さぁ、一体なんでしょう?
(やばい、やばいよね。絶対に怒られる……)
ロザリーは貴族の仮面が剥がれかけるほどに焦っていた。
なぜなら、ソファーでうなされている第3王子であり、婚約者であるセシルのみぞおちに、クリティカルヒット☆をお見舞いしてしまったからである。
王宮メイドたちは何も言わず、沈黙を保っている。
ガチャリと開かれたドアに、警戒心MAXのロザリーは殺気だった目でぐりん!と振り返った。
「はぁーーー……ロザリー。」
相変わらずイケオジな父がおもいっきしため息をついた。
(きゃー!!イケオジのため息うめぇ~!!おかずになるぅ!!!……て、ちゃうわ。怒られるんじゃん。脳内で白米食ってる場合じゃねえよ。)
ロザリーは父に向き直る。その顔はロザリーは気がついていなかったが、まるで叱られる犬のようにシュンとしていた。垂れ耳が見える程に。
「もーーー!ロザリー!!よくやった!!!」
「え????」
ロザリーの口から驚きすぎて超低音のえ????が出た。もう少しではぁ?というところであった。
テンション上がりすぎて若干オネェ口調の父はまくし立てる。
「そこのポンコt……違った、セシル様と婚約『白紙』よ!!よくやっt……違う、残念だけど!!」
(言い間違いが過ぎるね。父上。隠せてないし、後ろのメイドさんが頑張って堪らえようとこっそり自分の手の甲をつねってるよ?)
父曰く。先ほどロザリーがセシル殿下にクリティカルヒットをして差し上げていた現場をみた父は、速攻で王に奏上に行った。『そっちの息子さんがうちのかわいい娘に殴りに行ったら、うちの娘が拒否した拍子に打ちどころが悪く倒れてしまった。』と。
王は息子の不始末に苦い顔をし、王妃は息子を傷つけたと聞き烈火のごとく怒り出しそうだったそうな。
結果、『このまま婚約するわけにはいくまい』と、ゴリ押しで王命された婚約が、撤廃されたのだ。
(こんなご都合主義な事あるか??)
しかし、よく考えてみてほしい。
原作でロザリーは、『傾国の赤い薔薇』と呼ばれるほど浪費癖がある娘に育ったのは何故か。
もちろんハートウェスト公爵家が鉱山持ちで、さらに王都に次ぐ都会であるためにかなーり裕福で、国家予算?だから何?みたいな財政状況だったこともある。
だと言えどもそれだけでは傾国と言われるほどの浪費癖はつかない。
―――そう、ロザリーの父母がゲロアマだったからである。
その設定は、ファンブックには『父母はロザリーに甘い』としか載っていない。
そのため、ロザリーはしらなかった。今話された以上に熾烈な舌戦の末に父が『婚約白紙』というロザリーに有利すぎる結果をもぎ取ってきたことも、母が貴族お得意の水面下バチクソ罵り合いで王妃をブチのめしてきた事も。
そんなデカい秘密をひた隠したまま、父は満面の笑みで笑った。
「よし、好きな人と結婚しなさい!」
「……!!」
(異世界転生お決まりのオオオオオオ、悪役令嬢愛されルート開拓されましたァァァァァァ!!!)
ロザリーのテンプレ踏襲は、まだ始まったばかりである。
いやぁ、なんとかなりました……
前回にも申し上げた通り、受験前でかなり更新が不定期です。頻度が少なくなると思いますが、☆とブックマークをすペペペぺんと押してお待ちくだされば幸いです!