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リベンジ

 意外とこの世界のNPC、要するに住人達の中にも世界を旅する人達は多い。始まりの街には無かったが、冒険者ギルド、もしくはそれに似た様な場所があるのかもしれない。

 休憩していた俺達を追い越していく人達が多かったからな。だが、追い越して行く人達は、何をそんなに急いでいたんだろうか。


 日も暮れて行き、セバスが野営の準備を始め出した。大分慣れて来たな、外でのキャンプも、当然外ではログアウトできない。ログアウトの基準は周囲が安全で安心して眠れる環境でないと行けない事だ。

 ノーマルプレイヤーのみセーフティーゾーンや女神の泉、教会など、ログインログアウト用の安全施設が用意されているが、リアルスキンプレイヤーは外で寝ないと行けないのだ。

 幸い、まだ連続時間ログイン規制にも引っ掛かる事は無いし。ガリガリ進んで行くぞ。


 見張りの時間になる。いつも通りだ。俺、ユウジン、セバスは各々が時間つぶしの為に何かしらの作業をやり出す。

 ちゃんと見張れよって?見張ってるよ。


 おかしな気配を感じた。俺は魔物だったら気配を感じ取れる。神父だからだ。

 いや、意味わかんねーよと思うかもしれないが、最近になって悪意のみだが感じ取れる様になっていた。日々日々神のご加護がパワーアップしてるのかもしれん。

 

「ユウジン」


「なんかいるな。セバス、女性陣を起こしてくれないか?」


 ユウジンも俺の言いたい事を判っていたようだ。セバスは頷くとテントで寝ている二人を起こしに行った。俺はクロスと聖書を浮かべたまま気配のする方向を睨む。


 風を切る様な音がした。


 ユウジンの刀を振るう音だった。踏み込みの音はしなかったが、彼が先ほどまで立っていた地面は大きくえぐれていた。

 そして彼は首だけになったゴブリンを鷲掴みして戻って来た。グロい。


「一匹だけだった。ゴブリンの癖に珍しいな」


 ゴブリンの生態くらいは判る。奴らは群れて、小さなコロニーを作り生活している。何でも殺して食べる。個体の力は弱いが、群れる事に寄ってイナゴの様な天災として恐れられている。

 もっとも、ゴブリンがそこまで巨大なコロニーを作る事はほぼ無いそうだ。魔物の中の最底辺に位置するから大抵共食いまたは、天敵に淘汰されるらしい。国境付近の森はそこまで深くないそうなので、可能性はほぼゼロである。


「はぐれゴブリンってやつ?」


「どうだろうな。偵察だったらマズいかと思って音を立てなかったけど。はぐれにしろ偵察にしろ。移動した方が良いのは確かだぜ」


 ユウジンの意見に賛成する。セバスもそれが判っていたのか、火を消して、テントを片付け出している。

 荷物は全て片付いた。俺たちは移動を開始する。

 その間俺は、いつでも戦闘態勢を整えておく。最近になって、素手で物を殴るより、無駄に多いMPを使い、念動で操作できる様になったクロスを操ってぶん殴った方が強い事が発覚した。STR値が全く持って成長していないって事だと思う。攻撃がトコトンMP依存である。まぁMP高いから良いんだけど。

 クロスは重さを感じさせない。俺の念動はそこまで重たい物を持てない。

 例えばクロスは剣状にしても、重さは変わらず操れるが。ユウジンの刀はダメだった。重すぎるみたいだ。

 念動魔力に強度が出せないのはINTが低いからだ。この欠点はどうして行こうかな。


 と、言うより以前精密鑑定で見たレベル10のときのステータス。DEX中、VIT強、MND超という感じだった。どのRPG攻略にも当てはまらない謎ステータスだった。

 どーすんのこれ。まぁこのまま行くしか無いんだけど。いずれにせよ修正不可である故に。




『ギィイイイイイイイイイイイイ』


 移動を開始して数分。

 少しざわめきが増していた森に、魔物の悲鳴が響いた。ユウジンが言うにはゴブリンの悲鳴らしい。その悲鳴と同時に森の奥が更に騒がしくなってくる。

 ユウジンは自然体で森を見て。セバスは長剣を抜き。エリーも盾と片手剣を構えて。凪は魔導書スキルブックを開き杖を構える。


 俺は既にクロスと聖書を自分の両肩当たりに浮遊させている。


 集中すると急に静かに感じる森の中。初めは乱雑な足音が少し聞こえるくらいだったが、その足音も次第にかなり大きく、数の多い物へと変貌を遂げていく。

 ゴブリンの強襲だ。しかも十数ではなく。数十のゴブリンが、俺たちに向かって突進を仕掛けて来ていた。


 ユウジンも突進する。真っ正面から迎撃するつもりである。距離が有るなら凪の魔法でも良いと思うが、まぁそこまで距離がある訳でもないので、詠唱の時間は稼げないだろう。俺の聖書からヒントを受けた魔導書スキルブックを用いた攻撃でも間に合わない程、ゴブリン達の足はまるで何かに追われているかの様に速かった。


 前線がぶつかる。

 流石のユウジンである。5匹程のゴブリン達を一瞬で切り裂いている。余したゴブリンを俺とエリーが処理し、セバスと凪は支援と後方管理だ。


 違和感が有る。何かおかしいぞこのゴブリン達。俺らを見ていない。気がする。


「ユウジン!」


「お前も気付いたか! こいつらの後ろに何か居るぞ! そいつから逃げてるみたいだ!」


 そう、ゴブリン達はまさに何かに追われていた。俺たちが迎撃しても、こっちを振り返る様子も無く俺たちが逃したゴブリンは、殺される仲間達を無視して森の奥に逃げ去って行く。

 そうして、この空間にはゴブリンの死体と。

 その死体を作った奴らが残った。



 こ、こいつは!

 俺はすぐ鑑定する。エリーやセバス、凪も覚えているようだった。俺は忘れる事も無い。バラバラに吹き飛んだ思い出があるからな。



人食黒虎キラータイガー・ダーク

『人を食べ、その味を占め巨大化・凶暴化したブラックタイガー。夜行性、奇襲の時、闇に紛れられる様にその身体は黒くなっている。闇属性の爪を持つ』


 あ、何か違うけど。

 とりあえずキラータイガーだ!あの時よりすごい黒くて大きくて強そうだ。


「師匠、これはあの時ノ!」


「俺がバラバラにされた時のヤツだな」


「それはごめんってば」


「なんだか知らんがヤバそうだな! だけど仕留めたもん勝ちってことで」


 そう言いながらユウジンは斬り掛かって行った。いや、普通にパーティで協力して倒すボスじゃないのか!おい廃人!勝手に燃え上がってんじゃねーよ。

 ゴブリンとの戦闘で、テンションが上がっているのか、彼はヤバイだったりバラバラにされただったり不穏な単語を聞くと同時にワクワクした様に突っ込んだ。

 バトルジャンキーって言うんだっけ。


 そして彼は意外と善戦し、一人で巨大な虎の片手を切り落とす事に成功した。だが、怒りを増した虎の攻撃はかなり速かったらしく。虎の爪をわずかに腕に擦っていた。

 そして、低いMND値のお陰で、一瞬にして暗闇の異常状態になってしまった。


「やば! 見えない! 暗闇かかった!」


 それでも気配だけで逃げて避ける受け流す彼はステータスこそ追いついてないが、感覚は達人のそれなんだと思ってしまった。

 エリーを彼の支援に回し、俺はクロスを構えて聖書を開いた。とりあえずMND増加の祈りをする。今では思っただけでで聖書のそのページを開いて魔力でその一節をなぞらえる所まで自然にできる様になった。

 そしてクロスを鉾の大きさにする。ただ単に扱いやすいからだ。剣の方が取り回ししやすいけど、こいつの場合。

 あの時鉾で戦っていたから、リベンジの意思も込めて使おう。


 クロスの仕様についてはだいぶ理解したからな。攻撃力だけは一級品だと思う。MND依存だしね。

 虎の攻撃を弾く。そして、鋒の槍になってる部分で突き刺す。距離的には虎の間に鉾、そして魔力操作の空間も含めると中距離戦闘とも言う。さすがにこのクラスの相手に素手で戦闘を仕掛ける事は戦闘馬鹿じゃないから無い。

 素早さに劣る俺は、敵は転がして叩くという戦法を好んで使う。だって避けれないんだもん。


 おちょくる様な俺のクロスの動きに虎は怒り狂う。


「なんか不思議な戦い方デスネ」


「ステータス的には回復系だが、あいつの思考は基本的に前衛だからな」


 そう、俺はあくまで敵前で堂々と戦いたいのである。

 あ、でも無理だったらそれ相応の戦い方するけどね。

 っていうか、攻撃魔法知らないから。出来ないだけ。


 クロスに目が向いてる間に少しずつ距離を近づけて行く。

 いけ聖書さん。俺は開いた聖書を虎の視界を防ぐ様にぶつける。何故か悲痛な叫びが虎から上がる。


「ダメージを受けている様デスガ?」


「あたしもそう見えるわよ」


「闇属性だからじゃね?」


 怯んだ隙に、俺は鉾を握って虎の脳天に叩き落とした。すごい声が虎から響いた。昏倒した様に虎が倒れる。クリティカルヒットか!死んだか?


 どうやら死んでいるようだ。リベンジを果たしたぞ。


「そして本当の敵が今後ろで虎視眈々と魔法で狙ってイルのデスネ」


「だからもうしないってば」


 戦いが終われば平和なもんだ。

 魔力操作をひたすらやっている状況なので、嫌でも魔力を感知する事が上手くなっています。敏感です。日々イチャコラ戯れているので敏感になっているのです。聖書さんもクロスたそも魔力ちゃんも敏感に。

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