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鱗馬

作者: あま

 お前は見たことがないのだろう

 蒼く輝くあの鱗を

 水面を駆けるひずめの音を

 お前は聞いたことがないのだろう

 太陽の光が溶けて輝く透き通ったたてがみを

 お前は見たことがないのだ


 私は憶えている

 この目が見えていた頃のことを

 家を飛び出し一人海へ行った私の目の前を

 あの馬が駆けて行った


 シャラシャラシャラシャッラと

 体を覆う鱗が擦れて澄んだ音を残していった

 パシャパシャと海面を叩くひずめの音を響かせて

 あの馬はあっという間に海の彼方へ走り去った


 お前は見たことがないのだろう

 お前は聞いたことがないのだろう

 他人から話を聞きかじっただけで実物を目の当たりにしたことがない

 だからあの馬を捕えようなどと言えるのだ


 お前は妙な所ばかり私に似てしまった

 恐れを知らず、負けず嫌いで、止められれば却って意固地になる

 お前の両親とはまるで正反対だ


 どうしても行くと言うのであれば引き際を見誤るな

 あの馬の怒りを買うような真似はくれぐれもするな

 私から言えるのはそれだけだ

口承、あるいは肉親の情、そして回顧。

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