神父イベントで共に旅立ったと言われているあの?!」


「え、ユウジンって聞いたことあるかも! 色々なVRゲーで廃人無双してるあの!?」


「《BUSHIDO》で最強の《剣豪》と言われているあの!?」


 次から次へと出て来るな。もう苦笑いしかねーよ。

 ってかお前らいい加減にしろよ。



 神父イベントってなんだよ……。



 そして、声は歓声へと成長して行った。

 巻き起こるユウジンコール。




 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!

 ユウッ!!!ジンッ!!!!







 うるせー!友達クラブか!

 そして彼は今日を境に、剣豪と呼ばれる様になる。




 で、実際はD組のやり直しになった。彼を抜かしてな。

 残った一人が決勝へ行けるのだが、その試合はいまいち盛り上がりに欠けた内容だったので省略する。




 本日の日程が終了した。

 このあと闘技場で魔法サーカスだったり、NPCの武技演舞だったり、色々な催し物がありそこそこ楽しめた。


 ユウジンも来賓席に呼ぼうと念話を飛ばしたのだが、あとで連絡すると返って来てから一向に連絡が無かった。

 セバスとエリーは先に戻らせて俺はユウジンを探しに向かった。




 意外と簡単に見つかった。

 コロシアム地下に併設されてあるカジノだった。バニーガールのNPCの間を縫って行くと一際騒がしい集団の中心に彼がいた。


 何かもめているな、仲裁に行く。

 理由を聞いてみると、彼は試合の賭けをしており、自分が一振りで圧勝することに全財産を掛けていたのだ。

 そして彼は有言実行した。


「だから、お前は掛けに負けたろ。早く全財産よこせ」


 まぁお互いの全財産を掛け合うなんてな。

 怪し過ぎて普通受けないだろ。


 どうせ祭りで散財してお金なんて持ってないだろう、勉強代として大人しく払っておくことが身のためだと思うのだが。

 彼はカジノで大勝ちしているらしくかなりの大金を持っていた。


 御愁傷様です。


「む、無効だ! そんな一撃で勝てる分けないだろ! チート使ったんだろ!」


「心外だな」


 ユウジンはギロりと男を睨む。あ、ちょっと怒ってるな。

 廃人プレイヤーに名を連ねる彼のプライドが許さないだろうな。

 チートなんか使ってない。と。

 彼は小手先と言う物を無視した戦いをするからな。

 常に一刀両断というか…。


「ひっ! し、神父様! 助けてください! 脅されてます!!」


 まぁユウジンの試合っぷりを見ていたんだろうな。

 彼はすっかり怯えてしまっている。

 ってかさっさと逃げれば良いのになんでカジノで続きやってるんだか。


「約束を違えることは、神のお導きに反することですよ?」


 とりあえずやんわり、諭そうかな。


「チートだ! これは神の冒涜だ! そうだろ神父様ぁ!」


 あ、これ以上チートって言わない方が良い。マジで!

 今にもPKプレイヤーキルしそうなユウジンをどう止めようか迷っていると、後ろから声が掛かった。


「チートなんかじゃ無いですよ。剣系上位職の回天斬という技です。剣圧のスキルレベルを上げれば、可能ですよ」


 いや、剣圧どうこうの問題じゃなかったと思うが。

 そんなことより助かった。誰だ君?


「師匠、久々に会えて嬉しいです!」


 と、言いながら両手剣を背負った女の子が、ユウジンに抱きついた。

 きゃー!不潔!

 不潔だわ。ユウジンが。いっつも汗クセーし。


「ふがふが」


 ってこの女。匂いかいでないか?


「ふがふがゴフッ!」


 ユウジンの拳骨が女の子の脳天に落ちた。

 うわっ、絶対痛い。


「いい加減にしろ糞アマ。レイドの時もストーカーしやがって、あと攻略ギルドなんて一つも入った覚えは無いからな!」


 彼も色々溜まってた物があるみたいだな。

 とりあえずこの賭けの男は放置して、この二人を連れて静かに話せる場所に連れて行くことが先決だ!

 賭けの男にはキツくお灸を据えるべく、出入り禁止にしてもらう様言っておいた。









 で、一体この女の子は誰なんだ。

 未だユウジンの腰に絡み付く女の子を見てそう思った。







 サバイバルの戦闘パートはあっさり終ります。

 主人公の時は長く書くと思います。

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