白い匂いが消えるまで
僕は黒、猫です。
お母さんは白。
雪の様に真っ白な猫から真っ黒な僕は産まれました。
最近お母さんの体調が良くないみたい。
ご飯もよく残している。
お母さんは心配しないで、大丈夫だからね、と言うけれど苦しそうな顔をは全然大丈夫そうじゃない。
ある日お母さんはどこかへ行ってしまった。
しばらく姿を見ていない。
僕達の体調が悪くなるとご主人が連れていく場所がある。
そこは嫌な匂いがして、他にもいる動物達の阿鼻叫喚が聞こえてくる恐ろしい場所だ。
チクっとする痛いやつをされる時もあって本当に行きたくない。
でもそこへ行くと必ず元気が戻ってくる不思議な場所でもある。
お母さんはきっとそこにいるのかもしれない。
ある日ご主人が泣いていた。
理由は分からないけど、何か悲しい顔をしている。
ご主人は泣き虫なのでこうやって時々泣いている日がある。
またいつもの事だろう。
でも何故だろう。
なんだか今日は僕も悲しい気がする。
とても寂しい。
きっとお母さんに会えていないからだ。
早く帰ってきて。
ご主人が泣いていたあの日から数日。
まだお母さんは帰ってこない。
あちらこちらにお母さんの匂いはあるけれど、少しずつ弱くなっている。
今日は少し変わったことがあった。
いつもの様にご主人がご飯を用意してくれたのだけど、今日はお母さんの分のご飯も用意してある。
きっと今日お母さんが帰ってくるのだろうとワクワクする。
実はもう帰ってきていて、別の部屋にいるのかもしれない。
いつもよりも早くご飯を平らげ、家中を探し回る。
でも見つからない。
どこにいるのかな、まだ帰ってないのかな。
チャリンチャリン。
聞いたことがある音、いつも聞いている音。
お母さんの首輪の鈴の音だ。
気配のする方に行くと少しだけ開いている窓から外へ出ていく、お母さんの姿が見えた。
やっぱり帰ってたんだ。
安堵感と喜びで気持ちがいっぱいになる。
今日は久しぶりに何を話そうか。
そう思いながらお母さんの出ていった窓から外を眺める。
今度は僕の体調が悪くなる番かも。
お母さんの匂いがしないや。
今日も僕は日課である外の観察を続ける。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




