三種の神器(ヒロイン)
久しぶりの更新です。
「……プライベートエリア?」
目を開けると、フォルトゥナが居た。
そしてクレアにクロスも居る。
三人が目に大粒の涙を溜めながら俺に抱きついてくる。
咄嗟の出来事に、反応が遅れた。
だが、何とか恐る恐るだが彼女達を抱きしめる事が出来た。
「一体?」
「邪神による精神汚染なの」
俺の質問に、フォルがすぐ回答する。
「クボの心は邪神に、悪魔に掴まれてしまったの。悪魔は元々人の心を惑わし喰らう生き物、彼は邪神であり魔王であり悪魔でもある。いわゆる史上最悪の敵ってやつなの」
「わ、私がしっかりしてないからですぅ!! ふえぇぇ」
「申し訳ありません。私にはどうする事も出来なくて……」
クレアが涙を流し、そんな彼女をクロスは後ろから優しく抱きしめていた。
なるほど、俺の心臓を司る役割を持っているのは聖核であるクレアだ。
今回の事を大失態だと思っているのだろう。
「クレア! 私の責任でもあるのっ! 運命を司っておきながら、悪魔の証明如きに手こずって! ふぐ、ふぇ……」
「フォルちゃん……うぇぇん」
「皆が泣いてるのに、私は何も出来ないだなんて……シクシク」
「おいおいおいおい、ちょっと三人そろって泣かないでもらえます? いやほんと」
今回の失態はロッソがやられたのを確り確認してなかった自分自身の責任だ。
正直言って皆に泣かれると俺が泣きたくなる。
情けなくてな。
「正直、心を握られたのも……戸惑ったからなんだ」
完全に隙を付かれた。
ハザードが死んだと不意に確信してしまって、このまま戦いを終わらせる為に迷宮の巨大な魔核をルビーの力で本当に消して良い物か、迷ってしまった。
「……ダメだな俺」
思い返すのは、結果的に人を死なせてしまった過去だった。
泣いて、喚いて、許されて。
女神アウロラの包容と共に背中を押されたけど。
「結局誰かが死んだじゃないか」
「クボ……」
手足が震えてくる。
覚悟は決めた筈だった。
行動に伴う結果がどんなものでも。
後ろを振り向かないと決めた筈だった。
なのに。なのに。
「どうしても気になっちまうんだ。死なない結果は無かったのかって……」
神を司る職務に就いてるなら、ジュードの霊に合って話しがしたかった。
それも、ただ許すとかそんな言葉が欲しいだけの自分のエゴだけど。
「これで良かったのかよって……」
自分で発する言葉に囚われて行く感覚。
闇を孕んだ黒く重たい鎖が、身体に巻き付いていく。
そして身体を、心を飲み込んで……。
——パンッ!
衝撃が、顔を襲った。
厳密に言えば、左の頬。
視線を向けると、唇を噛み締めて涙を堪えきれないフォルトゥナ。
俺は、……ぶたれたのか?
「そうやってうじうじする所嫌いなの! 男ならシャンとして! 自分のケツは自分で拭け! 一回決めたら振り返るな! 覚悟決めて先に進め! ……独白してるのに、せっかく弱音吐いてくれたのに……」
言葉に勢いが無くなって行く。
「なんでずっと一人で背負おうとするの……? 今まで一緒に歩いて来たんじゃないの……? 勝手に道を踏み外したって言われて……貴方と一緒に居る私達はどうなるの?」
「あ……いや……」
「一人で完結しないで。自分が歩んだ道を否定しないで……私達だって悲しいの……ぐすっ……支えさせてよ、好きな人が苦しんでて何も出来ないのはヤだよ……」
「フォルちゃん泣かないで!! ふぇぇ」
「マスター……私は弱い所があっても良いと思います。だから人は神に祈るのです。私を、十字架をかかげて祈るのです。そんな弱い部分を少しだけ背負ってあげることはできます。だから、もっと信じてください。自分を」
思考が戻って行く。
そうだ。
大事な事を忘れていた気がした。
ジュードも、ハザードも。
俺には到底想像もできない様な固い意志を持っていた筈だ。
そして俺はその彼等の上に立っている。
彼等の作ってくれた道を、俺はあーだこーだ駄々捏ねて。
なんてことをしてしまったんだろう……。
自己嫌悪に陥りそうになる。
「またなのぉーーー!!!」
「ごめんごめん」
フォル、クレア、クロスの鯖折り攻撃で何とか精神が保たれた。
そうだな、無駄には出来ないな。
誰の意志も、もう無駄にはさせない。
このまま、ロッソを倒して全てを終わらせよう。
「ちょっと待つの、引退は絶対しないでなの」
「え? ああ、うん」
「また居なくなっちゃうのは寂しいですぅ!」
「心配すんなって」
「……本当ですか? とクロスは見つめる振りしてちゅー」
「「あああああああああ!!!!!!」」
「ちょま! お前ら、ちょっと落ち着け戦いの最中もがもがもが——!!!」
「……コタツから出たら、すぐ出てく」
「「「はぁ〜い」」」
得体の知れない求愛の波状攻撃を抜け出して。
このもんち○ちー達をコタツに押し込めてやった。
戦いの最中だってのに、おちおち盛っちゃいられないって。
「ぶっちゃけ、このゲーム自体、本当にゲームなのかどうか怪しいんだけど」
「う〜ん。それは私の口からは何とも言えないの?」
「何故疑問系?」
「それについては私の権限の及ばない特殊な契約の元に行われてるっていうか、うん」
それはそれでもう答えを言ってる事と同義じゃない?
いや、まあ確信した訳ではないけど。
直感だがハザードは死んだ。
全てを犠牲にして、囚われていたルビーを救ったんだろう。
観測者でもあるフォルが、運命線を読み上げていた。
そんな能力があるなら、何とかして生き返らせれないのかな。
「無理なの、私はあくまで観測者。そして運命線は常に枝分かれしているし繋がってもいる。行き先不明で常に横線がランダムに足されて行くあみだくじみたいなものなの」
「無理げーか……どうしようもないんだな……?」
「…………可能性の範囲で行くならば帳消しには出来るかもしれない。でもクボには出来ないし、もちろん神にも難しい事なの」
「せめて、方法だけでも」
「……あのね、邪gさlkjhsがg’sが——だめなの、正体不明のノイズがはいってるの」
取れる方法が無いとしたら、とにかくロッソを倒す事に集中しよう。
俺が倒れた今、ルビーは一人だ。
彼女の恰好を思い出すと、悪寒がした。
やばい、レイプされる!?
「あ、他の人の事考えてるの。これは三人でお仕置きが必要なの……?」
「まて、コタツから出るなよ? 目を怪しげに光らせるな。ルビーは流石に不憫だろ!」
「……確かに、あの不幸さ加減は運命をどう改編しても結びつくのは同じ結末で同情するの。でも、彼女は強いの。盲目的に、クボを信じ続けた一人なの。だから……私達も祝福できるの」
「あっそう、なに、俺が彼女作るのって君らの許可がいるのね……」
VRゲームの中にログインしてまでリアルで彼女が出来ましたって報告しなきゃならんのか!
流石にそれはどうかしてるぜ!
でもなんだかんだ来ちゃいそうな予感がする。
否めない。
うん、なんつーか俺もこのゲーム大好きだからなあ。
「行ってくる」
「皆で力を合わせるの」
「クレアはチューで浄化できました! デミゴッドの浄化の力で頑張りますです!」
「あらあら、みんなお盛んねぇ」
……最初に遣り出したのは、どこのどいつだ。
まあいい、調子崩れるからさっさと倒してくるか。
もう迷わない。
容赦もしない。
……絶対に倒してやるぞ。
新作投稿しました!
「奈落に落ちた俺が超能力で無双する」
http://ncode.syosetu.com/n5083du/
ぜひ一度ご一読を!
ぶっちゃけ色々と忘れている節があります。
でも元々穴だらけな処女作ですし、もういいですよね?
このまま勢いで完結まで持って行きますよ〜?
この一年ずっと更新しています。
グローイング・スキル・オンライン
http://ncode.syosetu.com/n7793dh/
よろしければ読んでやってください。
ちなみに、時系列的にはこの物語のかなり後にリリースされたゲームって形になってます。
作中ではほんの少ししか振れられませんけども。
同じ位の文量で更新してますので。




