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7/20

戦闘系チート有りだった。

我が家のメイドが総動員され、私は風呂やらマッサージやらをたらい回しにされた。


「すっきりしたかしら?ロザリーちゃん!」


同じルーティンをこなしたであろう母上は慣れているのか疲れの色は全く見えない。こちらはヘロヘロだというのに。母は忙しなく動き続け、メイド達に私のドレスを持ってこさせている。


(……このイベント、あんまり深掘りされてなかったよなぁ。実際どうなんだろ。)


このロザリーの誕生会は、回想で出てくるイベントの一つ。正式な婚約発表の場を兼ねていたこの会で、ロザリーの婚約者、第3王子セシルはロザリーに苦手意識を覚えるきっかけを作ってしまう。


緊張し、ガッチガチになっていたセシルに、ロザリーは呆れ返った顔でこう言っていたはずだ。


「この国の王族とも有ろうものが、なんと軟弱な……嘆かわしいですわ。」


……と。それは今まで愛されて育ってきたセシルにとって、冷水を頭からぶっ掛けられる衝撃だった。緊張でうまく立ち振る舞えないセシルの隣で、大人顔負けの作法と話術を披露するロザリーに羞恥心と嫌悪感を持つようになる―――という話だ。


(ストーリー見てても思ったけどさぁ、ロザリーそんなに悪くないんだよね。いや、口は悪いけど、めっちゃ模範的な貴族思考なだけで。えーーどうしよう。転生モノあるあるで主要攻略対象カス系だったら!はっ倒しちゃうかもしれない〜〜!)


ロザリーはしらなかったが、ロザリーがこなしている令嬢教育は並大抵のものでは無い。中には、暗殺術を仕込むようなものも取り入れられている。

それは、心配性がすぎる母と、優秀な娘に教育を施すのが楽しくなっちゃった父の賜物だが、ロザリーの前世にも問題があった。

ロザリーの前世は、動けるタイプのオタクだったのだ。

「推しの趣味は私の趣味!」というスローガンのもと、ハマるキャラクターごとにキックボクシングやら柔道やらをやっていた結果、礼儀作法と外国語学習の間にフェンシングや体術が入っていてもなんら違和感を覚えなかった。

ロザリーの前世からの意識、現世のポテンシャル、教育パパの暴走、母の過干渉。すべてが邂逅した結果、筋肉バッキバキの淑女の鑑が出来上がってしまった。


(うーん、でも綺麗なご尊顔を傷つけるのは罪深い……いや、ロザリーも推しだったし、きゃわいい女の子が辱められるのもなぁ……)


考えることに夢中で、鉄板入りのコルセットを締められていることも、爆薬仕込のイヤリングを付けられていることにも、違和感を覚えていない。

オタクの考え出すと止まらない癖は、転生しても変わりなかった。


「きゃぁ~!!ロザリーちゃん可愛いわ!」


母の甲高い声に一気に現実に引き戻される。


姿見に映るのはお人形さんのような少女。


赤と黒を基調としたドレスは、ハートウェスト家の象徴ともいえるハートの柄をそこかしこに使っていた。

花弁の様に広がるスカートには、ふんだんにレースが使われており、ハートウェスト家の紋章と、薔薇の花やつるが金糸で細かくあしらわれている。

上半身は首元まで覆い隠すハイネックのような使用なっており、スカートからの切り替えで真っ黒なシルクが使われている。ノースリーブ型のドレスの先から出る肩は日焼けをしらぬ雪のような肌で、触ったら溶けてしまいそう。

オペラグローブにはスカートと同じ、金糸での刺しゅうが施されており、太陽色の髪の毛に負けぬ存在感を放っている。ルビーの瞳とそっくり同じイヤリングはネックレスと対になっていて、見るものが見れば、市場がひっくり返る価値を持っていることが分かるだろう。


きゃあきゃあと騒ぐ女性陣の中で、一番騒いでいたのは、他でもないロザリーだった。


(えーーーー!!!ロザリーたんかわゆす!!!!スチルものだろこれ。何でスクショできないんだろまじで。フランス人形すぎるよぉ!!!神様最高傑作だろ。右手で全力で書いたでしょう。神様神絵師説あるなこれ。)



美しいロザリーに化粧など必要ない。だってそもそも素材から完成されているのだから。

内心の叫びなど微塵も出さず、桜色の唇をキュッと弓なりにする。目が一番美しく見えるように細め、一番母に美しく見える角度で振り返る。


母は打ち抜かれ、その後ろにいたメイドたちまで被害を食らった。大丈夫だったのはエリーのみ。


(エリー……やるな!)


こっそりとエリーへの尊敬の念を抱きつつ、このビジュで打ち抜け無かったことに少しの不満を覚える。


「お嬢様、奥様、そろそろお客様たちが集まってございます。」


エリーの声で立ち上がった母に、もう先ほどの乙女らしい姿は無かった。これがハートウェスト公爵夫人の実力。ピリッと張った空気に、ロザリーは息を飲んだ。


「さぁ、『ロザリー』。戦場へ行きますよ。」


「ええ、『お母様』。」


特注の鉄扇を携え、前に向き直る。そこには、覚悟と期待が宿っていた。

長くなってしまいました……!

次回!「第3王子、危機一髪。」デュエルスタ◯バイ!

☆をガシャコンガシャコン押して、次回をお楽しみに!


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