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夏期講習とチズちゃんの帰省

 宿題やって友達と遊んでタローの散歩してそうめんを食べている間にお盆が近づいてくる。今までの夏休みと変わらないけど、今年はユウちゃんのことがある。チズちゃんとの再会はよいものになってほしい。具体的にどうなったらよいのかはわからないけれけど。


 二人の再会に関してはいろいろ考えても、トオコにが現実的にやることと言えば同時期にやってくる夏期講習だ。もらった時間割をながめる。


 「うわー、休み中なのに授業だ……」


 学校と違って受験に必要な科目しかないので勉強の密度が高く感じる。これの前後に宿題やる気は起きない。計画から大きく外れない程度には進んでいるので大丈夫なはず。


 「夏期講習って大変そうだねえ」


 いっしょに時間割を見ていたユウちゃん、本当に気になっているのはチズちゃんのことだろう。

 もう明後日には夏期講習開始でチズちゃんが帰省してくる。トオコが塾から帰ってくることには家にいる予定だ。当事者でもないのになんだか緊張してくる。



 「トオコ、忘れ物ない?」

 「大丈夫だよ」


 夏期講習の初日だ。塾まではそれなりに距離があるので送り迎えをしてもらう。トオコだけでなく親に送り迎えをしてもらう生徒は少なくない。町内に塾の数が少ないので、遠距離になりがちなのだ。


 塾に着くとすぐにアサミちゃんに会えた。初めての場所でも、慣れている友達がいるので心強い。ちなみにトモちゃんは部活が忙しく参加を見送った。


 「中二の教室は二回の奥だよ」

 「他の学校の子もけっこう来てるね」


 運動部は大会とか練習試合で他の学校とも交流があるようだけど、トオコの所属している書道部ではほぼない。小学生の頃に通っていた書道教室は近所の子ばかりだったので顔見知りだけだった。トオコにとっては新鮮である。


 授業内容は一学期の復習、後半には応用などもやるそうだ。初日の今日は復習のみだったので特別難しいこともなかった。


 「うわっ地味に忘れ物した」


 出かけるときお母さんに大丈夫と返事したのに。


 「え、どしたの何忘れたの?」

 「シャー芯切れちゃったのにケースの中からっぽ」


 アサミちゃんが笑いながら一本くれた。地味な失敗はあったけど初めての夏期講習はなんとか無事に終了した。


 トオコについてきていたユウちゃんは学校ほど楽しそうじゃなかった。塾だからなのかこの後のチズちゃんとの再会に気を取られていたのかはわからない。


 塾の外に出ると迎えの車が何台もきていた。その中にお母さんの車が見えたので駆け寄る。


 「トオコ、お正月ぶり! 大きくなった?」


 運転していたのはチズちゃんだった。アルバムの写真たちとは違う、今のチズちゃん。


 予想より少し早い再会になった。


 「チズちゃん! もうそんなに変わらないよ」


 成長期であるものの男子の声変わりみたいなわかりやすい変化はない。トオコは身長も体重も小学生の時の方が伸びていた。体重はもう増えなくていいけど。


 「夏子ちゃん忙しそうだから迎えにきたよ。夏期講習とか今の学生は大変だねえ」


 夏子ちゃんとはトオコ母のことである。チズちゃんは名前で呼んでいる。


 チズちゃんは今日のお昼すぎに家についたそうだ。家までの数分でお昼過ぎから迎えに来るまでの話をしてくれた。タローは最初は吠えたのに、チズちゃんとの散歩は大はしゃぎで行ったとか。


 チズちゃんと会えて嬉しいが、すぐそばにいるユウちゃんが気になる。チズちゃんの様子を見る限り見えていなさそうだ。せっかく会えたのに。


 トオコたちが帰宅するとすぐに夕飯になった。お父さんは今日まで仕事で遅いので女四人でおしゃべりしながらである。トオコの夏期講習初日の感想を聞かれたり、チズちゃんの近況を聞いたりした。


 「五月だったかな、仕事先で柚原さんにあったよ」


 とチズちゃん。ユノハラさん、この辺りでは聞かない苗字だ。


 「上のおばあちゃんの娘さん、でしたっけ」


 とお母さんがおばあちゃんに聞く。


 「一番上の娘さんの嫁ぎ先が柚原さんだねえ。珍しい苗字だから覚えてるよ」


 上のおばあちゃんはトオコが物心ついた頃には一人暮らしをしていた。旦那さんに先立たれて子どもたちも全員家を出ているというのは聞いたことがある。たまに親戚の人が来ているけどそのうちの誰かだろうか。


 家を離れて人の多いところで暮らしていても仕事で地元の人と偶然会うなんてこともあるんだなあ。


 「なんか懐かしいなあ。学生時代の夏休み思い出しちゃう」


 寝る前にトオコの部屋に遊びにきたチズちゃんが言っていた。


 「会社員でも夏休みあるでしょ、そんなに違う?」

 「違うよー! 特に夏休み、一ヶ月以上のお休みなんてないからね。宿題もないけどさ」


 大人の夏休みは短いと知ってはいるものの、中学生のトオコにとっては実感はない。大人になったら宿題なくても休みが短いんだなあ。


 「特にトオコみてると懐かしくなるなあ。中学生かーいいなー若いなー」

 「どうしたの急におばさんみたいなこと言って」

 「いやー私トオコの叔母さんだよ、お父さんの妹だよ!」


 なんて冗談を言い合って楽しくおしゃべりした。でも懐かしいと繰り返すチズちゃんはいつもと違うような気がした。


 ユウちゃんとは寝る直前に少しだけ話した。今日は夏期講習にチズちゃんにと二人になる時間がなかったので会話ができたのはこのときくらいだ。


 チズちゃんがユウちゃんを見えてない様子だったのが気になったけれど、意外なことを言った。


 「ユノハラって苗字、知ってる」

 「上のおばあちゃんの娘さんだっけ、ユウちゃん親戚?」


 それならチズちゃんと出会っていてもおかしくない。


 「かもしれない、もう少しで思い出せそうなんだけど……」

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