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第1話 

初めての小説になります!拙い部分しかないですが、完結できるように頑張ります。暖かく見守ってくださると嬉しいです。

オフィリア・サンチェワルド

サンチェワルド侯爵家の娘。5歳。恵まれた環境で何不自由なく育っている最中である。しかし、その未来は壮絶で長く生きられない運命に立たされている。


「ましゃか、そのオフィリアになるなんて…。」


回らなすぎる舌にクソっと悪態をつきそうになるものの、これが現実だと受け入れる。はぁっと先程から何度も溜息を付き、視線を鏡に向ける。

くすんだグレーの髪に深い空の色を持つ瞳。全体的に霞む印象を受ける色彩だが、日焼けを知らない透き通った肌とそのかんばせはキラキラと輝いていた。余り整った造形が自分の意思で動くのが違和感でしかない。


「あの、お嬢様…ヒッ」


私のおかしな行動をどう思ったのか、メイドの一人が話しかけてきた。そりゃそうだ。なんと誤魔化そうかと考えながら振り向いただけなのに、怯えられた。確かにこの齢ながらに整った顔であり、その目尻は上がり気味だがまだ怖いという程でもない。なんだ?の意味を込めて首を傾げれば、目に見えて身体は震え、顔面は蒼白になる。


「も、申し訳ございません。お加減が優れないのかと、思いまして。」


あまりにも震えまくるものだから、一度鏡に向き直りおかしなところがないことを確認し、もう一度そのメイドを見遣る。


「いや…あなたの方が今にもたおれそうです。休んだ方がいいんじゃあない?」


この歳で敬語は変か!と慌ててそれっぽくしてみたが、目の前のメイドの顔色はますます悪くなるばかりだ。今にも腰を抜かして倒れ込んでしまいそうなメイドは突然、頭を下げだした。


「ほ、ほ本当に申し訳ございませんでした!!!!!どうか、どうか解雇だけはっ!!」


はぁ!?と叫ばなかった私を誰か褒めて欲しい。その後も自分の身の上話を語って聞かせるこのメイドに、頭痛を覚えた。


「お、おちついて。とにかく、もういいから。一人にしてくれる?」


私の一声に頭を上げたメイドの顔は、それはもう酷いモノだった。目には涙を溜め、血の気の失せたこの世の終わり、今から死んでしまうような顔をしていた。部屋にいたメイド達が続々と出て行くのを眺めながら、早鐘を打つ心臓を抑えていた。




心臓の音だけが大きく響き、全身から温度がなくなっていく。酷い頭痛を感じ、その場に蹲る。今、私があんな顔をさせたの?どうして?私はただ、私の不思議な行動に心配をしてくれた方が心配になるような様子だったから、休みを促しただけだ。仕事を辞めろなんて言っていない。一方的に責められたような感覚だが、最後のあの顔を私がさせてしまったことに間違いはない。私に対する恐怖。身に覚えのない、私自身への恐怖。


あぁ、そうか。私はもう私じゃない。オフィリアになったのだ。

豪華なベッドからの起き抜けで全然情報が処理できていなかった。幸い誰も居なくなってくれたことだし、状況を整理しよう。


前世の名前については思い出せないが、それなりに幸せな人生を送っていた日本OLであった。アラサーと呼ばれる年齢まで生きたはずだが、結婚はしていない。いつか結婚する気はあったのだが、結婚しなくても得られる充実した日々に、着実に婚期は逃していた。

これといった特技はなく、器用にこなせる方であったが、特出した何かはない、というような平々凡々。顔に関しても平々凡々かそれ以下であった。死んだ記憶については曖昧である。本当に死んだのかすら分からない。思い出せない。


お次にオフィリア・サンチェワルドについて。オフィリア・サンチェワルドというのは私にとって【世界の落とし物落とし物(パトス)】(略してセカパト)という題材の乙女ゲームに出てくる、悪役令嬢役の名前だ。セカパトは前世で大流行し、お一人様であった私も嵌まってやっていたゲームだ。そんなオフィリアになってしまった訳だが、最大の問題は一度置いておいて、目の前の問題に目を向けなければいけない。


今まで意図して記憶の蓋を閉じていたが、今までの、いわばオフィリア自身の記憶を探っていく。全く知らない記憶のはずなのに、まるで経験したような感覚になる。不思議な感覚だ。おぼろげな記憶だが、激しい癇癪に溜息をついた。気分や思い通りにならないことで癇癪を起こし周りに当たる。幼いためそこまで辛辣ではないが、このままだともっと過激になり最悪の悪役令嬢が出来上がるのが想像に容易い。イヤイヤ期って言葉が可愛く見えてくる。


取りあえず、あのメイドがなぜあそこまで萎縮していたのかは分かった。気に入らないと直ぐに解雇していたのは正真正銘オフィリアだったわけだ。幼い子供のことなど上手くあしらえば良いのに、無駄に権力があるから助長するのだ。親は何をしているのやら。解雇を言い渡されたメイドが本当はどうなっているのか知らないが、オフィリアの前に姿を見せていない。




その時、扉の開く音がした。


「お嬢様、夕食のお時間です。」


随分と肝の据わっているメイドだ。先程いた数人のメイドは皆どこか緊張し、萎縮していたのに。もしかして彼女が俗に言うメイド長なのだろうか。随分と若い。

口を開こうとして一度閉じる。先程記憶の蓋を開けて確認したから、普段のオフィリアがどんな態度を取っていたかも理解したのだ。急に変わっては驚くだろうが、社会人かつアラサーだった私にあの態度はとてもキツい。


「しょくどうには誰か?」

「 誰もおられません。」

「あのめいど、やめなくていいとつちゅたえなさい。」

「え?…は、はいかしこまりました。」


こんなことは以前のオフィリアだったら、絶対に言わなかった。いくら肝が据わっているメイドでも驚いたようだ。動揺が伝わってくる。

扉を開けてもらい、メイドの先導で食堂に向かった。流石侯爵家。あまりの豪華さに腰が引けてしまう。長方形の大きなテーブルにぽつんと食事が用意されている。食事マナーに不安を覚えたが、教わっていた記憶が思い出せないので、まぁ大丈夫だろう。小さなお皿に盛り付けられた前菜に手を伸ばした。





結果から言おう。

絶望的に不味い。死ぬ。


帰ってきた自室で寝る準備を整えられ、そのままベッドにダイブした。胃の中が何度もひっくり返ってしまいそうになるくらい不味かった。


「もう、嫌……。」


外から入る月の薄明かりに照らされ、ボロボロと涙をこぼしてしまう。やっと感情らしい感情が出せたのが、飯が不味いからというなんとも日本人。日本人の食への執着舐めるんじゃねぇ。


そもそもこんなに現実味が湧かないのは、オフィリアのせいなのだ。だって、オフィリアはセカパトの世界で必ず死ぬ。テンプレ転生すぎて頭を抱えてしまうが、大問題。ガチで、死んでしまうのだ。オフィリアがメイン悪役として出てくるルートは勿論、他に悪役がいて全くオフィリアが姿を見せないルートでも死ぬ。病死、事故死、他殺など様々な死に方がご用意されている。ちなみに流行りなのか、オフィリアルート、悪役令嬢ルートなるものがある。仲良く友情エンド、さらには共同して手がける起業ルートなんてものまで存在する。おわかりだろうが、たとえオフィリアルートであってもオフィリアは死ぬ。ルートなのだから勿論オフィリアは改心して良い子になる。しかし死ぬのだ。これがハッピーエンドであると聞いたときには耳を疑った。運営陣もなにを考えているのか分からない。


なにがあっても絶対に死ぬなんて。それを知っていて、生きる気力を持てという方が酷ではないか。それに飯が不味い。終わってる。少しばかりわくわくして食堂に行った私は馬鹿ではないか。


前世でどんな死に方をしたのか全く覚えてないが、死ぬのは怖い。一つ一つ死ぬ原因を取り除けば良いのでは?というが、攻略ルート分以上の死に方がある。全て覚えてなどない。、ネットでオフィリア生かし隊というのが流行、皆こぞってやっていたが、全て死んだというのを目にしている。抜け道のルートもない。


「う、ぅぅ、」


この世界には知っている人も居なければ、信頼できる人も居ない。オフィリアは自身の家の使用人に殺されるルートもある。涙が止まらない。どうしようもない。悪役令嬢に転生するのってこんなに孤独で苦しいのか。



「どうすれば、いいの、?」



その夜は泣き疲れて寝てしまったらしく、気が付いたら朝であった。


更新目標は1日1話ですが、私生活との兼ね合いで難しい場合もございます。ご了承ください。

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