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全力期末テスト

本日は筆が乗ったので2連投稿です!

「はー……平和だわぁ……」


学園内の四阿。ティーカップを傾けるロザリーは、ここ数ヶ月、至って平和に過ごせていたことに拍子抜けしていた。セシルはめっきり絡んでこなくなったし、ヒロインであるブランシュ•クローバーレールと出会ったらしく、そっちに首ったけだそうだ。

前を向けば、気の強そうな顔の猫系美人。濃いめの紫色の髪をクルクルに巻き、ツインテールにしているのは、入学の日に絡んできた、ビビエナ•スペードサーである。


「うふふ、お暇でして?」


ロザリーと同じ様に紅茶を嗜む彼女は今ではロザリーと気の置けない友人関係であり、またロザリーのファンクラブの会長でもある。


「でもこんなにものんびりしているのはわたくし達くらいですわ。だって明日は期末テストなんですもの。」


そう。本来、貴族令嬢たちで取り合いのはずの四阿を二人でのーんびり使っているのは、テスト前で皆が中庭にいないから。

ロザリーはやろうと思えば今すぐ飛び級卒業出来るぐらいには頭がいい。日本の義務教育万歳。+マミーパピーありがとう。

ビビエナも、入学前から英才教育を受けてきたクチだ。


今世で、女子に高等教育を施す親は少ない。


何故なら、男女差別が割と根強く、女性が学ぶことは無意味ではしたないと考える人が高位貴族に一定数いるためだ。

貴族は交流関係が命だ。交流している相手にそういう考えの人がいた場合、関係が切られてしまう場合もある。

そのため、女子に高等教育を受けさせられるのは、関係の主導権がこちら側にある高位貴族で男女差別意識が無いと言う家に限定されることになるのだった。


加えて、女子は選択科目を取らなくてもいい。

女子の必修は、家を取り仕切るための家政、茶会や社交界でのマナー講座、編み物、ダンス等々で、男性の必修に比べると半分ほどである。

女子は婚約者探しや、学院の名前で箔をつけたい人がほとんどなので、男性用の科目もとっていいことになっているが、テストが増えるだけなのでほとんどの人がやらない。

……よほどのもの好き以外は。


「それにしても驚きですわ、ロザリー様が、ほとんど全科目を取られるなんて!」


ころころと鈴を転がすように笑うビビエナに、ロザリーはジトッとした目を向ける。


「ビビエナ様だって似たようなものでは有りませんか。」


ロザリーとビビエナは男性用とされる科目もほとんど受講している。ロザリーに至っては男性のみの剣技と男性用社交レッスン以外はすべて受講している。


「わたくしは、馬術と帝王学は受けておりませんもの。」


何故かどや顔で語るビビエナにロザリーは吹き出す。


今頃、兄のロドリックは算術に頭を悩ませている頃だろうか、うちの兄のレオルドだってそんなものですわ歴史がからっきしで、などと話に花を咲かせていれば、ときが過ぎるのなどあっという間だった。


◇◆◇◆


「っ………!!」


「圧巻ですわね……」


廊下に張られたテストの成績表を、皆で見ようと言い出したロドリックは、ロザリーの成績をみてヒュッと喉から声にならない悲鳴を挙げた。


科目ごとに張られた成績表の一番上にずらりと並ぶ『ロザリー•ハートウェスト』の文字。ビビエナの兄、レオルド•スペードサーに至っては乾いた笑いを上げる壊れた人形の様になってしまった。

レオルドとロドリックは大変仲がいいようで、どの科目も大体同じぐらいの位置にいた。それにしても、2人とも苦手教科が分かりやすい。


「兄様、帰ったら算術の勉強しましょうね?」


「レオ兄も、帰ったら歴史のおさらいですわ!!」


兄'sは自分らよりよほどいい成績を収めた妹たちに頭が上がらない。二人で目を合わせ、あきらめたように、

「「はい……」」と言う揃いの返事を返すことしか出来なかった。


成績表をよく見ると、女子専門教科では、ヒロイン、ブランシュ•クローバーレールもなかなかいいところを行っている。ダンス科目など、ロザリー、ビビエナに続き3位だ。努力しているらしい。

しかし、それより目を引くのは軒並み満点のロザリーと同率1位であるダグラス•ロンドの名だ。


「レオ兄も、ダグラス様を見習ってくださいまし!高位貴族の意地でしてよ!」


原作と違わず負けず嫌いなビビエナが扇でバシバシとレオルドを叩く。ロドリックもだぞ?とロザリーは目線で訴えるに留めた。2人の兄達は肩身が狭そうである。


「お褒めいただき光栄です。」


思わず鉄扇を突き出すところであった。ぬっとロザリーとビビエナの間に顔を出したのは他でもないダグラス。


「素晴らしい成績ですわ!うちの兄に教えていただきたいくらい!」


ぱっと令嬢様スマイルに切り替えたビビエナの手腕には驚くばかりだ。


「ぜひうちの兄にもお願いしたくってよ……で、何か御用があって話しかけに来たのではないの?」


鉄扇を開き、ちらりと上目遣いで尋ねる。ロザリーは今ヒールをはいているので、175センチ前後はあるのだが、剣技や馬術でも軒並み1位を取ったダグラスの身長には届かない。この世界でも頭一つ抜けて大きいが、スラリとしていてそれなりにがっしりしていることが見て取れる。


(クソッ……年々好みになりやがるっ……!)


原作では中性的でロン毛、良く言えばしなやかな、悪くいえば若干ひょろっとした体型だったのだが、今では中性的だが、髪は短く整えられており、それなりに筋肉がついた男性らしい体型だ。

ロザリー好みのイケメンである。


「えぇ。ロザリー嬢、私と期末パーティーにでていただけませんか?」


「え?」


「「「「きゃぁーーーっ!!!」」」」

テストの成績表の前――つまり人混みの中――ロザリーの繊細な日本人魂は、この女子たちの大歓声の中、ダグラスの申し出を断る事が出来なかった。


貯めときゃいいってわかってるんですけどね……

書いたらポンポン出したくなるんです……


下の☆とブクマをすぺぺペんと押してお待ちくだされば幸いです!

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