民芸からくり
「民芸品とラジコン、どっちが好き?」
(赤い紙と青い紙、どっちが良い?)
年を重ねて視力の低下を感じ始め、今の職を手離そうかと考えている克だが、後継ぎの心当たりが無い。
克は現在、観光地の土産店で売られる民芸品を手作業で造る仕事に就いている。
造っている品は主に昔ながらのでんでん太鼓や風車といった、今の時代では不人気の物。
民芸品で人気がある品だと、進化を遂げ競技にもなっている剣玉くらいなものだ。
(後一年造り続けて、それでも変化がなければ民芸品から手を引こう!)
長い間作業に専念してきた仕事場で、克は固い決意をする。
決意を胸にこの日の作業を始めようとした時、仕事場の固定電話が鳴った。
〈ジリリリリリ!〉
「はい、民芸工房『あおぞら』です」
電話の位置は瞬時手に取れるよう、作業場の脇に設置している。
『もしもし、克?
久しぶり、徳和だよ!
元気してる?』
小学校からの親友、徳和からの電話だ。
高卒以来会っていないが、年賀状のやり取りは続いている。
「おおっ……徳和!
久しぶりだな!
突然どうした?
こっちは元気だ」
幼馴染みからの電話を受け、克は忽ち元気が出てきた。
束の間の元気でも、深い関係を持つ相手からの連絡は力になるもの。
『俺が今、孤児院『種の家』で働いてんの知ってるよな?
それについて、頼み事があるんだ』
「……なるほど、そうか、頼まれた!
他ならぬ幼馴染みの頼みだ。
必要な知識に関して専門的な人にも声をかけてだ……」
『ありがとう……こっちも知識がある人、何人かに声かける』
受話器を置いた克の指は、電話機の番号を押した。
「もしもし、ユミさん?
確か、ソノシートについて詳しいよな?」
「輝彦兄さん、ヨーヨーの糸について……」
「御無沙汰しています、聖先生。
マジック教室ではお世話になりました。
御聞きしたい事が……」
心当たりのある専門的な知識を持つ人々に連絡を入れ、様々な情報を入手していく克。
そして数ヵ月が経過する。
孤児院『種の家』を訪れた克と幼馴染みの徳和、それに他の従業員達も集まり、克が造り上げた玩具を並べた卓上前に佇んでいた。
「―それで、このでんでん太鼓ですが、こんな風に太鼓の部分を廻すと、風車に変身します」
「わあっ、玩具が変身?」
「カッコいい‼
手品みたいね!」
「マジック教室の先生に、仕掛けをこっそり聞いたんです」
「いいなあ、そんな人と仲が良くて」
児童達は克の人間関係を羨ましがる。
「皆さんも良い繋がりで生きています。
『種の家』で、ね。
そしてこのヨーヨーを廻すと……」
〈♪~~~~~~~~~~♪〉
木製のヨーヨーを、今度は徳和が廻す。
するとヨーヨーから、曲が流れ出した。
「音が出てる?
オルゴールみたいだ」
「この曲知ってる‼
『ガボット』だよな」
小さな子でも楽しめる曲を、ヨーヨーに仕込んである。
「ヨーヨーの間に糸が絡まない程度に突起があって、糸が伸び縮みする度、曲が流れるように造られているんです」
玩具の仕組みについて、皆は真剣に聞き入っている。
児童の中には『感覚』でしか玩具を楽しめない子がいる。
克、徳和とが手を組んで、考え抜いた品だ。
「皆さんも色んな玩具の良さを、今日という時間を通して楽しんで下さいね」
説明があらかた終わると、児童達は一斉に玩具目掛けて駆けてきた。
その中の一人の少年、ミチオが、克に声をかける。
「おじさん、まるで玩具の仙人だね。
ボクにも造り方を教えて」
(仙人?)
「早くも後継ぎが出来そうだな」
徳和が嬉しそうに克を持ち上げる。
まんざらでもないが、先の事はやはり分からないもの。
「玩具の造り方に興味を持ってくれて嬉しいです。
先ずは遊びながら、玩具の手応えを楽しんで下さいね」
玩具を語る克とそれに関心を持つミチオの笑顔は、そっくりと云って良いくらい無邪気さが重なっていた。
音が鳴るヨーヨー、在れば良いですね
『ガボット』の曲は、「タタタタタタタタ、タン、タン、タン」です
文ですと伝わりづらいですので、各々自由にお調べ下さいね




