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-幕間-賢人の塔


 おもっくるしい話しが続いてるので、一端休めを挟んでみました。

 いつかやろうと思ってたハザードのソロ賢人の塔アタックです。




 ——賢人の塔。

 遥か昔からジャスアルの国の外れにそびえ立つと言われる歪な形の建物だった。


 塔の入り口は常に解放されている。


 ひょっとしたら、誰かが住んでいるのかもしれない。

 ひょっとしたら、まだ住んでいるのかもしれない。


 憶測が、噂となり。

 そして、尾ひれを付けて人から人へ。国から国へ、海から海へ、大地から大地へと繋がって行った。


 夢を追うもの、

 実力を試すもの、

 欲望に満ちたもの、

 悲壮を背負ったもの、

 復讐に燃えたもの、


 巨大な塔は、何人たりとも受け付けないようにそびえ立っているように見えて、万人を受け入れた。


 その多くが、帰って来なかった。

 いや、もしかしたら誰かはひょっこり出て来たのかもしれない。


 無事生き残った人が居て、いつまでも秘密を語らずに居るのではないか。

 そんな噂も広まる程に。


 ——賢人の塔はそびえ立ち続けている。








 ……随分と長い時が流れた。


 燃える様な夕焼けが、巨大な塔を照らし輝いている。

 その後ろには巨大な影が闇を作る。


 二つの色が交じり合う事は無い。

 火、風、大地、水、この世を構成する全ての内ひとつとして。


 賢人の塔は自然の一部になっていた。


 カラスが夕陽を背に飛んでいる。

 極々ありふれた風景なのだろうか。


 ——違った。

 その烏はバサバサと一人の男の肩に止まった。


 久しい光景だった。

 ずっとの彼方に、世界の一部として忘れ去られてしまったのかと思っていた。


 人が来るだけでも異様な光景だというのに。

 その者は、異様な佇まいをしていた。


 見た事も無い口の大きく開いた袋に、十数本の杖を刺し、懐には剣を数本身につけていた。


 そして何より——、不思議な魅力を感じた。

 その男は一人でここへ来た。


 扉は開かれている、ずっと、ずっと前から開かれているのだ。

 誘われるように、その男は扉を潜った。


 いや、確かな意志を持ってして。

 この賢人の塔を踏みしめたのだ。










---




 潜ってどれくらい立ったのだろうか。

 ディメンションゲートに入れている食料は、朽ちる事が無い。


 真っ暗な道をランプの明かりを頼りにして進んで行く。

 周囲に特別な物は無い(・・・・・・・)


 太古から存在しているこの賢人の塔は、未だ誰にも踏破された事がないという。

 一体誰が、どういう意味で作ったのかはわからない。


 ただ、不思議な魅力に引き付けられた人達が、ここで数多くその命を散らした事だけが確かだった。


 人骨なのか、なんなのか最早わからない白くて細い何かを踏みしめると、硬い音ではなく圧力鍋で煮た魚の骨のようにぼろぼろと。


 もう慣れた感覚(・・・・・)だった。


召喚サモン、——ラトラス」


 小さな鼠が姿を表す。そして足の周りをチョロチョロ動き、伝って肩口まで登ってくる。こんな狭い場所は烏のコーライルは出せない。


 ラトラスには抜け穴だったり、罠だったり、そう言った通路の下調べを行わせる。


 白骨化した死体が永遠と残されている空間だ。

 それだけの物が設置されているに決まっている。


 そして戻って来たララトラスは、俺を案内するように歩き出した。

 小さな鼠のチョロチョロとした動きに従って、進んで行く。


「む……仕込みボウガン」


 ラトラスが伏せの仕草をしたので、俺も真似て布施をする。這いつくばって歩いていると、左手が地面のスイッチに当たったのか。


 ポスッと乾いた音がして、壁に矢が突き刺さった。


「有能だ、ラトラス」


 そう告げると、鼠は誇らしく鼻を鳴らしたようだった。

 踏破方法は予め考えて来ておいた。


 賢人の塔の情報は、伝説で語られるような物しか無いが、それでも入り口から数歩進んで逃げ帰って来た人物は大勢居たらしく。


 口を揃えてこう書かれていた。


 "——気が狂いそうだった"


 と。


 この永劫の暗闇が、どこへ向かっているのかもわからない程の狭い道が、幾重にも張り巡らされているこの罠が、人々を疑心暗鬼にさせるのだろうか。


 メリンダ師匠からは別に制限は無いと言われていたし。

 仲間を集めて来ても良かったのだが……。


 余りそんな気分にはなれなかった。


 一人で実力を試してみたいという気持ちもあったのだが、何より人と上手くコミュニケーションを取れるかがわからなかった。


 返ってそれが功を奏したのかもしれない。

 だが、どうしてもただそれだけが……。


 気が狂う原因にはなると思えなかった。


「……ここを登れというのか?」


 ラトラスが飛び上がりながら、上を示した。

 まだ迷路の様な道は幾つもあり、階段だって上に下に大きく別れている。


 だが、ラトラスは上を、真っ直ぐ上を示している。

 天井は闇になっていて既に視認は不可能だ。


「散々登って天井に突き当たったらだったら、どうするんだ」


 時間がかなり無駄になるかもしれない。

 だが、俺はメリンダ師匠から譲り受けたこの不思議な鼠に頼るしか無かった。


 幸いな事に、蔓が無造作に伸びている。

 ……ここを登り続けるのか。


「……?」


 上を見つめていると不思議な感覚が押し寄せた。

 何かが手招きして俺を呼んでいる様な。


 ラットは流石に登れないので戻しておいた。

 そして俺は蔓に手をかける。


 ブチブチと音がして石壁の隙間に根を張った蔓が剥がれ落ちた。

 これは、確かに恐怖を感じるな。


 もし、上に登る道があるとしても。


 見えない闇の中を、ランプを掲げても先が見えない空間を、いつ千切れるかもわからない蔓を伝って登っていく。


 遥か上方に、そこ知れぬ雰囲気を追って。









何気に二年くらいかかってやっとかけました。

↓こちらが挑戦の前の話しです。

http://ncode.syosetu.com/n4162cj/26/



新作!!

覇拳-素手で魔物を狩る派遣社員(時給1300円)-

http://ncode.syosetu.com/n6741dg/

連日更新中。お願いします。

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