記録2
「アイ、マモル?」
「残念、違います」
「うーん・・・アイシュ?」
「惜しい」
「え、だって守って字に『まもる』と『シュ』以外読みなんて・・・」
「はい、ゲームオーバー」
なんなんだ、こいつ。
勝手にゲームにしてるし。
「アイス、と読ませるんです。それで」
「アイス、ねぇ・・・」
確かに見るからにバニラアイスって感じだ。
肩ほどの髪も白、着ている服装も白、肌も白い。
真っ白だ。その中で唯一、目の色だけが水色だ。
彼の中で、目だけが異様に存在感をなしていた。
「入り口を閉め忘れてましたか…。しかし普通入ってくるようなものじゃありませんよね」
「入り口?あのトンネルのこと?」
「そうです。あそこ、電気もつきますし歩く必要もありませんよ」
「は!?」
私のあの努力が否定された。
何よ、それ。私は不安を感じる事もも足が疲れることも必要なかったって事?
晴日晴日、今挫けそうです…。
「で、不法侵入者さん。お名前は?」
「不法侵入って…」
「立派に不法侵入ですよ。ここ僕の家ですし。犯罪デビューおめでとうございます」
愛守と名乗った男は優雅に紅茶(正確にはミルクティー)をすすりながらしれっと言いのける。
声に感情がない状態でおちょくるもんだから私はどうしても言い返せずにはいられなかった。
「おめでたくないわよ!第一、住んでると思わないでしょ、こんな家!庭は荒れ放題、家は埃が舞い放題!鍵すらかけてないし!」
「ええ、どちらも手入れなんてしていません。あの入り口は通常は閉まっていますから、住んでると思われなくても入ってくる人なんかいないはずなんです」
「手入れしてないって…」
愕然。住んでるならどうにかしろよ。庭はまだしも、家の中くらい。
当然といわんばかりに言い切った。
「もう一度お尋ねしますが、お名前は?」
「…いらない紙とペンある?」
「はい、どうぞ」
渡された真っ白い紙に走り気味で氏名を書く。
それにしても紙はともかく、ペンまで白い。
この部屋の全てのものが真っ白だ。色は、私とこいつの瞳だけ。
名前を書き終え、紙とペンを返す。
ふふん、と得意げに笑みも添えるのを忘れずに。私は名前を呼ばれる時、一回目を正しく呼ばれたことはない。両親を恨んだこともあるが、今だけは感謝感謝。
「・・・ハレカ、ハルカさんですか」
「えっ!?な、何で分かったのよ!!」
「ここら一帯に住んでいる人間のうち、こんな氏名を持つのは貴方しかいませんよ」
「え?何それ、私のこと知ってるって事!?」
「はいそうです知っています。調べることが趣味でして」