希望《6》
麗蘭が目を覚ましたのは、孤校の自分の部屋だった。
「……優……花?」
目覚めた時、最初に目に入ったのは心配そうな優花の顔。
「麗蘭! 良かった、良かったよぉ……!!」
優花は喜びの声を上げ、思わず麗蘭を抱き締めようとする。其れを横で見ていた風友が制止した。
「こらこら優花、無体はよしなさい」
優花を窘めながらも、風友は微笑んでいる。麗蘭が目覚めたのに安心したようだ。
麗蘭は身を起こそうとするが、身体が重く未だに感覚が麻痺している。
「優花が……運んでくれたのか?」
仕方なく寝たまま尋ねる麗蘭に、優花は頷く。
「優花から聞いた。邪龍と戦ったそうだね? 本当に……良く無事でいてくれた」
麗蘭が邪龍と対峙し剣を交えたと聞いた時、風友は驚愕した。黒龍に加え邪龍という存在も、物語でしか聞かない邪悪の名。そんな人智を超えた敵と相見え、戦って斃さなければならないという麗蘭の過酷な宿を、再び思い知らされた気がしていた。
「……奴が本気でなかったお陰で、何とか……でも、一糸も報いることが出来ませんでした」
悔しそうに言う麗蘭に、泣きそうな顔をした優花が言う。
「何言ってんの、無事だっただけ良かったよ……本当に、良かった」
一時はどうなるかと思った。本当に麗蘭が死んでしまうのではないかと思った。
「……ありがとう、優花」
麗蘭は、自分を気遣ってくれる優花を見て微笑む。
……傷が、痛む。
――強く為りたい。何者にも屈することのない本物の強さ。使命のため、自分のため、そして……
麗蘭は、風友と優花の顔を見る。
――私のことを大切に思ってくれる……そして私が大切に思う人たちのために。
心の底で、誓う。漸く得ることが出来た、掛け替えの無い友の前で。
強く、誰よりも強く為ることを――