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念願の刑事部

(生まれて25年。ここ松島署に入署して4年。ついに私は……!!)


真壁瞳子(まかべとうこ)は「刑事部」と書かれているプレートを見上げた。


「念願の刑事に……!!」


両手を胸の前で握り、ボブカットの黒髪を大きく前後に揺らしながら、ガッツポーズをとる。


振り返ればあれは保育園の頃、父の膝に座って初めて観たドラマ「悪の卵」に出てきた鴨野伴次(かものはんじ)=通称カモノハシ刑事に心を奪われてから20年。

わき目もふらずに目指してきた刑事という職業。

夢にまで見たその刑事部が今、扉一枚隔てた向こう側にある。


「いざゆかん!夢の向こうへ……!!」


瞳子は目の前の扉を思いきり開け放った。


「おはようございます!真壁瞳子25歳!好きな食べ物は茎ワカメ!座右の銘は殉職上等です!」


「……………」

「……………」

「……………」


刑事部の面々が一斉に振り返る。


瞳子は事務所に視線を走らせた。


(……男!……男!……こっちも男!!)


どこを見ても男ばかり。

それは警察学校や交番勤務の非ではない。


(怯むな怖気づくな!!私はここで刑事としてやっていくんだ……!)


瞳子は口をギュッと結びながら、向かって右側のデスクに視線を向けた。


(捜査一課!殺人や強盗・強姦をはじめとする強行犯を扱う刑事部の花形!危険な事件を追い、凶悪な犯人を逮捕するまさに正義のヒーロー!)


視線は窓際の席に移る。


(つづいて捜査二課!知能犯……つまりは詐欺や贈収賄といった犯罪の中枢を攻める綿密な捜査が必要とされるまさに知能のエリート!)


さらに向かって左側に視線を走らせと、


(空き巣やひったくり万引きまで多岐にわたる窃盗事件を担当するのが捜査三課!単純ながら窃盗事件は毎日のように発生している!事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!って聞いたことあるな……)


そして最後に視線は一つのところに留まった。


(最後に捜査四課。広域指定暴力団や外国人犯罪を扱う部署。通称マル暴。危険な世界と渡り合う勇気と経験と度胸が必要……!)


瞳子は大きく息を吸った。


(どの課に配属されたとしても私は……!カモノハシ刑事に恥じない働きをしてみせる!)


「……女が配属になるなんて聞いてるか?」


一番手前にいた三課の刑事たちが顔を見合わせた。


「うーん。聞いてないけど」


「え!!そんなはずは!!」


瞳子はガサゴソとカバンの中を漁り、一枚の紙を取りだした。


「見てください!この通り確かに刑事部への異動と辞令が出ております!」


2人の体格のいい刑事たちは「んー?」その辞令を胡散臭そうにのぞき込んだ。


「あーそういえば入るって言ってたな」


窓際にいた捜査二課の少し年配の刑事が歩み寄ってくる。


「あそこでしょ。()()


「……ごか?」


聞き慣れない言葉に瞳子が丸く目を見開くと、男は馬鹿にしたように5本の指を開いて見せた。


「お嬢ちゃん。聞いたことない?捜査一課の中でも特殊事件担当の奴らがいるって。それを捜査五課って呼んでるんだよ」


「捜査五課……?」


狐につままれたような気持ちで見上げる瞳子の前に男は人差し指を出した。


「とにかく五課はここじゃなくて、こっちだから」


その人差し指が真下を向く。


「え?」


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