君へ
まるで、誰にも迷惑をかけまいとしたかのように、それはとても静かな最後だった。
眠っているようなその横顔、今にも起きだしてきそうな姿に、信じられない気持ちで一杯だった。
12年という歳月は、君にとってどんな12年間だったのだろう。
僕は君に何をしてあげられたかな。
こうやって、君の事を思い出すだけで涙が溢れてくるのは、それだけ長い間を一緒に過ごしたということなのだろう。
僕がオスがいいと言い張らなければ、
君が姉妹を乗り越えて近づいてこなかったら、
君を先約していた人がキャンセルをしていなかったら……
このどれか一つでも欠けていたら、君が我が家に来る事はなかったと、今でも思う。
周りの家の人からも、一目置かれていたほどの君。
本当に、君の声だけを信頼してくれていたね。
知ってる?みんな君の為に涙を流して泣いてくれていたんだよ。
今でも家に帰ると左を振り返ってしまう。
家の影から君が飛び出してくるような気がして、いつも見てしまうんだ。
夏に帰ったら、一緒に散歩に行こうって思ってた。
でもそれも叶わなかった。
もっといっぱい遊んであげたかった。
いつまでもずっといてくれると思ってた。
永遠なんてないけれど、それでももう少しだけ、君はいてくれると思ってた。
君がいなくなってしまった事は悲しい。
だけど、向こうで思いっきり君が駆け回ることができるなら、
行けるところまで、思う存分駆け回っていてくれるなら、僕はそれでいい。
我が家を守り続けてくれた愛犬に捧げるものです。
ふと、どうしてもどこかに記録をしておきたくて書きました。