表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/20

踊る花達と咲き誇る薔薇

「それでは、パーティーを開宴いたします!」


生徒会の宣言と共に始まったダンスパーティー。

何処を向いてもきらびやかな会場の中、明らかに雰囲気が違う団体が2つ。


そのうちひとつの中心であるロザリーは、扇の内で小さくため息をついた。


(こんなに忙しいの!?しかも生徒だけなのに政治の話ぶっこんでくんじゃないわよ!!)


貴族らしい鉄壁の仮面のしたは冷や汗ダラダラだ。自分の一挙手一投足がハートウェストの家の名を背負っているという重責に元日本人精神(おとうふメンタル)は耐えられそうにない。そうでなくても今日は気を引き締めねばならないのに。

ギロリと兄のロドリックを睨んでも、レオルドをはじめとする級友達とワイワイ楽しそうだ。


「疲れましたか?」


横から聞いてきたのは今回ペアとして参加したダグラス。

今更だが、今回のドレスはすべてダグラスとロザリーの髪と目の色だ。社交界ではドレスが贈られた時点で大騒ぎだったそうな。


「半分は貴方のせいでしてよ……このドレス随分趣味がいいことね?」


ダグラス狙いのレディ達からの質問攻めだよ。お前も聞いてただろ?と暗に圧をかける。


「よくお似合いです。なんなら仕立て屋ごとプレゼントしましょうか。」


ここ最近、……つまり当主がダグラスに変わってから、ロンド辺境伯家はメキメキと経済成長を遂げた。今や隣り合うハートウェスト家の領地と合わせ、『第二の王都』とすら呼ばれている。

だからこそ、今の発言が冗談で済む気がしない。

いくら掛かるのか……と想像しかけたロザリーは、このブランドが今流行りまくっている王族お抱えのブランドであったことを思い出し、若干悪くなった顔色で丁重にお断りした。


その時、ざわ、と観衆が色めき立った。どうやら、もう一つの団体の中心、ヒロインのブランシュとセシルが踊りだしたらしい。

ダンスの成績は伊達ではないようで、やや乱暴なセシルのダンスリードによくついていっている。パット見はセシルがリードしているようだが、見るものが見れば、ブランシュが1ミリもセシルに体を預けていないのがよくわかる。その証拠に、隣にいたダグラスは笑いをこらえ、ビビエナは大声はかろうじて出していないものの、扇で顔を隠し、「ん……ぐふ……」と小刻みに揺れている。


ダンスで体を預けないということはそれすなわち信用がないということ。

笑いの波がひとしきり去ったらしいダグラスは不思議そうだ。


「噂ではセシル殿下はかのクローバーレール嬢に夢中だそうですが、ご令嬢はどうなのでしょうね?」


ロザリーはこらえきれなくなって、笑みをこぼした。

その笑みは、ダグラスやビビエナのような愉快なものを見た笑いでも、嘲笑、ましてや苦笑でも無かった。

完ぺきなその顔にたたえられていたのは、満足そうな、満ち足りた笑みだった。


◆◇◆◇◆


(……!?)


なんの気無しに発したダグラスの言葉がロザリーの琴線に触れたということだけはわかった。

『淑女の鏡』『傾国の赤い薔薇』『難攻不落の鉄壁令嬢』

数々の異名を持つ彼女を、ダグラスはそれなりに理解していたつもりだった。


淑女と呼ばれるに値する努力を積んでいたこと。セシルが絡むと割と嫌悪を顕にすること。ロドリックやロートレルとも貴族では珍しいくらい仲が良いこと。

そして、恐ろしいほどに頭が周り、逆に特定の人に対しての警戒心が抜け落ちていること。


彼女が裏で何かをしている、ということはわかっても、どうしてもそこからが靄に隠されたように分からない。

恐らくはいつもロザリーの側に控えているフレアやエリーと言うメイド達が絡んでいるという予測を立てるぐらいがせいぜいだ。


そんな彼女が、セシルと一般の令嬢が踊っているところをみて、満足気な笑みを浮かべたと言うあり得ない事実にダグラスの脳内で急速にパズルのピースが組み上がっていく。


そうして見えた実態にダグラスはいつの間にか掌を思い切り握りしめていた。


(ロザリー、貴方は一体、何処まで見えていると言うんだ……?)


一抹の恐ろしさと、それを上回る期待と興奮。ダグラスは自分がロザリーにずぶずぶとハマる瞬間を己で自覚した。もがくことすら許されない深い沼に、ダグラスは躊躇なく飛び込んでいった。何故なら、そこにロザリーがいるから。


「夜の女神。どうか、貴方の手をとり踊る幸せを、哀れな男に与えてはくれませんか?」


ロザリーの白い手をとる。


「まぁ、随分熱烈なお誘い。……そうね、ちょうど突っ立ってるのにも疲れましたし。」


きゅっと握り返された手は、女性にしては少ししっかりしている。剣ダコもある。だが、ダグラスはそんなロザリーの手がより好ましく思えた。

手の甲に軽く唇を落とせば、吸い付くような触感と、薔薇の香りにクラクラする。


そのまま、2人は吸い込まれるようにホールの中心へと歩を進めた。


間が空いてすいません(泣)

ダグラスのやばいところとロザリーの根回しが着実に明らかになってまいりました。


ぜひ☆とブクマをテンツクテケテケと押してお待ちいただけると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ