落語声劇「元犬」
落語声劇「元犬」
台本化:霧夜シオン@吟囁亭喃咄
所要時間:約20分
必要演者数:最低3名~4名
(0:0:3)
(0:3:0)
(1:2:0)
(2:1:0)
(3:0:0)【性別準拠人数比率】
(0:0:4)
(0:4:0)
(1:3:0)
(2:2:0)
(3:1:0)
(4:0:0)【性別準拠人数比率】
※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。
よって性別は全て不問とさせていただきます。
(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)
※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品
に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。
それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。
●登場人物
白犬【シロ】:混じりっ気なし、差し毛の一本もない、綺麗な白い毛並み
の犬。人間になりたいと八幡様に二十一日にわたって願を
掛け、ついに願いは聞き届けられて人間の姿を得る。
上総屋:口入れ屋、今でいう職業斡旋所を商売にしている人物。
人情のある人のようで、人間の常識を知らないシロに呆れながら
もいちいち丁寧に教えたり、自分の着物を分け与えたり
奉公先に行くまでのつなぎとはいえ、アジの干物を食べさせてや
ったりする。
番頭:上総屋さんの番頭。
ご隠居:上総屋さんいわく、変わった人間。変わった人物らしく、雇う
奉公人も変わった人間が欲しいという。
参拝客1:浅草の八幡様へ参詣に来た人その一。
参拝客2:↑その二。
語り:雰囲気を大事に。
●配役例
【3名】
白犬:
上総屋・参拝客1:
ご隠居・番頭・参拝客2・語り:
【4名】
白犬:
上総屋:
ご隠居・参拝客2:
番頭・参拝客1・語り:
※枕は誰かが適宜兼ねてください。
枕:全身真っ白な犬というのは、なかなかいないんだそうです。
ことに日本犬で真っ白というのは珍しい。
たまにパッと見で白いなと思っても、ひょいと脇を見ると差し毛が
入ってたりする。
むかしから全身真っ白な犬と言うのは人間に近い、次の世では人間に
生まれ変わってくる事が決まっているという言い伝えがあったんだと
か。
その時分の噺でございます。
語り:浅草の蔵前八幡様の境内に、一匹の白い犬が紛れ込んできた。
これが文字通り差し毛の一本もない、真っ白な毛並みだったもんで
すから、参拝に来る人間たちがシロ公なんて呼んで大変に可愛がっ
た。
参拝客1:おい見なよ。
話には聞いてたけど、こんなに綺麗だとは思わなかったね。
おいシロ公!こっち来なよこっち!
おぉ来た来た!
参拝客2:ほんとだよ、綺麗なもんだねえ。
なんたって人間に近いってんだからね。
それにまた人懐っこくて可愛いもんだ。
おぅよしよし。
白犬:嬉しいなァ、みんなして綺麗だ綺麗だって可愛がってくれてさ。
お前は人間に近いんだ、次の世では人間に生まれ変わって来いよと
か言ってくれるよ。ありがたいなあ。
…だけど、次の世じゃつまらないなぁ。
今すぐ人間になってみたいもんだね。
なんとかならないもんかな…?
…そうだ、ひとつ八幡様にお願いしてみようかな。
語り:なんてんでその日から三七二十一日の間、シロ公は八幡様に
裸足参りをいたしました。…もっとも犬なので履き物なんて履いち
ゃいませんが。
そして満願日の二十一日目の朝。
白犬:八幡様、八幡様、どうか今すぐ人間にして下さいませ…。
…!?おやっ、風がさーーっと吹いて来たぞ……ッ!?
へっ、へっくしょい!!
うぅ寒い…なんだろ、今朝はやけに体がすーっとして寒いな…?
えっ!?あらっ!!?体じゅうの毛が抜けてる…!?
なんか悪い病にでもかかったのかな…!?
!あっ、そうじゃない!人間になった、人間になれたんだ!
八幡様、ありがとうございます!
ありがたいなぁ人間になれたよ。
そうだ、立てるかな?どっこいしょっと!
お~やっぱり見える高さが違うね。
歩けるかな?
おぉ~っほほ、犬の時より歩幅が全然違うよ。
嬉しいねえ。
…けど、人間ってな裸じゃいけねえんだよな。着物を着なきゃいけ
ないけど、着物なんか持ってないや。
弱っちゃったな…あ、そうだ!みんな八幡様に手ぬぐいを納めて
いってたっけ。
八幡様、この手ぬぐいをお借りします!
よしよし、これでなんとか格好がついたけど…人間てのは働かなく
ちゃ食べていけないって言うよ。
でも、人間に知り合いなんていないし働き口もない…誰かいないか
な……。
あ、むこうから来るのは口入れ屋さんだ。
犬の時分にはよく可愛がってもらったっけ。
あの人に頼んでみよう。
どうも、おはようございます!
上総屋:おぉ、おは…っ!?
な、なんだいお前さん、この寒いのに裸になって…。
いったいどうしたんだ?
白犬:あ、あ~…その…
上総屋:ははあ、なんか悪い奴にでもひっかかったんだね?
かわいそうに…。
それで、あたしに何か用かい?
白犬:えっええ!実はどっかで働きたいんです。
上総屋:なに、奉公先を探しているのかい?
へえぇそりゃちょうど良かった。
いや、あたしはこの先でね、上総屋という口入れ屋をしてるんだ
。
あたしがひとつ、世話をしようじゃないか。
白犬:ありがとうございます!じゃあさっそく行きましょうーー
上総屋:【↑の語尾に喰い気味に】
ぁあちょいとお待ち。
その格好で一緒に歩かれては人目について困るね。
なんだいその腰に巻いてるのは?
白犬:あ、そこの八幡様からちょいとお借りしたんで…。
上総屋:え、納め手ぬぐいなのかい?
それはいけませんよ、バチがあたる。
うーん、しょうがないね…それじゃあたしのこの羽織を着なさい
。しばらく貸してあげよう。
白犬:えっあっ、あ、ありがとうございます…。
…え、えぇっと……。
上総屋:おぉいおい、なに羽織を頭からかぶってぐるぐる回ってんだい。
白犬:あ、あの、あっしはその、羽織を着た事が無いんで…。
上総屋:なに、着た事が無い?へえぇそうかい、それはいいや。
まぁまぁ、羽織なんぞ来てぞろっとしたなりで遊んで歩いてた人
に、奉公なんてのは大変だからね。
あぁそれじゃ働き者なんだね、けっこうな事だ。
とりあえず羽織って前を合わせときなさい。紐なんてどうだって
いいから。
…あ、見えてきたね。あの上総屋ってのがあたしの家だよ。
あたしは表から入るから、お前さんは裏から入りなさい。
白犬:あ、はい!裏の勝手口ならよく知ってますんで!
上総屋:なんだ、そうなのかい?
白犬:ええ、ちょくちょくうかがってるんです。
こないだもうかがったんですけど、女中さんに水をぶっかけられち
ゃったんで。
上総屋:え、うちのお清がそんなことをしたのかい?
そりゃすまなかったね。
あたしからよく言っておくから。
まあとにかく裏へ回っておくれ。
はい、ただいま帰りました。
番頭さんはいるかい?
番頭:おかえりなさいまし。
?旦那様、ずいぶんお早いですね。
上総屋:ああいや、まだ向こうまで行ってないんだ。
実は浅草八幡様の境内で若い衆さんに会ってね。
なんか悪い奴にでも引っ掛かったんだろうね、裸で腰に手ぬぐい
を巻き付けたっきりでいるんだ。
それで奉公口を探しているって言うんだ。ちょうどその口があっ
たから、連れて帰って来たんだよ。
番頭:え…八幡様のところで裸ですか…?
旦那様、大丈夫ですかね…?
上総屋:ああ心配ないよ。なかなか正直そうな男でね。
白犬:あ、あの…。
上総屋:あぁお前さん、こっちだ!
そこからお入りぁあっとっと!そのまま上がってきちゃいけませ
んよ。裸足で歩いて来たんだからね。
そこに手桶と雑巾があるから、足をよく洗っておくれ。
白犬:へ、へい!
それじゃ…
上総屋:洗ったかい?じゃぁあっと!そのまま上がっちゃいけませんよ。
その雑巾でちゃんと足を拭きなさい。
白犬:へ、へい。
こ、これでいいですか?
上総屋:ぉおいおいお前さん、いちいちそう言われるようじゃいけません
よ。後始末をちゃんとしなくちゃいけないよ。
使いっぱなしてのが一番いけない。
雑巾はちゃんと綺麗にゆすぐんだよ。雑巾をゆすいでゆすいだ水
をなぜ飲むんだい!?
白犬:ぅえっ、えっ?あっ、ダメなんで?
上総屋:汚い事をしちゃいけませんよ。
ほんとにしょうがないねぇっておぉいおい!
お前さんね、その濡れた顔を細かにブルブル振るんじゃないよ!
水がはねちゃったじゃないか。
とりあえず雑巾をきゅっと絞ってこう広げて拭きなさい。
こう這うように、這うように…って上手いねおい。
這ってる形なんてなかなかいいじゃないか。
じゃ、あとをかたしてこっちへ来なさい。
お前さん、お腹すいてるだろ。裸でいたぐらいだからね。
おまんま食べるかい?
?食べるかい?
…なぜ返事をしないでお尻を振るんだい?
白犬:え、あの、嬉しい時にはお尻を振るんで。
上総屋:?変わった人だね。
おぉい、なんか食べさしてやっとくれ!
番頭:今朝の残り物でよろしいですか?
上総屋:あぁなんでもいいんだよ。繋ぎだから。
何があるんだい?
番頭:たくあんのおこうこがあります。
上総屋:ああそれでいいよ。
お前さん、たくあんのおこうこでいいかい?
白犬:え?オコウコ…?
…あの、実は食べた事が無いんで…。
上総屋:えっ、おこうこ食べたこと無いのかい?へぇ…。
他に何があるんだい?
番頭:アジの干物があります。
上総屋:ほぉお、そりゃ豪儀なもんだな。
それでいいから食べさしてやんなさい。
干物ならどうだい?
白犬:へ、へい、大好物でございます…!
なんでしたら頭からいただいちゃうくらいで…。
上総屋:へえ、たいそう歯が丈夫なんだね。
白犬:へい、噛みあったって負けたことが無いんで。
上総屋:いや、噛みあったりしちゃいけませんよ。
恐ろしいね。
食べたかい?
白犬:へい、いただきました。
上総屋:そうかい。
あ、そうだ番頭さん、着物を出してやっておくれ。
番頭:え、旦那様のですか?
上総屋:あぁそうだ。背格好が同じだからちょうどいいだろ。
下帯から一式、そっくりやっておくれ。
番頭:承知しました。
上総屋:あぁお前さん、この着物をお前さんにやるから、とりあえず
着なさい。
まず下帯、ふんどしからしめるんだよ。
白犬:へ、へい。
…えぇと……
上総屋:そこにあるだろ、長いのが。それを締めるんだよ……って
何をしてるんだい、ふんどしを首に巻いて。
白犬:えっ、どこかへ連れてって下さるん、ですよね…?
上総屋:何を言ってるんだい。ふんどしを締めるんだよ。
白犬:え、いえ、あの…ふんどしを締めた事が無いんで…。
上総屋:ふんどしを締めた事が無い!?無いの!?
しょうがない人だね。
あたしが締めてやるから、こっちへ来なさい。
…よし、次は襦袢だ。
白犬:へい。
…。
これでいいです?
上総屋:そうそう、次は着物を着て。前を合わせるんだ。
左を上にして…そう、袖を通して…
白犬:へ、へい…っこ、こうで…?
上総屋:そうだよ。あのね、いちいちそうあたしに何か言わせないで、
着物くらいスッスッと着なさいよ。
ほら、帯を締めて。
白犬:お、帯…。
っ、こうっ、ですかっ…?
上総屋:なんで帯をくわえて振り回すんだい!
白犬:あ、つい癖で…遊んでました。
上総屋:遊んでちゃいけないじゃないか。早く帯を締めなさいよ。
白犬:あっあの…実は締めた事がないんで…。
上総屋:帯を締めた事がない!?
今までどんな格好していたんだい…。こっちへ来なさい。
締めてあげるから。
…よし、これでいい。なかなかよく似合うじゃないか。
白犬:あ、ありがとうございます。
上総屋:えぇとそれで、お前さんの奉公口なんだけどね、
あたしの知り合いのご隠居さんがいるんだ。
これが大変に変わった人でね、ただの奉公人じゃ嫌だ、
変わった奉公人が欲しいって言うんだ。
そこへお前さんを連れていくよ。
番頭さん、先にご隠居のとこへ行ってきちゃうから。
番頭:はい、いってらっしゃいませ。
上総屋:よし、それじゃ…ってそうだった。
お前さん裸足だったね。
じゃあそこの古い下駄を履いて。
白犬:へい。
ーーぁぐっ。
上総屋:おぉいおい、くわえてどこへ持っていくんだい!
ちゃんと足に履くんだよ!
白犬:あっ、つ、つい…。
上総屋:うん、それでいい。
じゃあ行きますよ。
いいかい、向こうではご隠居がおモトさんという女中と二人で
暮らしているんだ。仲良くやるんだよ。
で、こっちーーってそっちじゃないよ!
どこへ行くんだい!こっちだよこっち!
っ電信柱に片足上げて用を足すんじゃないよ!
白犬:へっ!?あっ、す、すいません…。
ふんふん、ふん…。
上総屋:においを嗅ぐんじゃないよ!
ほんとにしょうがないね、こっちへ来なさい!
白犬:へ、へい…。
犬の時の癖がなかなか抜けないや…。
上総屋:まったく、恥ずかしい事をしちゃいけないよ。
あぁ、この家だ。
ちょっとここで待っていなさい。
えぇ、ごめんください!
ご隠居:はいはい!
おぉ、これァ上総屋さんか。
さぁさぁ、こっちへお上がんなさい。
上総屋:えぇ、長い事お待たせいたしました。
奉公人の件ですが、見つかりました。
ご隠居:おぉそうかい!楽しみに待っていましたよ。
それで、変わってるのかい?
上総屋:ええ、変わっております。
ただ今こちらに。
おぉい!―――っ!?
ご覧なさいご隠居。
敷居の上にあご乗っけて寝てるでしょう。
あれがそうなんです。
ご隠居:はあぁなるほど、これァ変わってるね。
上総屋:おぉい!そんなとこで寝てないで、こっちへ上がんな!
白犬:!っへ、へい!
上総屋:えぇ、もうほんとに変わってぇってっ!
飛び上がって来るんじゃないよ…!
たいそう遠くから飛び上がってきたね。
ほら、ちゃんとご挨拶するんだ。
白犬:へっへい。
…こんにちわ。
ご隠居:はいこんにちわ。
ほぉ、なかなか色の白い、綺麗な若い衆さんだね。
?どっか体の具合でも悪いのかい?
白犬:?い、いえ…?
ご隠居:悪くなかったら初めてきた家だ。ちゃんとお座りよ。
遠くから飛び込んで来て、畳のにおいを嗅いで。
ぐるぐる回って横っ倒しになって舌を出してはァはァしてたら
具合が悪いと思うだろ。
白犬:あっ、へ、へい…。
ご隠居:まぁまぁいいよ。
それじゃあ上総屋さん、しばらくうちで働いてもらって、なんか
悪い所があったらすぐに知らせますからぁっておぉいおい!
一緒に付いていってどうするんだい!
うちで働いてくれなくちゃいけないんだから。
白犬:あ、ど、どうも相すいません。
馴れるとすぐ後を付いていってしまいたくなるもので…。
ご隠居:そういうのは困るよ。
ところで名前は?なんてんだい?
白犬:あ、あの、シロと言います。
ご隠居:シロ…?白吉?白蔵?白太?
なんてんだい?
白犬:いえ、ですからシロってんです。
ご隠居:いや、だからなんか付くんだろ?
何とか四郎だとか、四郎なんとかって。
白犬:いえあの、ただシロなんで。
ご隠居:多田四郎?
いい名前だなあ。
それで、生まれはどこだい?
白犬:あ、あの、蔵前の八幡様で。
ご隠居:蔵前の八幡様?
なんだ近いね。それで、どのへんだい?
白犬:え、えぇと、脇の八百屋と乾物屋の間へ入っていった、
裏の長屋で。
ご隠居:ほぉ、世の中せまいね。
あすこはあたしのだよ。
どこの家で生まれたんだい?
白犬:あ、あの、突きあたりで。
ご隠居:突きあたりってと、掃き溜めじゃないか。
白犬:え、えぇその、掃き溜めで生まれたんで。
ご隠居:ははは…自分の生まれたところを卑下して言うとは、
これァ恐れ入ったね。
うちはね、あたしとおモトという女中の二人暮らしでね。
まあ犬も朋輩、鷹も朋輩だ。
仲良くやっておくれ。
白犬:へっ?鷹がいるんですか?
どこにいるんです?
ウウゥゥ…!
ご隠居:唸ってるよ。
鷹なんぞいやしないよ。
あーそれで、おとっつぁんとおっかさんはどうしたんだい?
白犬:おとっつぁん…?
あ!オスですか?
ご隠居:な、なんだいオスって。
おとっつぁんはどうしたってんだい?
白犬:おとっつぁんは…どれがおとっつぁんだかよく分からない…。
噂によると酒屋のブチじゃないかって…
ご隠居:何を言ってるんだい…。
じゃあおっかさんは?
白犬:おっかさんは二、三年前、毛並みのいいのが来たら後を付いてっち
ゃったんです。
ご隠居:変な家だねどうも。
じゃあ今はお前さん一人かい?木から落ちた猿だな。
あぁおモトが帰ってくるまでな、ひとつお茶でも入れて待ってよ
う。
ちょうど鉄瓶の湯が沸いてるから、ちょいと下ろしとくれ。
蓋をきってな…って何してんだい、ぼんやりしてちゃダメだろ。
白犬:え…え…?
ご隠居:ほら、鉄瓶の湯がチンチン言ってるだろ。
白犬:チンチンは…あんまりよくできないんで。
ご隠居:な、何を言ってるんだい…ってほら、鉄瓶がチンチン言ってるだ
ろ!
白犬:あ、そ、そうですか…それじゃ、上手くないけど…こんな
ところで。
ご隠居:何をやってるんだい!
あぁもういいよ、あたしがそれをやるから!
あのな、茶を焙じるんだ。うしろの茶箪笥から焙炉を出してくれ
焙炉!
白犬:ウウゥゥ~~…!
ご隠居:な、なんだい唸って。そうじゃないよ、茶を焙じるんだ。
焙炉だよ焙炉!
白犬:ウウゥゥ~~ワンワンッ!ワンッ!
ご隠居:なんだいどうしたんだ!?気持ち悪いな!
おぉい!誰かいないかい!?
おモトや!おモトはまだか!?
モトはいぬか!?
白犬:へい、今朝ほど人間になりました。
終劇
参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)
古今亭志ん朝(三代目)
※用語解説
・差し毛
動物の毛並で異なる色の毛がまじること。またその毛。
・蔵前八幡
一般的には『蔵前八幡』『東石清水宮』と呼ばれており、江戸城鬼門除け
の守護神、徳川将軍家祈願所の一社として篤く尊崇されていた。
・納め手ぬぐい
神社や寺に奉納した手拭い。願主の名前や紋などを入れて、御手洗のとこ
ろなどにつるしておく。
・口入れ屋
奉公人を探す雇い主と、働き口を探す人を仲介する職業斡旋業者。
店先に「口入所」などの看板を掲げ、奉公人を求める商家や武家から依頼
を受ける一方で、仕事を探す丁稚候補や女中志望者、日雇い希望の人々の
情報も集めていた。
・若い衆
この噺では年が若い男。
・おこうこ
漬物。
・襦袢
着物の下に着る和装用の下着のことで、着物を汗や汚れから守り、
着心地を良くする役割がある。
・焙炉
焙炉という道具(木の枠に和紙を張り、炭火で加熱する作業台)を使い、
蒸した茶葉を手揉みしながら遠赤外線で乾燥・焙煎する伝統的な製法。
独特の香ばしさと甘み、渋みの少ない濃厚なうま味が生まれる八女茶など
の高級茶の製法を指す。焙烙とも。
…某封神なんとかにでてくる、処刑道具の事ではない。
村上水軍が使った火薬玉の事でもない。
・犬も朋輩、鷹も朋輩
身分や役割が違っても、同じ主君に仕える者同士は平等な仲間である、
という意味のことわざ。




