表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/15

幽霊と過ごす夏休みの始まり

 本を読んでいると、家の外から元気のいい女の子の声がする。どうやら回覧板を持ってきてくれたらしい。

 声の主はポニーテールの女の子だった。

 何度か見ている古い映像のような夢。今回は本好きの女の子の視点だった。ポニーテールの子、もう少し顔がはっきり見えれば誰かわかりそうなのに。この家もどこかで見たような気がする。


 トオコちゃんと会ってから見るようになった夢だ。今度はちいちゃんと初めて会ったときだ。

 ちいちゃんが回覧板を持ってきて、おばあちゃんがちょっと留守にしていたから私が出て。

 回覧板を回すようなご近所さんなら小さいころから知っているはずだ。なんで私もちいちゃんも中学生くらいなんだろう。

 夢を見ると過去を思い出すが、断片的でわからないことが多い。自分のことなのにもどかしい。


 期末試験の返却も終わりもうすぐ夏休み。運動部と一部の文化部は合宿やら大会やらで大変そうだ。

 トオコの書道部は作品を応募した展示会にみんなで見学しに行くだけだ。おかげで夏休み中は時間に余裕がある、言い換えると暇である。そのためお母さんからあることを言いつけらた。


 「夏期講習いけって言われた」

 「仲間だ! いっしょにがんばろ」


 前から参加予定のアサミちゃんには喜ばれた。トオコが行けと言われた夏期講習はアサミちゃんの塾のものである。友達がいるところなだけマシと思うことにする。


 トオコの試験結果は悪くはなかった。でも良くもなかった。今まで通りの人並みの成績である。

 それで夏休みは暇してるのだから、試しに行ってみなさいということになってしまった。


 「トオコちゃんが行くならうちも言われるかも」


 トオコとトモちゃんは小学校からの友達、母親同士の交流もあるのでその可能性は十分ある。

 夏期講習はお盆の時期に一週間ほどだ。せっかくの夏休みに勉強だなんて、とか思いつつも来年に備えて行ってみたほうがいいのかなという気もしている。


 夕食のときお母さんがおばあちゃんに言った。


 「そうだチズちゃん、お盆帰って来れるって電話ありましたよ」 


 チズちゃん、遠野千鶴子はお父さんの妹でトオコの叔母さんにあたる。お父さんとは年が離れており、その分トオコと近いのでおばさんというよりはお姉ちゃんのような感じだ。


 トオコが幼い頃は同じ家に暮らしていたけど、高校を卒業すると都会の会社に就職して家を出て行った。トオコのことは可愛がってくれていたし義理の姉であるお母さんとも仲が良かった。少なくともトオコにはお父さんよりお母さんとチズちゃんの方が仲良さそうに見えた。


 チズちゃんなら歓迎だ。末の娘に会えるおばあちゃんも嬉しそうである。


 「お盆はどれくらいいるんだろうねえ」


 前回、今年のお正月は日帰りだった。挨拶してトオコにお年玉を渡してあっという間に行ってしまった。


 去年のお盆は都合があわなくて帰ってこなかった。あまり帰ってこない、来ても短時間なのは仕事が忙しいのか都会が楽しいのか、田舎で中学生をやっているトオコにはわからない。

 

 自室に引っ込んでから寝るまでのユウちゃんとのおしゃべりの時間、夕食の時の流れでトオコの親戚と遠野家のお盆の話になった。


 「トオコちゃんちはたくさん人がくるの?」

 「うん、お父さん長男だから。お父さんのきょうだいが家族でくるんだよね」


 小さい頃はいとこたちと遊ぶのも楽しかったけれど、最近はお茶やご飯の用意を手伝うことになったりして遊んでばかりいられない。今年は夏期講習に行くのでお手伝いは減るはずだ。勉強とお手伝いどっちがマシだろう。


 「ユウちゃんは夏休みとかお盆とかどうしてた?」

 「うーん、親戚の集まりとかはなかったかなあ」


 思い出せているのはちいちゃんのこと、本を読んでいたことくらいで大勢で集まっているような記憶はない。たくさん親戚がやってくるというのはどんな景色だろう。


 『〜した記憶がない』と感じるものは、思い出せないのではなく経験していないことではないかと思うことがある。トオコについて行ってる学校は楽しいが懐かしいというより憧れに近い気がする。

 記憶を辿るのはやめて話に戻る。


 「チズちゃんてどんな人? 親戚のお姉さん?」

 「お父さんの妹なんだけど、私のとの方が年近くて……」


 トオコちゃんにはきょうだいはいないけど、チズちゃんという人がお姉ちゃんみたいなものらしい。

 お姉ちゃん子の妹みたいで微笑ましいな。なんだか前にもこんなことを思った気がする。



 本好きの女の子とポニーテールの女の子が話している夢だ。何回目だろう。


 「……ちゃんはその子が可愛いんだね」

 「末っ子だからさ、妹できたみたいで嬉しいんだよね」


 ポニーテールの女の子が妹(仮)自慢をしているようだ。

 前より会話がはっきり聞こえるようになったけど名前は聞き取れない。末っ子の女の子に妹みたいな存在って、チズちゃんと自分みたいだ。

 

 ちいちゃんと話している夢だ。何回目だろう。


 「末っ子だからさ、妹できたみたいで嬉しいんだよね」


 学校の話を聞くことが多いけど、家族の話も聞いたことがある。これはその時の記憶だ。

 ちいちゃんは私と違ってきょうだいがたくさんいる。一番上のお兄さん夫婦がいっしょに住んでいて、小さな女の子がいるそうだ。

 ちいちゃんに懐いている小さい子、微笑ましいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ