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第五十話 白い天井

 「……スゥーーハァァーー」


 呼吸マスクで静かに鳴る呼吸音が病院の一室。


 重い瞼を開き、ぼやける視界。


 ここはーーどこ?


 目の前にあるのは白い天井。


 数秒、天井を見つめて何も考えない。


 「目が覚めましたか?」


 目を動かし、隣から聞こえてきた声の主の顔を視ようとする。


 「申し遅れました。私の名前は葉柄時秋と申します。こんな時にご挨拶をしてしまい申し訳ありません」


 身体を起こし、声を発そうとした。


 『これはどうも初めまして、葉柄さん』


 しかしノドに力が入らない。というよりも全身がまるで神経が通っていないかのようにピタリと動けないのだ。


 察した葉柄が手で制止する。


 「起きなくとも大丈夫ですよ、それより今回も私たちの不手際による被害で君に怪我を負わせてしまいました……本当に申し訳ない」


 椅子から立ち上がり、深々と頭を下げる。


 僕は何もできず黙ってその謝罪を視ていることしかできなかった。


 これは僕が勝手に首を突っ込んで勝手に怪我をしただけなのだ。


 自業自得である。


 そう言いたいのに葉柄さんは自分を責めないで欲しいと伝えたいのにできない。苛立ちで心が荒れそうになる。


 僕は口パクで返事を返そうとしたが葉柄さんは何か気づいていた。


 「優しいのですね、君は」


 !?ーー心を読まれたのかビクッと背中が震える。


 「顔に書いてありますよ、フフッ」


 恥ずかしさで顔を両手で隠そうにもできなかった僕は顔を横にそらす。


 「談笑はここまでにしておきましょう」


 ピシャリと優しい声色から厳しく真剣な眼差しに変わり、僕は背筋を伸ばす。


 「今回、君に改めて"確認"をさせて頂きます。編集は……頷くかそらして下さい」


 コクコクーー頷く。


 「君は通称【D】、つまりは悪魔と遭遇しましたね?」


 そうだ、叶海学園の物置教室で【ガキ】という悪魔に運悪く会って襲われたんだ。


 「そこて我が隊員に保護され、それから悪魔に関して深く知りましたね」


 コクコク


 「君にもう一度、最後の選択肢を設けます。このまま悪魔を忘れて普通の日常に戻るか、隊員として協力するか」


 「……」


 「これは私の独り言ですが……君はまだ若い。普通の日常を過ごし学友と学び、普通の大人になって欲しいです」


 葉柄さんの大人なりの優しさなのだろう。


 僕はもう一度、目を閉じて考える。


 ここで悪魔を忘れて知らない【フリ】を過ごして良いのかと。


 それでも今回の一件で痛い思いよりも恐怖を味わったのだ。


 今でも思い出すと心臓が震えだして苦しくなる。


 それでも僕の想いは決まっている。


 彼女と共に行くのだと。


 「ボ、クハーーキ、ョクーーシマ、ス」


 掠れた声でそう伝える。


 もう後悔しても遅く取り消せない。


 「……そうですか。分かりました、君の協力に感謝します」


 葉柄は丁寧に六真の指を握る。


 怪我による痛みが出ないようにするためであろう。


 僕はその手を二本の指で握りかえす。


 「今日はこのぐらいにしておきましょう。正式な手続きは後日。今はゆっくり寝てください」


 コクコク


 葉柄は立ち上がり、病院から出ようとするが僕は思い出す。


 彼女は無事なのか?


 葉柄さんの手を止め、彼女がどうなったのか聞こうとする。


 「ん?どうしましたか、六真君」


 「か、のじょ……かの、じょは?」


 「彼女ーー穂野江夏さんは無事ですよ。安心してもう眠りなさい」


 良かったーー


 あの時、彼女は哀奇という男に深く短剣で刺され、命が危ないと思っていたが無事だと知り、涙が出そうになる。


 彼女の無事を知った僕は意識が途絶えてしまったのか眠りについてしまったのだ。



 六真とは違う病室ーー


 「……はっ!」


 私はどのくらい寝ていたの!作戦は成功したの!?


 ベットから飛び起き、周りを確認するが包帯で体を固定され起き上がれなかった。


 「クッーー!ここは組織の?」


 冷静な判断をするために深呼吸をして、周りを良く確かめる。


 机に一つの紙が置いてあった。


 「これは今回、行った作戦のかしら?」


 紙を手に取り、その内容を確認する。


 『魔界の門、ロック成功。しかし門から這い出た物体の処理に失敗』


 魔界の門が閉じたのは成功したのは良かったけどーー悔やまれるわね。


 なにせ自分の状態を把握せず、無理にでも強硬してしまったから。


 悔やんでいる穂野江は自身の不甲斐なさを責める。


 そして何よりまた"アイツ"に助けられたのだ。


 血を大量に出しており、意識はハッキリとしていなかったが見ていたのである。


 何より驚いたのが魔人として哀奇と渡り合い、追い払ったのである。


 しかも気になるのは『お前もいたんだっけな』と発言していたのである。


 まるで"未来"を視てきたかのような言い草だったのだ。


 本当に未来にでもいってきたのアイツは?


 そんな馬鹿なと思う穂野江だったがそれでも本当だという確証がない。


 これは自分で彼を監視して上手く接触してみようと思った。


 頭を切り替えて報告書である紙の内容を確認する。


 『現在、ターゲットとの足取りつかめず。他の隊員との情報共有、監視によって命令を下す。これを確認した場合、速やかに処分せよ』


 「これで終わりね」


 穂野江は動ける足で近くにあるゴミ箱まで歩く。


 ゴミ箱に報告書を放り投げ、魔法を唱える。


 威力は最小限、誰にも気づかれずその場に無かったかのように。


 「イレースト」


 すると紙はみるみる消えるように無くなっていく。


 報告書が完全に消えるまで穂野江は見届け終える。


 ベッドに腰かけ、病衣を脱ぐ。


 「この傷は一生モノかな」


 物悲しく女として哀しく刺されてしまった背中を視るためでもあった。


 背中の傷はたとえどんな魔法でも医学でも治せないのだ。


 「なぜーー傷がないの?」


 スルスルと病衣を脱がし、手鏡を反射して視るとそこには傷が一切なく綺麗な肌が写しだされていた。


 まさかーーアイツが?


 なぜ自分をそこまで助けるのがわからない。


 そんな事を深く考えながら穂野江は病衣を着るのであった。

どうも〜蒼井空です!

読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか?

この度、【人魔転生ーー黙示録】がなんと五十話までいきました(パチパチパチ!)

これも読んで下さる読者様のお陰です(*^^*)

これからも遅くではありますが投稿していきますので暖かく見守って下さると嬉しいです!

それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/

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