盛る竜種。怯える草原の走竜達
今、俺たちは若い竜を追って草原を進んでいる。
速度は少し駆け足程度だが、素早さの低い俺にとってみれば全力疾走をずっと続けている訳で。
そろそろキツくなって来た。
初期VITの高さで支えられてるんだろうな。コレ。
もしかしたら、毎日ランニングすることによってVIT上昇に繋がるんじゃない?
人間の体力ってほら、走れば付くし。
で、何故俺たちが竜を追っているかというと。
それはセバスの交渉時に遡る。
リュックのアイデアは、セバスが付加価値(いろんな種類のリュックの構造を教えて上げるだけ)を付けて儲の2割がこのパーティーに支払われるらしい。
で、だね。2割の配分がまさかの俺1割であとはエリーと凪で分けるんだって。
セバスチャンはエリーの従者なので要らないと言っていた。
お前ってヤツは。
お前ってヤツは。
ユウジンは何と、自分は辞退すると言っていた。
だが交渉が終った後で念話が来た。
『俺が今までお前に貸した分覚えてるか? よし。10%の内7%で手を打とう』
この『今まで』って言うのは教えてもらった全てのゲームのことを彼は言っている。裏取引だ。
彼は誰よりも高額な7%と言う利権を得て、俺はその余りカスである。
内訳で言うと7・5・5・3。一番低い。
反論しようとしたが、金貨をくすねたことは既にバレていたらしく。
ふぐぅ。
まぁいいよ。神父だし。お金なんていらないもんね。
いらないもんね。
で、続き。
付加価値を付けたのには訳が有って、利権の他に、融通してもらう為だった。
そう、旅の足である。
俺達は竜種に拘った。(主にユウジンが)
そして、実際にアラド王国には走竜という亜竜種が居るらしい。だが、すごく高価な乗り物で公爵の許可が下りないと走竜を飼育している国営ファームから買い取ることが出来ないのであった。
だが、ブレンド氏。
ブレンド商会の底力である。
取引は世界対等だ。を地で行く人なので、公爵家を俺を出汁に交渉して最近繁殖期に入った若い竜が走竜達を困らせているのでそれを討伐するという依頼を請け負って来たのである。
流石である。普通だったら討伐は騎士がしなければならない仕事なんだが。
新たな新事業、護衛、傭兵事業がどうたらこうたらと。
そして、神のお導きを受けたのです。と俺が恒例の祈りをさせられて、なんとか信用を得た。
神父を出汁にするとかすげーな。
ちなみに、護衛、傭兵事業を諭したのはユウジンである。
彼はものすごく悪い顔をしていた。
弟子作りと金稼ぎを兼ねる気だな…。
まぁそれは置いておいて。
なんかこの国に居るとどんどん身動きが取れなくなって来そうなので、早々退散したい。
しかも耕作地域広過ぎて、狩りすら出来ない。
狩場遠すぎんだろ!
平和すぎるのも、如何なものである。
「居たぞ」
ユウジンが遠くに目を凝らして言う。
ああ、あの土煙上げてる緑色の竜が討伐対象か。
近づいて行くと判る。
目がだらしねぇ。逃げる走竜達(おそらく皆雌)は必死の形相だ。
これは、酷い。
ってことで依然として雌に夢中なドラゴン故に、ある程度まで近づいても平気だった。
鑑定する。
草原竜
『草原に住まう竜。地に適用したので翼は退化した。肉食。普段は大人しいが、繁殖期になると獰猛になり雌を追い回し、邪魔する者には灼熱を吹く』
「確か、第三の街で戦ったレイドボスは、レッサードラゴンだったな。飛ばないヤツ」
「ワタシ達も参加しマシタ。街を荒らすはぐれ竜のクエストデスネ」
「大変だったわねぇあれ。30人くらいで戦って侍ロールプレイヤーのラストアタックでなんとか勝ったけど、とんでもない被害だったわ。ってあれ、まさかユウジンさん?」
「え? あ、うん。確か前提はブレス攻撃回避不可だったな」
「よく生き残っていマシタネ」
「あ〜そう言うのはタンクの影に隠れてたからな。アタッカーを守るのが仕事だろ」
「逃げようとシタ時、動けなかったのはアナタのせいデスネ」
「相変わらずシレっとしてるわね。ユウジンさんは」
三者三様でノーマルプレイ時代の思い出を話していた。
俺が教会に引きこもってる時だな。
ってかドラゴンってレイドボスなのかよ。
たくさん人数居ないと倒せないヤツ。
ん?ってことは強いのか?こいつ。
レッサードラゴンのレッサーって小型種、もしくは下級って意味でしょ。
「そ」
ユウジンはそう言いつつ。丁度目の前を通り過ぎて行こうとしたステップドラゴンの尻尾を両断した。
ドラゴンの悲鳴が上がる。
あ、こっち見た。
怒ってる。
待て待て待て待て。なんで行った!!
なんで斬った!!!
「おい! 脈略がおかしいだろ。強いなら作戦立てようぜ? 命を大事に! ってか命令させろ!」
「師匠、落ち着いてクダサイ」
後ろからエリーが俺を抑える様に抱きしめて来る。
いや、嬉しいんだが、鎧着てるでしょ。痛いわ。
「きゃ、役得!」
凪はうるさい。そしてセバス。微笑ましい様な視線を送るな。
生徒会長だろ風紀守れ。注意しろ。
「もーいいよ。ガンガン行こうぜだ!」
懐かしい。ドラ○ンクエストの時、俺は命令させろとかの仕様を教えてもらうまで何一つ判っていなくて、ガンガン行こうぜだけで乗り切っていた。
何回も死んだけど。
ユウジンに説明書読めと言われるまで『たたかう』ボタンを押して勝手に戦ってくれるのが、ドラ○エだと思っていたことがある。
話しがそれたが。
ガンガン行ったとしても、パーティの役割は決まっていて、後ろを気にする必要がないので、前衛4人。中距離1人のとんでもない戦闘になって言った。
後衛の凪をガードする人が居ないが、基本的に相手のヘイトを稼ぐのはヒールを使用しながら攻撃する俺くらいである。
ものすごいヘイト稼いでる気がする。基本的に俺しか相手攻撃してこないし。
だが、ブレスを吐くかな?吐かないかな?って所で、上手い具合にユウジンがアタックを掛けて牽制しているので、俺は生きている。
因みに、一応ブレスの防御は考えているが、心もとない。
クロスたんを盾の形にするだけである。
邪魔なユウジンから潰そうとしたのか、ドラゴンはユウジンにブレスを吐く。
灼熱の炎だ。空気が一気に燃え上がるのを感じる。
そこで大盾を構えたエリーが、ユウジンを構って炎を受け止めに掛かる。
フラウが雪の障壁を作る。
相性が悪過ぎた。一瞬で溶かされる。だが、灼熱は凌ぎきったらしく、少し焦げているだけで酷い火傷は無さそうだった。
だたブレスの勢いだけで数メートル飛ばされる。
先ほどまでは善戦していてもこんなにブレス一発で俺達の陣形は乱される。
流石竜種。
そして守る者が居なくなった所で、ステップドラゴンの矛先がこっちを向く。
いよいよ俺を仕留めに掛かるみたいだな。
簡単にはやられんぞ。
と思ったら、即効ブレスが来た。
ひええ。
クロスたんを大盾の形にする。
熱い!苦しい!やばい!
聖書さんがオートヒールとリカバリーをくれる。
さすがっす!
俺の必要な物が判ってくれているようだ。
ブレス攻撃も、魔力を燃焼させて行われているので、雀の涙程も無いが魔力展開して抵抗する。
「セバス!」
セバスはブレスを止めようとステップドラゴンに攻撃を仕掛けるが、ギョロリと向けられたドラゴンの目に牽制される。
セバスにブレスが行ったらマズい。
火の勢いが収まった。
凌いだぞ!ユウジンもブレスが止んでから斬り掛かる。
で、ドラゴンの四肢を切り落とすことになんとか成功した。
刀は一本使い物にならなくなったので2本目だ。
つ、疲れた。
もうここまですればあとは仕留めるだけだ。
そして一瞬の油断だった。
俺はドラゴンを仕留めるには力が足りない。
ユウジンが首を落としておしまいだろう。
そう考えて、クロスを仕舞おうと手に取った時。
ほぼ芋虫みたいになっていたドラゴンが、蛇の様に動いて俺の前で顎を広げた。
慌ててクロス持った腕を向けるが、その腕ごと。
バツン。
片腕が消えた。
リアルに吹き出る血と無惨に抉れた肩口に仲間達がとんでもない形相で駆け寄って来る。いかんぞ!
皆の意識が俺に向けられている今、ステップドラゴンはまだ生きている。
全滅もあり得るなんとかしなければ。
そうだ。
ヤツの口の中には俺の腕と握られたクロスがある。
俺はありったけの意思をクロスに込めた。
ステップドラゴンの顔面が、上下左右に大きくなり、白く輝くクロスに引き裂かれた。
「セ、聖十字!!!」
だ、誰が、そんなこと言ったヤツは。
セバスかよ。
「中二病臭過ぎだろ・・・!」
「もう喋んな!」
ユウジンが言う。今の俺にヒールを詠唱する程の精神力は備わっていない。
ひたすら痛みをこらえ続けている。
彼は、血が吹き出るを肩をキツく縛った。
部位欠損のステータス異常だな。歩くのもしんどいや。
俺は彼に担がれた所で意識を失った。
目が覚めました。
どうやら宿で寝かされた所で死に戻りしていたようだ。
部位欠損が戻っている。
ってか死ななかったらどうなるんだろうか。
寝たら治るのかな。
この都市でログアウトをしていて良かった。
最終ログイン地点が、死に戻りのリスポーンポイントになるので、もしログアウトして無かったら俺はだいぶ前の初めの街からまたここまで来なければならなかったのか。
小まめにログアウトしよう。
技が出来ました。クロス系武技です。嘘です。
掲示板回の書き方がわからない。いずれにせよ書いてみますねいずれ。
色々と設定甘いです。克つ適当なので意見があればそれを参考にするので。是非。




